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実技試験 4

 走るカレンの後を追いかけ、森の中へとレア草を求めて移動する。


 この森は足場が程良く固く歩きやすい上に、木が隣接して生えていないので遠くの方まで見渡せる。


 最弱のカレンでも楽に進める安全な森だな。


 一応、検索の魔法を飛ばしておこう、辺りに危険な魔獣がいる可能性もあるし。


 急に足を止めた僕を振り返るカレン。


「どうしたのドミニク? 早く進むよ!」


 急かすカレンを遮り、右手で検索の魔法陣を描く。


「カレン、ちょっと待って!

 初級魔法(オリジナル)・『検索(サーチ)』」


 展開された魔法陣から、広範囲に届く検索の光の粒子が飛び出した。


『検索』は魔力の光を飛ばし、周辺にある魔力を持った生物や物体を見つける事ができる魔法だ。


 検索によると何人か生徒が潜んでるな……でも魔獣の気配は無い。


「安全そうだね、行こうカレン!」

「うん、もうすぐそこだよ! あの大きな木の後ろ側!」


 カレンの指差した先に見えた大樹の裏に回り、湿気のありそうな場所に視線を這わせる。


 えーっと、どこだー?


 足場の草木に紛れ、ハート形の葉を持つ薬草が数本生えていた。


「見つけた! これは興奮草の亜種だね。こんな森に生えてる訳が無いんだけど……」

「ね、私の言った通りでしょー」


 自信に満ちた表情で薬草に目をつけたカレンは、しゃがみ込んで薬草の茎を掴み、グイグイと引っこ抜き始めた。


「それー、えいっ!」


 ブチブチ!っと薬草の千切れる音が聞こえた。ああ……そんな乱暴な抜き方じゃ駄目だ!


「カレン待って、根っこが千切れちゃうから慎重にね」


「解ってるよー」


 《ブチブチ!》


 駄目だ、全然解ってない……今回はカレンの手柄だし文句は言えないけど。よーし、僕も抜こうっと!


 しゃがみ込み、負けじと僕も薬草採取を始めた。


 痒いな……この薬草、抜く度に何故か目が痒くなるぞ?


「カレン目が赤いよ、痒く無い?」

「目が痒いー、でも楽しくなって来た!」


 2人で眼をこすりながらもどんどん草を抜いていく。普通の興奮草と違い、草を抜いた時に痒みの成分が飛び散ってるのか。


  全て抜き終わり、少し辺りを探索してみたけど他に薬草は見つからず、合計15本の薬草を採取した。


「一旦僕の家の保管室に行くよ、薬草を片付けないと。

 古代魔法・『空間転移』」


「はーい、試験中だけどね」


 ブィーンと空間が割れ、出現した真っ黒な転移の狭間を潜ると、家のリビングの床に着地した。


 裏庭に出て、日当たりの良い透明なガラスで作られた大きな『薬草保管室』に入る。


 ガラスを繋ぐ鉄枠に混みこまれた魔法石で、酸素の供給と温度調整を行い、各スペースの花壇に様々な薬草が植えてある。


 普段、保管室にはカレンは連れて来ないので興味津々に珍しい薬草をつついていた。


「ねえドミニク、こっちの容器に入ってるのは?」

「僕の栽培してるキノコだよ、あんまりベタベタ触らないでね」


 隔離した新しいスペースに、興奮草を埋め直す。


 亜種の薬草は詳細不明の危険な物もあるので、他の薬草とは一緒に保管しない。


 早く戻らないとな、最後の一本と! あれ? 何かメモが巻き付けてある?


『実験草 (興奮草・遺伝子組み替え) 』


 やばい……これ養成学校の実験草じゃないのか!?


「カレンこれって……?」

「学校の物だったんだ!? ごめんね、戻しに行こう……」


 せっかくの研究材料がちっくしょー、勿体無い!


 そうだ……空間転移の時に1本だけ家にポイッすればバレないか。


 先にカレンが転移の狭間に入ってから作戦決行だ!


 空間転移は行き慣れた家に戻るのは簡単だけど、違う場所に行く場合は曖昧な記憶を頼りに転移するので、結構なズレが出る。


 集中集中!


 古代魔法・『空間転移』


「さぁさぁカレン、先に入ってー! ふふん~」

「……あやしい。何で1本だけ手に持ってるの? 駄目だよドミニク、めっ!」


 ば、ばれた! こうなったらヤケだ、薬草オタクを舐めるなよ!!


 薬草を奪おうと手を伸ばして来たカレンに抵抗し、揉みくちゃになりながら空間の狭間へと吸い込まれた。


  ※


 ふぅ……異常な魔道具を持った生徒の調査か。


 生徒の目撃証言によると、試験開始直後に異様な杖を持っていた生徒が、レオル君を上空へと吹き飛ばしたらしい。


「養成学校の教員になってもう何年も経つけど、今年は本当に異常ね」


 ……ん? なにこの魔力?


 ふと感じた違和感に足を止め、木の陰に隠れた。


 背後に誰かが居る……いや気配は無かった、突然何かが現れた?


 バッと後ろを振り返ると、落ち葉の上に倒れ絡み合う2人の生徒が見えた。

 

「駄目だよ、ドミニクったら強引だよ!」

「ごめん、つい我慢できなくて……」


 だだだ抱き合ってる! こんな森で何やってるのこの子達!? 服もハダけてるし!?


「貴方達! こんな所で何やってるの!?」


 慌てて制服のボタンを止め直す年頃の男女……


「あわわ、カルナ先生だ! 違うんです、ドミニクのキノコを見せて貰ってただけです!」

「ちょ!? カレン何言ってんの!?」


 キノコ!? よく見たらこの子達目が血走ってるわ。


 倒れ、絡み合う2人の手元に怪しげな薬草が落ちていた。


 あの薬草は……興奮草!?


 そう言う事ね、全て理解したわ! なんて卑猥な生徒達なの、教育が必要ね。


「この養成学校では不純異性交遊は許しません、今すぐその根性を叩き直してあげます! 立ちなさい! ドミニク君!!」

「何で僕だけなんですか!」


 ふふ、見てなさい不良生徒達、教員と生徒との絶対的な力の差、魔法の力と言う物を叩き込んであげるわ。


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