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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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 船の改造に必要な素材を集め終え、地下水路の整備室へと帰って来た。


「この船にメイド室はあるのですか? い、いえ……勿論、私はドミニクと同室でも一向に構いませんが??」


「漆黒の黒船にしましょう! ドミニク様、私の部屋もよろしくお願いします!」


「はいはい、2人とも落ち着いてね」

 

 まさか、住む気なのか?? 遅れてやって来たルミネスとレヴィアが、船を見上げて好き勝手にキャッキャと騒いでいた。

 貨物室となる船倉は丸々空いているので、メイド室は問題無いとしても、黒船だと海賊船みたいになっちゃうよな?


 うーん……うだうだと考えていても時間の無駄だな。さっさと、改造の段取りを始めよう。


 早速、水路の端にあった工具の棚を漁ってみる。


「……駄目だね。年季物のスパナやドライバーしか無い」


 見た感じ、整備室にある道具だけじゃ船を改造するには不十分だな……いっそ、魔法商店と船の甲板に転移の石板を設置して、空間を繋げておくか。


 あっちで部品を作り、船の甲板へと転移させる。これが一番、効率が良いかな。


「さてと、段取り開始だ!」


 ※


 作業の段取りを終え、2階で休んでいたウーリッドとビクターさんを呼び戻して来た。


 基本的な材料は魔法商店から出して貰うけど、大量のインゴットを手に入れたので、鉄の材料費用は掛からない。

 地下水路の隅に作った素材置き場にて、収集した素材の確認をして貰う。


「凄まじい純度のインゴットだな……この輝きは何だ! 精錬したのは一体誰なんだ!?」

「匠の技なの、これだけあったら何でも作れるの……」


「助っ人の冒険者達に集めて貰ったんですよ、ちなみに精錬は僕がやりました!」


 胸にトンッと手を当て、インゴットを観察する2人に自慢気に言い放った。


「あっ……ドミニクが精錬したのか、だったら聞いても意味無いな」

「あっ……理解不能なの」


 何かを察した表情で、黙々と鞄から工具を漁り始めた。

 あれ? 全然興味無さそうだな……くっそ、せっかく覚えた精錬の魔法を自慢したかったのに。


「僕はあっちで、魔法石に魔法陣を刻んで来ますね」

「ああ、俺達は甲板にいるから、何かあったら声を掛けてくれ」


 収納魔法から各種の魔法石を取り出し、作業台に並べていると、モソっと、背後からフィアが身を擦り寄せて来た。


《パパ様、私のクリスタルも採取できますよ》

「もう、生成が終わったの? 早いなぁ」


 雪山から戻って来てから、まだそんなに時間は経っていない、クリスタルの生成完了まで30分程度ってとこかな。

 フィアのオデコのクリスタルを、指でカリカリとひっかくと、5cm位のダイア型のクリスタルがコロッと掌の上に落ちて来た。


「採れた! ありがとう、フィアは優秀だな〜」

《ふふ、それほどでも》


 顎の下をモフモフとしてあげると、照れ臭そうに青い毛並みの尻尾を振るわせていた。

 このクリスタルは操縦室に取り付ける事で、他の魔法石に魔力を送り込む重要な核となる。今日のフィアは大手柄だな。


 再び、作業台の錆びたパイプ椅子に座り、作業に戻る。

 パパッと掌サイズの魔法陣を描き、台の上に並べた各種の魔法石へと陣を焼き付けて行く。


 この船の推進力には、水を掻いて推力(すいりょく)を生み出すスクリュープロペラや、風を利用する帆は使用しない。

 船底に取り付けたアクアマリン石の水魔法が波を操り、全方向に対応した推進力を生み出す。


 ブルートパーズ石には、飛行に必要な上昇気流の魔法を刻み、こちらも船底に取り付ける。

 甲板にも幾つか設置して、逆噴射出来るようにしておけば、ホバリングや非常時に備えた急降下も可能だ、ふふん〜。


 ニヤニヤと鼻歌交じりに魔法陣を刻んでいると、レヴィアが興味あり気に、背後から僕の両肩に手を置いて作業を覗きこんで来る。


「ふふ、なんだか楽しそうですね! 飛行船であれば、あの大きな帆は取り外すのですか?」

「いや、帆は解析と音波の魔法を刻んで、レーダー代わりにするんだ。レヴィアも興味あるなら手伝ってくれるかな?」


「は、はい! 私もやりたいのです」


 少し緊張気味に緑の瞳を瞬かせたレヴィア。彼女も手伝ってくれるという事で、あっと言う間に全ての魔法陣を刻み終えた。

 完成した魔法石を取り付ける箇所は、設計図に書いておいたので、ビクターさんに渡して処理して貰う。


「次は、加速ブースト機能だな」


 船の背面の左右に1つずつ、船体から飛び出す形で鉄筒(てっとう)を取り付ける。

 加速の仕組みはシンプルだ。加速装置となる鉄筒の入気口に、空気を送り込んでプロペラを回転させる。

 筒内部のニトロと火炎の魔法石が、空気に反応し、噴出口から高度の熱エネルギーを排出する事で、船体を爆発的に加速させる仕組みだ。


 ニトロのガスは燃焼効率が高い反面、持続時間は短い、それに、連続使用は船体への負担となるので注意が必要だ。


 船を丸ごと転移させる手も考えたけど、この飛行船はあくまで、貨物輸送を目的とした船だ。貿易人に転移魔法の事を知られるのは不味い。

 輸送の手間が全く掛からない事がバレたら、交渉の際に値を引き下げられる可能性もあるしね。


 代わりに、収納魔法で貨物をしまっておけば、積荷が無いままでも航海に出れるので、その為の魔導具も作っておく。


「ドミニクー! 例の箱だ、ここに置いとくぞ」

「おおー、いかにも宝箱って感じですねー」


 丁度、ビクターさんが大きな宝箱を肩に担いで、水路脇にドン!っと置いていった。カチャカチャと、数字式の鍵をいじって箱を開ける。防犯意識はそこそこに、分かり易い様にパスワードは自分の誕生日にした。


 宝箱の底の4角の隅に、小型の石板を囲む様に設置し、収納魔法の空間を作り出す。これで僕以外の人でも、中に好きなだけ貨物を入れる事が出来る。


「これで積荷を無限に放り込めるよ」

「無限の収納箱ですか……最早これは、神器などの類の物じゃ無いですか??」


「そんな大げさな物じゃないって、後は武器が必要だね」


 海上での魔獣対策に『迫撃砲(はくげきほう)』と『電磁砲(レールガン)式クロスボウ』を作る。


 電磁砲式のクロスボウは、台に取り付けた2本のレールから、電磁誘導によりマッハで矢を発射するお手軽な武器だ。


 しかし、発射時に強力な稲妻が走る為、クロスボウのグリップと矢は、雷属性に強い絶縁体である必要がある。


 試しに、鉱石の不純物を長さ50cm厚さ10mmの細長い棒に変え、雷耐性を持たせた。この棒をクロスボウからマッハで撃ち出す事により『鋼鉄の槍』と化して竜族をも貫く。

 鉱石のクズから再利用出来るので、コスパもそこそこだな。


 元々、船の側面から飛び出していた6つの砲台は迫撃砲に改造した。

 迫撃砲は拡散弾に魔法石を混ぜて撃ち上げ、上空でその魔法を発動させる。落雷と共に数千の鉄屑の槍が地上に降り注ぎ、一瞬で竜族を殲滅出来る。


「よーし、完成だ。これで竜族を粉々にできるぞ!」

「え! 粉々ですか!?」


 ※


 最終的に魔法商店からも数名の作業員が集まり、どんどんと作業は進んでいった。操縦室にクリスタルを取り付け終わり、作業員達から歓声が上がった。


 メイド2人の部屋は後回しで、夜になる頃には全ての作業がお終いとなった。


「みなさん! お疲れ様でした〜」


 作業のお礼に、甲板から濃霧の魔法でエリクサーをばら撒き、みんなの疲れを癒す。


「ひいー、大変だったが何とか終わったな!」

「しかし、本当に船が飛行可能なのか?」


 まぁ、理論上は飛べる、だからね……駄目だったら駄目で、エドワード王子に相談すれば良いし。

 早速明日、テスト飛行も兼ねて貿易をやってみるか、 飛行船の乗り心地を確かめてみないとな!


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