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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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「不覚……! 拡声の魔法とは……」


 片膝を地面についたウルゴさんは、長剣を地面に刺して体を支え、倒れまいと歯を食いしばっていた。


 ふぅ、殺傷能力の低い氷の魔法でも何とかなったな。

 接近戦に持ち込まれた時、相手の動きに合わせて自然に体が反応していた。これも、僕の接近戦闘の適性がSランクだったお陰かな?


 膝をついたまま動かないウルゴさんに、ゆっくりと近付いて行くと、鬼の形相で睨みつけて来た。


「ぬぉぉ! とどめを刺せ小僧!!」


 降参は無しか……少し気がひけるけど、ここでやらない訳にはいかないよな。


「……いきます!」


 おもいっきり足に力を込めて、鎧の胸部をガン!!っと蹴った。


「ぬおぉ!!」


 鎧がひしゃげる音がし、ウルゴさんは勢い良く後方へ吹き飛んだ。そのままコロセウムの石壁をドゴーン!と突き破って、崩れた瓦礫に埋もれてしまった。


「しっかりして下さい! ウルゴ団長!」


 急いでレヴィアが駆け寄り、ウルゴさんを瓦礫の山から引っ張り出して、容態を確認する。


「命に別状はありませんが、意識を失っています……ドミニク、どうやら貴方の勝ちの様です」


「この勝負、ドミニク様の勝ちだ!!」


 ルミネスが大きく拳を掲げて叫び、レヴィアも負けを認めた、これで決着だ。まさか武闘大会2位の騎士団長に勝てるなんてな、運が良かったな。


 呆気にとられていた観客達から、パチパチと小さな拍手が鳴り始め、決闘を讃える声も混じり、次第に大きくなって行く。


「ギルドの小僧ー! 良くやった!」

「あれが冒険者だ! 騎士どもが黙り込んでるぞ、ははっ」


 僕の素性を知ってる冒険者も、何人か観戦に来てたみたいだ。肩身が狭いと思っていたら、完全に敵地って訳じゃ無かったな。


 回復の魔法で怪我を直し、意識を取り戻したウルゴさんが、レヴィアに支えられながら歩いて来た。


「ウルゴさん、大丈夫ですか?」

「ぬぅ……お主、手を抜いておったな? それに、これだけの魔法を放っておいて、良く平然としていられるのう」


「いえ、自分でも良く分からなくて……この魔法って凄いんですか?」


 コロセウムの硬い土の上には、大きな氷柱(つらら)の槍が数百本近く刺さり、割れた氷の残骸が光りを反射していた。

 刺さった氷柱の槍に触れながら、レヴィアが呆れた様子で口を開いた。


「凄い所じゃないですよ、人間にこんな魔法が使えるとは思えませんが……貴方、自覚が無いのですか?」

「うーん、それが、良く分からないんだよね……」


 とは言え、これだけ盛大に古代魔法やらアイススピアーをぶっ放したのに、ウルゴさんには掠りもしなかった。時と場合によっては、僕が負けていた可能性もある。


 ※


 こうして決闘は無事に終わった。


 ……かに思えたけど。


 レヴィアの策略により、ウルゴさんに実力を認められた僕は、半ば強引にグリフォン聖騎士団に入団する事となった。

 入団とは言っても、騎士団に名を置くだけ、エドワード王子が持ちかけて来た様な、クレームのクエストは受けないと、それで一応は納得した。


 それからが大変だった、アイリスを転移魔法でエリシアスに送り返し、魔法商店で祭壇を建築中のトムさん達にも事情を話した。

 再び、王都に転移して、ファルコンさんの所へフィアを迎えに行き、王宮調合室をルミネスと一緒に守る様に任せて2人と別れた。


 休む間も無く、その日の夜に入団記念パーティが王城で開催される事になった。


「これより、ドミニクの王宮調合師、就任と、入団記念パーティを開始するぞ!」


 エドワード王子の声が響く王城のテラスにて、僕はマデリンさんに借りた正装の黒のタキシード、レヴィアは白のドレスに身を包み、冷やかされながら、2人でぎこちなくダンスを踊る羽目になった。


 聖騎士団とは言っても、冒険者達とそう変わり無い

。庭で好き勝手に暴れ、魔獣の肉を片手に飲めや歌えやの大騒ぎだ。

 酔った騎士の人達に酒を飲めと絡まれ、レヴィアと決闘の話でいじられ、散々庭を駆け回った。ファルコンさんは、隅っこで野菜をバリボリ食べていた。


 もう忘れかけてたけど、レシピ盗難事件のウェルソン教授の話を、騎士団の人から聞いた。極刑は免れ、数十年の長い監獄暮らしが決まったそうだ。みんな、そりゃそうだ、程度の反応だったけど。


 やっとの事落ち着いてから、ウルゴさんとレヴィアの3人でテーブルを囲む。


「久々に騒いだのう! しかし、レヴィアが惚れるだけの男ではあるな」

「ホホ、ホレタ訳ではありません!! で、ですよね! ドミニク!」


「ははっ、僕に聞かれても」


 ウルゴ団長にからかわれ、顔を真っ赤にして全力で否定するレヴィア。

 彼女は16歳、騎士団の中では最年少なので、気軽に話せる友人が居ないみたいだ。それと、特殊な魔法が使える僕に興味を持ってくれただけだろう。


「その……ドミニク! 魔導書をいくつか持って来たのですが、教えてくれませんか? こことここなんですが」

「どれどれ?」


 レヴィアの持って来た、ハードカバーの絵本の様な魔導書は、去年に発売された『現代魔法から予測する古代魔法理論』と言う、まぁ分かりやすいタイトルの魔導書だった。

 僕も古代魔法について詳しく調べた事はある。しかし、何故、特定の人にしか使えないのか、その理由は魔力の質、以外に解らなかった。


 案の定、この本の内容はそれっぽい事が、核心に触れず書かれていた。


「これは間違ってるね……そもそも、古代魔法は純粋に魔力の質が関係してくるから。使えない人は使えないよ」

「そうなのですか? では、私は転移魔法が使えないのですね……」


 突然、何の話だ!?と、ウルゴさんが、慌てて会話に割り込んで来た。


「ドミニク、お主、転移魔法が使えるのか!?」

「使えますよ、行った事のある場所に限られますが」


「ぬぅぅ、ちょっと来てくれ、見て欲しいものがあるんだ」


 ※


 何やら真剣なウルゴ団長に連れられ、王城内の、大きな本棚の並んだ、騎士団の本部へと案内された。レヴィアが並べられた資料の中から、何かを熱心に探している。


「いきなりすまんのう、これが探索の任務中に遭難し、行方不明者となってしまった団員達のリストだ」

「どういう事ですか? 仲間とはぐれたんですか?」


「うむ、不運にも強力な魔獣に襲われてしまってな……ギルドに依頼を出してはいるが見つからず、探しに行こうにも、グリフォンを飛ばすには遠いのだ。エリシアスには騎士団の拠点が無いからのう」


 遭難者リストか、雪山、火山に、森林地帯、無限の霧樹海まであるな。


「なるほど、これっていつ頃の話なんですか? 探索チームはもう出てないんですか?」

「1週間以上前になります……魔獣から身を隠す為、隠蔽の魔法を使っているらしく、検索の魔法に引っかからないのです……」


「1週間も前!? 解りました……今すぐ助けに行きましょう」


 ガタッと椅子から立ち上がり、僕が即答すると、キョトンとした顔で2人が顔を見合わせた。


「良いのか!? お主、クエストは受けてくれないのでは無かったのか!?」


「いえ、それとこれとは話が別ですよ。レヴィア、今すぐ出発して全員連れて帰るよ」

「ドミニク……はい、準備して来ます!」

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