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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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 飛行船を着水させ、魔の海域から助け出した貨物船へとハシゴを渡した。


 忍の国の技術で作られた船は、船体が薄くて強度が低そうに見える。エドワード王子から聞いていた通り、王都の造船技術は他国よりも優れているんだな。


 船にお邪魔すると、浴衣を来た数名の乗組員に取り囲まれた。


「さっきの魔法は何だ! 貴様、何者だ!」

「う、動くなよぉ!」


「人間の分際でいい度胸だな……!」


 ルミネスに威圧されながらも、震える手で短刀を構え、ジリジリと距離を詰めてくる。


「敵意はありませんよ、責任者の方とお話がしたいんですが」


 冷静に対処するも、どうやら海賊か侵略者だと思われてるみたいだな、ここは穏便に済ませたい所だけど……迫撃砲はやり過ぎたかな?


「かたじけない! みんな、先程の迫撃砲に怯えておるのです。拙者達は忍の国の貿易商人でございます」


 様子を伺っていると、輸送パーティのリーダーらしき女性が澄まし顔でやって来て、深々と頭を下げた。

 名を斉藤さんと言うらしく、忍の国、独特の黒色の長髪に、綺麗な赤の高級生地で縫われた浴衣を着ていた。


 手に持っていた扇子で首筋をパタパタと仰ぐも、さっきの戦闘で浴衣の胸元がはだけてしまったのか、白い肌が露わとなっていた。


「あの、斉藤さん! そ、それそれ! 胸元が!」

「おおっと! かたじけない!」


 はだけた浴衣を直すお姉さんから目を逸らし、誤魔化す様に手で顔を仰ぐ。ちょっと控え目な体つきだったけど刺激が強いな……

 ん? レヴィアが何か悟った顔を見せ、瞳を潤わせて泣きそうになっていた。


「そう言う事ですか……ドミニクは凹凸の激しい私の体には興味が湧かないと、うわぁんっ」

「ドミニク様ぁ、そんな貧相な小娘では無くこの私を見て下さい!」


 負けじとメイド服を脱ぎ捨て、露出しようとするルミネスを何とかギリギリで押さえる。

 ふぅ、危なかった……ルミネスの豊満な胸は、まぁ召喚陣に引っかかるだけの事はある。


「助けて頂いたお礼がしたいのでございます、どうぞこちらへ」


 斉藤さんの後に続いて船倉への階段を下ると、生地や糸、装飾品など、裁縫に使う素材が大量に貨物として積まれていた。


「こちらがお礼の品でございます、遠慮無く受け取って下さい」

「え! こんな高級そうな品を貰っても良いんですか?」


「貴方達は命の恩人でございます故、是非とも!」


 斉藤さんからお礼として、浴衣に使う花柄の高級生地を貰った。当然、うちの女性陣が嬉しそうに目を輝かせて、高級生地を漁っていた。


「にゃぁ……可愛い! これでメイド服を作るのだ」

「ええっと、誰か裁縫適性を持っていないのですか?」


 流石に、これだけの量をタダで貰うわけにはなぁ……そうだ、代わりにアレと交換するか! パパッと魔法陣を描き、収納の魔法を発動する。

 雪山でフィアが討伐したイェティの毛皮を6つ取り出し、斉藤さんへと差し出した。


「こ、これは雪山に住むと言われる、伝説の雪男の毛皮では!??」

「はい、エリシアスの洞窟にいたので討伐しましたよ」


「なんと!! 拙者に買い取らせて下さい! 1000万Gでお願い致します!」


 たっか!? この毛皮にそんなに価値があるのか……? 本体は白いゴリラみたいな奴の毛皮だよ??

 結局、勢い良く土下座した斉藤さんを無下には出来ず、生地と交換するつもりが1000万Gで売る事になってしまった。


 僕達がごちゃごちゃとやっていると、マイルドさんが斉藤さんをジロジロと観察しながら間に割り込んで来た。


「オラ、お前を知ってるぞぉ。確か、生地で有名な貿易商人だなぁ」

「拙者も貴方を存じております、何度か港でお見かけした事がございます」


 2人は知り合い見たいだね、ドワーフおじさんは忍の国にある天空山の出身なので、貿易の拠点は同じなのかな。


「所であの少年は、賢者か大魔導士でございますか? 空間魔法の使い手の様ですが……」

「なぁに、ただの新米貿易商人だぁ、ほっとけほっとけだぁ」


 親しげに話す2人の元へ、甲板に居た乗組員達がバタバタと階段を駆け降りて来た。


「姉御! 早く逃げねえとまたリヴァイアサンが寄って来ますぜ、奴ら数キロ先まで獲物の匂いを嗅ぎ付けます」

「この海域のリヴァイアさんがまだ生きておればな……では、またどこかでお会いしましょう」


 どうやらここまでだな、僕達も出発しよう。まぁ、思わぬ所で貿易商人としての繋がりが出来たし、災難から良い方には転んだな。


 ※


 他国に貿易中だった斉藤さんのパーティと別れ、飛行船をマッハでかっ飛ばして、忍の国の港へと辿り着いた。

 道中、暇になったレヴィアとルミネスの相手をしながら、片手間にリヴァイアサンやシーサーペントの魔獣に迫撃砲を打ち込んで討伐しておいた。


「こっちだぁ」


 港にイカリを下ろして船を停め、貿易商人の集まる取引き場の施設に入る。


 ここでは簡単な入国手続きを行う、貿易商人であれば、組合の事務所経由で5分もかからずに書類のパスが通る。


 マイルドさんの顔を見た受付のお兄さんは、書類をパラパラとめくり、通って良いですよと一言、笑顔で返してくれた。

 ドワーフおじさんは貿易において信頼が厚く、かなり顔が広いみたいだな、って言うかこんな適当な審査で良いのかな?


「それで、おめぇ、初級の貿易クエストは受けて来たのかぁ?」

「ええ、取り決めによると、初めは鉄のインゴットを忍の国に運ぶんですよね?」


 専門書の間違いを徹夜で修正した後、『ハイヤード商店』と、地味な感じに僕のお店を登録して貰った。


 貿易には、お店の信頼度が大きく関わってくる。


 開店したばかりのハイヤード商店の信頼度はEランクとされ、組合に登録してある他店の商品を運ぶ、『間接貿易』しか行う事が出来ない。

 なので、僕が組合から受けた貿易クエストは、忍の国で需要の高い『鉄のインゴット』を輸送するだけの簡単な物だ。


 クエストを受ける際に色々と不審がられたけど、王子から貰った金のバッチを見せたら1発で了承してくれた。


 鉄のインゴットの相場は、重さ1kg=1000Gに相当する。勿論、僕には『無限の収納箱』があるので、複数の商店からクエストを受けれるだけ全部受けて、インゴットを大量に詰め込んだ。


 台車を借り、船からインゴットを運びだす。


「なんだぁ!? このインゴットの量は……一体何トンあるだぁ?」

「クエストは受けれるだけ受けましたので、だいたい60tくらいですね」


 クエストで用意されたインゴットの総重量は60t、これを売れば単純に6000万Gの売り上げとなる。

 需要と時価により、原価より高く買い取って貰える事もあるので、当然、儲けにプラスマイナスが出る。こうして捌いた内の2割が、僕の手元に入って来る報酬となる。


 全てのインゴットを取引場の倉庫に運び終え、組合員に買い取って貰う。


「ど、どうやってこの量を運んで来たんだ……? まぁ品物に問題が無ければ買い取り手は決まっているからな。今回は相場通り1kg=1000Gだ」


「良かったー、ありがとうございます!」


 こうして買い取られた6000万Gの売り上げから、2割の1200万をレヴィアとルミネスの3人で割り、僕の手元には、イェティの毛皮とあわせて1400万Gのお金が一瞬にして舞い込んで来た。


「おめぇ、大したもんだなぁ……良し、商店のランクをAまで一気に上げとくだぁ」

「良いんですか!?」


 こうして数十回分の貿易と売り上げを1度で叩き出したハイヤード商店は、マイルドさんからAランク商店としての認定を貰った。

 これにより、自分の作った商品を、自由に外国に販売する『直接貿易』が可能となった。早速、忍の国にもエリクサーをばらまくか!


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