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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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 船の改造が終わった後、貿易の相談をする為にエドワード王子の居る部屋を訪ねた。


「ええっと、この書類は何ですか??」


 部屋に入るや否や、エドワード王子から手触りの良い立派な書類を手渡された。小難しい長文と王子の承認印が押してある。


「この国では、個人による貿易は認められていない。商業組合に自分の店を登録する必要があるんだ」

「え! 自分の商店を立ち上げろって事ですか?」


「そうだ、他国との信頼関係に関わるが故、知らぬ所で問題を起こされてはたまらんからな。その書類は俺からの特別推薦状だよ」


 思わぬ所で、開業届けを出す事になってしまった。王子(いわ)く、設置型の店舗を持っていなくても、輸送船を移動式の店舗として登録すれば問題ないらしい。


「ああ、それと言い忘れてたが……貿易商人は少し癖のある奴らだぞ。軽くひねって、思い知らせてやってくれても構わん! ははっ、よろしく頼んだぞ英雄どの」


 癖のあるって……本当に大丈夫なのかな? まぁまぁと、爽やかに笑うエドワード王子に見送られ、部屋から出た。

 いつか、自分のお店を待てたら良いなーとは思ってたけど、まさか、船が店舗になるとはなぁ。


 転移魔法で地下水路に戻ると、フィアが遊び疲れてグッタリしていたので、船倉に布団を敷いて寝かせてあげた。


 ※


 時刻はもう夜の8時だ。


 ルミネスとレヴィアを連れて、まだまだ人の多い通りを散歩しながら、商業組合の事務所を目指す。


 商業組合は24時間営業らしく、今すぐ店を登録して来いと王子に急かされた。

 僕が船を貰った事は公にはなっていないので、貿易商人として活動するにあたり、正体を隠す必要は無い。


「この広場の先に、事務所があるみたいだ」


「こ、恋人達がいますね……」

「な、なんだと……」


 地図を見ながら通りを抜けると、夜の中央広場は雰囲気のあるライトに照らされ、イチャつくカップル達のデートスポットと化していた。


 2人とも興味津々だな……ど真ん中を突っ切る事にしたけど、レヴィアもルミネスもそわそわと落ち着かない様子で、中々に気不味い。


「あ、あの! 私もドミニクと手を繋ぎたいのです……駄目ですか?」

「だ、駄目だ! ドミニク様は私と手を繋ぐのだ!」


 急にキャッキャと大きな声で揉め始め、広場のカップル達が、修羅場か? と言わんばかりに好奇な目を向けてくる。

 そんな事もお構い無しに、ジーッと、上目遣いでメイド2人が迫って来た。


「ドミニク……」

「ドミニク様ぁ……」


 仕方なく、バッと反射的に両手を差し出す。


「2人とも落ち着いて! みんなで手を繋ごう」


 両手に花状態で腕を引っ張られ、ぎこちない表情で広場を歩く。たまにチラッと横を見ると、ルミネスとレヴィアの可愛らしい横顔が間近に見えた。うーん、よく見たら2人とも僕には勿体無い位の美人だな。


 広場を抜けると、『商業組合』と解りやすく書かれた大きな看板の建物を見つけた。玄関先に並べられた大量のチラシが、提灯(ちょうちん)の明かりに照らされていて綺麗だ。



 ※



「おめぇ、まだ14歳だろぉ?? エドワード王子の推薦状があるとは言え、子供に貿易は無理だぁ」

 

 口調に(なまり)のある貿易担当の職員が、ゴツい緑色の手をシッシッと振りながら、推薦状を机に放り投げた。


 エドワード王子の言っていた『面倒な職員』の意味がやっと解った。受付の窓口に居たのはエルフ族と同じ長寿の他種族であり、ゴツい体と背の低さ、髭面が特徴的な、ドワーフ族の事だった。


 何でも、忍の国の天空山にドワーフの村があるらしく、一部のインテリなドワーフは村から出て忍の国へ、その後エリシアスとの貿易商人になるのがビッグドリーム的なアレなんだとか。


「やっぱ駄目かー。だから、ドワーフは駄目だって言ったじゃん」

「ドワーフは知識欲が強い種族ですから、聡明な人に対して腰が低くなると聞いた事があります、試しに論破してみたらどうですか?」


「いえ、もう、私がぶっ飛ばしてきましょうか?」


 組合の玄関に出て、コソコソと作戦会議を立てる。


 僕がエリシアス出身だと知ってから、おじさんの態度が悪くなり、適当に追い払われた。この手のタイプにはもう慣れたけど、あまり良い気分じゃ無いね。


 作戦会議も終わり、再び、受付へと向かう。ルミネスが殴りかかる前にさっさと論破しよう。


「あのー! どうして駄目なんですか? 年齢制限は無いんですよね?」

「しつこいんだなぁ! 問題はそこじゃねぇ、知識の無い奴に貿易商人が務まるのか? それに、実績も必要だぁ」


「た、確かに、おじさんの言う通りですね……」


 思ってたより真っ当な理由が飛び出し、逆に論破されてしまった……今日は調子が悪いな。確かに貿易の事なんて解らないし、販売実績はエリクサーくらいしか無いからなぁ。


 一応、僕の販売実績や、称号について記載された経歴書をギルドから貰っておいたので、それを渡して見た。


「何だおめぇ、この適当な書類は? たった数日間で数百万Gを売り上げただぁ? 有り得ねぇ、イタズラも大概にしろぉ!」


「ギルドの正式な書類です、イタズラじゃありませんよ!」


 全く信じる気配も無く、険しい表情のまま乱暴に書類が叩き付けられた。


 咄嗟に、レヴィアが間に割り込んで来る。


「ドミニクが嘘を付いている証拠は? 貴方は勤務態度に少し問題がある様ですね」


「仮に、この書類が事実だとしてもだなぁ……貿易には航海ルートから交渉まで、細かく取り決めがある。悪いが、家に帰って勉強し直してからもう一度来るだぁ」


 そう吐き捨てながら席を立ち、棚から取って来たぶ厚い専門書を、僕の前にドンドンと積み上げて行く。


「どうだぁ? これ全部、貿易に関する専門書だぞぉ」

「この本を覚えるだけで良いんですか?」


「この専門書は年単位で学ぶ物だぁ、特別に貸してやるから、持って帰れぇ」


 何言ってるんだ? 文字を解析すれば一瞬で記憶出来るじゃん……さっさと覚えよう。


初級魔法(オリジナル)・『解析(アナライズ)』」


 掌の上に専門書を寝かせて解析の光を通すと、書かれている文字が、魔力情報として頭に流れ込んで来る。

 1度でも取り込んだ情報は血液の中に残るので、記憶除去でもされない限り、いつでも思い出す事が出来る。


「まさか、解析の魔法で文字情報を読みっているのですか? であれば、ドミニクの膨大な知識量にも納得出来ますが……」

「そんな感じかなー、そっちの本も取ってくれるかな?」


 首を傾げ、感心した様子のレヴィアから専門書を順番に手渡して貰い、全ての専門書を解析し終えた。


「良し、全部記憶しましたので! テストして貰えませんか?」

「う、嘘付け人間! 良いだろう、時間の無駄だろうけどなぁ」


 ※


 その後すぐに、貿易に関する筆記試験を受けた。問題は専門書に載っている内容そのままだったので、スラスラと解き進み、ペンが止まる事は無かった。


「ぜ、全問正解だぁ……有り得ない……エリシアス出身の田舎者なんかに、合格出来る訳ないだぁ」


 僕の解いた試験用紙を手に持ち、信じられないと震えるドワーフのおじさん。


「あー、あと、航海ルートなんですけど、一部、最短ルートに間違いがありましたので、修正しておきましたよ」

「な、直ってるぅぅ、に、人間すげぇ。さっきはすまなかっただぁ、今すぐ商店を登録させてくれぇ!」


 ヘコーッと、腰が低くなったインテリびいきのドワーフおじさん。間違いは他にもあるんだよなぁ……波風は立てたく無いけど、ここはしっかりと言っておくべきだな。


「待って下さい、それだけじゃありませんよ。他の専門書も全然駄目です! 交渉術に関する取り決めの52pを開いて下さい」

「は!? はいですだぁ! あああ、スペルが間違ってるぅ」


「そうです、全部直し終わるまで寝かせませんよ!!」


 それから徹夜で専門書の修正パーティを開き、眠気に瞼をこするドワーフおじさんとメイド2人に喝を入れながら、夜が明ける頃に全ての間違いを直し終えた。


「ぬぅ、終わっただぁ……」

「にゃぁ、私もう眠いです……」

「ぜぇ、ぜえ、私も限界です……」


 ふぁーあ、少しやり過ぎたかな? 流石に僕も眠い。何はともあれ貿易の知識も手に入れ、お店の登録も済んだ。明日にも海に出れそうだな。


 登録した飛行船で貿易に出る際に、初航海の見送りも兼ねて、王都のみんなで安全を祈願する式を開いてくれるんだとか。

 みんなの前で飛行に失敗する訳にはいけない、当日はマッハで飛ぶ為のニトロを多目に積んでおこう。


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