表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
119/158

if

「何だあの船は? 妙な改造が施されてるな」

「なんでも、王宮調合師の少年が初航海に出るんだとか、最年少の貿易記録を4歳も塗り替えたらしいぞ」


 王都の船員達が、僕の飛行船を見ながらコソコソと噂話をしていた。

 今日の初航海を祈願し、集まってくれた騎士団、それに王宮の人達、乗船場は数百人を超える見物客で賑わっていた。


「はは、どーもー」


 止めどなく飛んで来る声援に、船の甲板から手を振って応えていると、突然、おお〜!っと、謎の歓声が響いた。


 どうしたんだろ? 人混みの隙間から、船員が布で覆った像らしき物を台車に乗せて運んで来た。


「エルフ族から黄金の像が届いたぞ!」


 え! 聞いてないぞ……嫌な予感がするな。


 バッ! っと布が外されると、妙に凛々しい顔をした僕の黄金像が現れた。太陽光を反射してキラッと輝いている。


 何だあのド派手な像は……くっそ、ユフィルさん達の仕業だな!


「……もう出発するよレヴィア! これ以上は構ってられない」

「はい、操縦をお手伝いします!」


 レヴィアの手を引き、逃げる様に後部の操縦室に乗り込む。ルミネスは帆柱に座って、日光浴をしながら上機嫌に海を眺めていた。


 操縦室の椅子に座り、正面の台に埋め込んだクリスタルに手を添える。

 船の操作をするにあたり、基本的な事は全てクリスタル1つで行える様にしておいた。まずは飛行魔法を発動、ホバリングしてみよう。


 クリスタルの操作石に魔力を込めると、上昇気流の魔法が発動する。


「どう? 上手く浮いてるかな?」

「成功です! 揺れも無く、安定していますよ」


 船底が水を垂らしながら、ゆっくりと海面から離れて行くのが解る

 帆に取り付けた音波の魔法が、センサーの代わりになっているので、目視しなくても船体と障害物の距離が正確に伝わってくる。


「おい、船が宙に浮いてないか!?」

「目の錯覚だろ? 水の透明度が高すぎると船が浮いて見えるんだ」


 船が浮いてから、なんだか外の様子が騒がしくなって来たな。

 出発の合図をしようと窓から顔を出すと、丁度、真正面に、エドワード王子とウルゴ団長の姿が見えた。


「ドミニクゥ! レヴィアー! 気を付けて行って来るのだぞぉ!」

「おい、ウルゴ。俺の気のせいか? 船が浮いて見えるんだが……」


 良し、さっさと出発しよう。船の後方、左右から飛び出した鉄筒に、緩やかな風を送り込むと、円形の火炎がブオン!っと吹き出した。


「行ってきまーす! 加速装置、点火!」


 操縦室の窓から手を出し、王子達に向けて合図をすると同時に、ボンッ!!!っと火炎が吹き荒れ、海面の水を巻き上げた。

 そのまま、ズドーン!っと、勢い良く飛行船が海上から飛び出すと、呆然と立ち尽くしていた観客に、ザバーッ!っと水しぶきが降り注いだ。


「「……やっぱり飛んだー!!?」」

「なぜ船が飛ぶんだ!? 誰か説明しろ!」


 え? そりゃ飛ぶだろ……飛行船だし。



 ※



 高度、凡そ50m。時速500kmの自動操縦モードにて、飛行船は順調に海上を飛行していた。


 結局、僕達だけで出航する許可は下りず、組合のインテリドワーフおじさん事、マイルドさんに、ガイドとして初航海に付き添ってもらう事になった。


「おおぃ! 何で船が飛ぶだぁ!? オラを降ろすだぁ!」

「落ち着いて下さい! これは飛行船ですから」


 操縦室に入って来た。ドワーフおじさん事、マイルドさんが僕の制服を掴んで説明しろ! 引き返せ! とうるさい。


 目的地は忍の国、直線距離にして凡そ1200km、風力を利用した帆船の時速は50km程度なので、普通に海を渡ろうとすれば丸一日かかる。

 しかし、この飛行船は安定飛行時で時速500km。2時間もあれば忍の国まで辿り着けるし、加速ブーストを使えばマッハ飛行も可能なので、もう少し早く着けるかな。


「にゃぁ、ドミニク様ぁ。わ、私のお部屋はどうなったのですか?」

「私とドミニクは同室なんですよね? 楽しみです!」


 期待した顔のレヴィアと、ルミネスが尻尾を振りながらやって来たので、船倉に作ったメイド室へと案内する。


「じゃーん、何も無いけどね、この部屋を自由に使って良いよ」


 二段ベッドに棚があるだけの、殺風景な部屋にメイド2人を案内した。女の子が住むには少し地味かな? まぁ勝手に装飾されるだろうし、そこまで手を加える必要は無いよね。


「本当ですか!? わーい、アジトにします!」

「あれ? 私とルミネスが同室ですか、ゴホンッ、まぁ良いでしょう」


 何だか悔しそうに咳払いするレヴィア、ルミネスは相変わらずウキウキで部屋を探索していた。


 案内も終わり、再び操縦室に戻ろうとして、ズンっと、船が小さく揺れる異変が起きた。


「きゃっ! 船が揺れています……」

「にゃぁ!」


「非常停止かな……? 一旦、甲板に戻るよ」


 衝撃に反応して自動操縦が止まったな、この揺れは砲撃か?



 ※



  急いで甲板に出ると、腰を抜かしたマイルドさんが這いずりながら船の淵に手を掛け、遠くを見ながら悲鳴をあげていた。


「やばいだぁ……他国の船が魔獣に襲われてる! 航路はどうなってるだぁ!」


 慌てて僕達も駆け寄ると、海上に停滞していた数隻の船がドカーン!と大砲を放ち、魔獣の触手に対抗しながら、今にも海に引きずり込まれそうになっていた。


 なるほど、あの砲弾が船を掠ったのか……


「あれは、魔の海域だね」


 貿易の専門書で学んだ、海上の危険領域『魔の海域』


 その主となる原因はリヴァイアサンだ。


 移動式の縄張りを持ち、領域を侵した輸送船を触手により海に引きずり込む。リヴァイアさんは鳥の様に光り物を好む事もあり、魔法石や鉱石を積んだ船が頻繁に襲われるんだとか。


「も、もうあの船は助からねえだぁ、お終めぇだぁ……」


 甲板に膝をつき、諦めた様子で祈りを捧げるマイルドさん、それとは裏腹に冷静な声でルミネスが尋ねて来た。


「ドミニク様、どうなさるおつもりですか? 戦うにしても船が邪魔ですね」


「勿論、全員助けるよ」


 放っておけば、数分もしない内にあの船は沈む、ウダウダと迷ってる暇は無い。


「な、何するつもりだぁ! 余計な事すると、こっちにまでリヴァイアサンが向かって来るだぁ、貿易業の本で学ばなかったのかぁ!」

「関係ありませんよ、少し黙ってて貰えませんか? 2人とも船を頼んだよ!」


 船からバッと飛び降り、滑空しながら左手で音波の魔法を、右手で古代模様の魔法陣を描いていく。


「あの魔法は……! 転移魔法は使わないのでは無かったのですか?」

「そうも言ってられんのだろう。ドミニク様の初級魔法では、加減した所で船ごと消し飛んでしまうのだ」


 まずはソナーの魔法を放ち、船の位置とリヴァイアサンの気配を探る。


 ……本の通りだな。あのリヴァイアサンの群は、一定の範囲を囲む様に遊泳している。あの外周の先が安全領域、つまり、奴らの縄張り外だ。


 滑空してくる僕に気付いた船員達が、必死な声で助けを求めた。


「助けてくれぇ!」

「おお……少年! 誰か助けを呼んで来てくれぇ!」


 船員は7人か、うちの船より少し小さいけど、見た感じ遭難してた訳じゃ無さそうだ。東側に2隻、南東に3隻、全部で5隻の貨物パーティだな。


「今助けます、待ってて下さい!

 古代魔法・『空間転移』」


 船底に転移の狭間を作り出し、海水ごと強引に船を引きずり込む。


 ブイーンっと、一瞬にして縄張り外へと5隻の船が転移された。


「て、転移魔法だと!?」

「信じられん……あの少年の魔法なのか……」


 まだまだっと! 飛行魔法で体制を整え、沈没寸前の船に乗っている船員達を、まだ航海可能な船へと転移させる。


「一体何が起きているんだ……」


 強引に転移させられた船員達は、夢でも見ているかの様に口を開けたまま惚けていた。全員無事そうだな。

 全ての船員を安全領域に運び終え、後はリヴァイアサンを討伐するだけとなった。


 タイミング良く、迫撃砲の準備を終えたルミネスから通信魔法の連絡が来た。行動が早くて助かるね。


「ルミネスー! 撃って良いよ!」

「かしこまりました!」


 船体から飛び出したレールガン式の迫撃砲から、スパンッ!っと爽快な音と共に、鉄鉱の欠片と魔法石がマッハで上空へと打ち上げられた。

 空中で稲妻の魔法が発動し、雷音と共に数百の鉄クズの雨がズバーン!っと海面に突き刺さり、海水を跳ね上げて津波を巻き起こす。


「おおっと! 思ってたより凄い威力だなぁ」


 魔の海域を泳いでいたリヴァイアサンの影が、一瞬にして消え去り、魔獣らしき何かの残骸が船に降り注いだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ