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収納魔法にGの袋を入れておくと、取り出さなくてもその金額が解る。
現在、僕の手持ちは500万G、船を改造するのに200万Gは掛かるので、出来るだけ無駄な出費は避けたい。
エリシアスでは、数多くの素材や魔法石が自然界に眠っている。それを自分で採取すれば材料費はかからないし、余った材料は売ればお金にもなる。まさに、一石二鳥だな。
転移魔法を使い、ユリアさんの居る冒険者ギルドへとワープした。
※
何故か、今日のギルドロビーには人が少ない。立ち話をしていた冒険者達に聞き耳を立てると、なんでも常連の人達は、無限の霧樹海の調査に行っているらしい。多分、エルフの村の見学かな?
適当なクエスト用紙をボードから剥がし、受付のカウンターへと向かう。
「こんにちはー、ってユリアさん! 仕事してますか?」
「……あら、ドミニク君じゃない。暇すぎて半分寝てたわ」
受付でボーっとしていたユリアさんに声をかけ、台の上にクエスト用紙を置いた。
「へぇ、SSSランクの君が、わざわざ採取クエストなんて受けに来たの? 自分の冒険者パーティを作った方が早いんじゃない?」
「え! 僕のパーティをですか?」
……思わぬ返事が返って来た。うーん、自分のパーティーなんて今まで考えた事も無かったな。
やっと目が覚めたのか、ユリアさんは職員モードでペラペラと口が回り始めた。
「そうよ、君の冒険者ランクはSSSなんだから、パーティも高ランクとして登録できるわ。掲示板の助っ人募集で、採取スキルが高い人を募れば良いじゃない!」
「た、確かにそうですね……」
ギルドにはクエスト協力の掲示板がある。前に僕が利用した時は、黒剣のグレア盗賊団に騙される所だったけど、高ランクパーティとして登録しておけば下手に悪人も手を出して来れないだろ。
「君にお近付きになりたいって冒険者は、ギルドには山ほど居るわ。とりあえず誰か連れて来なさい、即Bランクパーティにしてあげるわ」
「いきなりBランクって、実績を積まなくても良いんですか?」
「勿論よ、実績は君が持ってる物で充分でしょ」
難しいな、パーティメンバーなんて一体誰を選べば良いんだ……? いや、そもそも僕の正体がバレても問題無い人しか駄目じゃん。
※
と言うわけで、王宮調合室へと帰って来た。
扉を開けるなり、眼をキラキラと輝かせたレヴィアが駆け寄って来て、嬉しそうに尋ねてくる。
「ドミニク! お帰りなさい、早かったですね? ご飯にしますか? それともお風呂?」
「ただいま、今日はお休みだからねー」
僕の世話を焼きたがるレヴィアを、ルミネスはソファーに座ったまま余裕の表情で見つめていた。
「ふふっ、ドミニク様は、帰ったらまず最初にご飯を食べられるのだ。メイドを名乗りたいのなら、それくらい把握しておけ!」
「い、いや、別にお腹は空いてないよ。2人とも、ちょっとお話があるんだけど……」
改まった表情で話す僕に、メイド2人はキョトンと顔を見合わせ、急に取り乱し始めた。
「にゃ!? 何でしょうかドミニクさま!?」
「わ、私達、クビですか!?」
魔法適性と戦闘能力に優れ、尚且つ、僕の秘密がバレても問題無い人物、と言えばこの2人以外、考えられない。
僕以外の人間には懐かないと思っていたルミネスは、何故かレヴィアとは仲が良いし。人によって魔神に好まれる魔力派の違いがあるのかな?
誤解した様子の2人に事情を説明し、サッ!っと黄金ファラオの仮面を被り、黒の古代ローブに身を包んだ。
ルミネスは普段着ている黒のメイド服、レヴィアもいつも通りの騎士団の鎧に着替えた。
※
再び、ユリアさんのいる大地の遺跡を訪れ、冒険者パーティの登録を済ませて貰う。ファラオの変装の事はユリアさんも知っているので、大して驚かれなかった。
「魔法適性は共にAランクね……こんな優れた人材をどこから連れて来たのよ? この遺跡で登録してる冒険者の中じゃ、既に最強クラスのパーティに位置してるわ……」
お茶をすすり、渋い顔をしたユリアさんが2人にステータスカードをかざし、折りたたみ式の魔導記録箱にカタカタとデータを打ち込んでいく。
レヴィアとルミネスは冒険者カードを持っていなかったので作って貰い、パーティ名は『王宮の冒険者』と解りやすい感じに登録された。ルミネスの肩に乗っているフィアは、カーバンクルなので人数には加算されない。
本来であれば、パーティとしての実績の無い僕達はEランクからなんだけど、特別処置として、初めからBランクパーティとして登録して貰った。
「レヴィアは接近戦闘は苦手なんだよね? ゴーレムと戦った時にそう言って無かった?」
「私の接近戦闘はCの様ですね、一般的な男性と同じくらいでしょうか? ドミニクのランクは幾つなのですか?」
「え!? ええっと、実は僕のステータスカードなんだけどさ……」
パーティとなる2人にこれ以上隠してても仕方ないので、接近戦闘のランクだけ表示してステータスカードを手渡した。
「「接近戦闘、Sランク!?」」
「なんて事でしょう……これに加え、ドミニクは古代魔法適性があるのですよね? ウルゴ団長を圧倒できる理由が今ハッキリとしました……」
「はは……一応、秘密にしておいてね」
さも当然と言いたげなルミネスと、納得した様子のレヴィア。やっぱり、理解のある2人にして良かった。
パーティ登録も済んだので、助っ人募集の掲示板にて張り紙をし、鉱石採取スキルに長けたメンバーを募った。
新規パーティは無償で助っ人を頼める。勿論、SSSランクの僕がリーダーとして、パーティ登録しておいたので、今後、僕達を頼りたいギルドの人達がワンサカ集まってくる筈だ。
「あそこ見てみろよ! SSSランクのファラオがいるぞ、こんな所で何をやってるんだ?」
「王宮魔導師のレヴィアまでいる……あの獣人はケットシーか??」
「うさん臭い奴らだな、実際にSSSランクの実力を見て見たい所だが……」
あっという間に数十名の冒険者達に囲まれ、助っ人募集パーティは30名を超える大パーティとなった。
集まった中に、ベテランパーティが居たので遺跡探索グループを作って指揮を任せ、二手に別れる事にした。
早速、転移魔法でみんなを各地に送り出す。
「では準備出来ましたか? グループ毎に転移魔法で移動しますよ!」
「「て、転移魔法!?」」
「冗談もSSS級とはな、大したファラオだ!」
冗談だと思われ、冒険者達にドッと笑いが起こった。レヴィアとルミネスは拳を抑え、黙ったまま見守ってくれている。
僕が馬鹿にされてもギルドで暴れない様にと、特にルミネスには強く念を押しておいた。
信じて無いないので、説明するよりさっさと見せた方が早い。
「古代魔法・『空間転移』」
パパッと転移魔法を発動すると、冒険者達の空気がピリッと変わり、顔が一斉に強張って行く。
「え……!?」
「空間が割れたぁ!?」
「うおおお?? 本当に転移魔法だ!」
出現した転移の狭間に驚き、気を失ってパタパタと倒れる冒険者、悲鳴を上げながら外へ走って逃げて行く冒険者もいた。
あれ、気絶しちゃったな? なんか駄目っぽいな……
※
倒れた冒険者を除き、残った数名と火山に転移し、『音波』の魔法を使ってルビー採取が出来る洞窟を探し出した。さてと、採取クエスト開始だ!
滲むように赤く光る洞窟内の壁を、採取スキルに長けた冒険者達がツルハシでガンガン!と削り落として行く。
申し訳ないけど、今回のクエストに関しては見守っているだけとなってしまった。その内、何かで恩返ししないとな!
「ファラオさん! 採れましたよ、どうですか?」
「ありがとうございます、このサイズの鉱石ならバッチリです、流石ですね!」
手渡されたのは、大きな火属性の魔法石、ルビーの鉱石だ。これに魔力を蓄積すると、液体燃料の数倍の効率を発揮する魔法石となる。
ゴロゴロッと足元に転がった、真っ黒なルビーの鉱石を全て収納魔法でしまい、ルビーの採取クエストはお終いとなった。




