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《3巻発売中》 僕がSSSランクの冒険者なのは養成学校では秘密です  作者: 厨二の冒険者
第2章 仕様上削除不可の ifルートおなっております。
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 ウルゴ騎士団長は、2mの巨体に銀の鎧を纏った人狼族だ。ほぼ鳥のファルコンさんとは違い、5対5の要素で人と狼が上手く混ざり合っている。


 一般的に人狼族は、人間と敵対し、森で暮らす一族だ。

 しかし、ウルゴさんの様に人間に理解を示し、友好関係を結ぶ事もある。ちなみにウルゴさんは、ここで開催される武闘大会で、毎年2位の戦績を残す強者らしい。1位は勿論、養成学校校長、Sランクのルーシスた。

 有名な武人には、身体能力に優れた獣人が多い。ルーシス校長が『ゴリラに育てられた』と例えられるのも、こう言った獣人達に例えた表現の一種だろう、多分……


 向かい合う僕とウルゴさんの間に、審判を務めるルミネスとレヴィアが立つ。


「「始め!!」」 


 開始の合図と共に、2人の手が振り下ろされた。


「先手は打たせて貰いますよ!

 初級魔法(オリジナル)・『解析(アナライズ)』」


 開始の合図に合わせて、迷う事なく解析の光を放つ。


「ふむっ……」


 ウルゴさんは長剣の刃を肩に乗せたまま、仁王立ちで躱そうとはしない。


「妙な魔法を使うとは聞いていたが、面白いのう」

「普通ですよ、ボーッとしてて良いんですか?」


 解析の光が銀の体毛に潜り込み、探り出した魔力情報が頭に流れ込んで来る。


 なるほどね、ウルゴさんの体内に流れるエレメンタルは、火の要素が強い。それに、あの翠の眼は魔眼だ。魔法陣を見ただけで、その特性を把握する厄介な力を持っている。


「行きますよ。

 古代魔法・時空凍結魔法・

『フロスト・アイス・エ(霜降る氷河期)イジ』」


 魔法陣を描いて呪文を唱えると、僕の足元から全方位に向けて、青い氷の絨毯(じゅうたん)がカチコチと広がっていく。空気が凍りつき、吐いた息が白く変わる。

 コロセウム全体が冬の様に寒くなり、幻想的な雪が降り始めた。決闘を見守る観客達の空気も、次第に異様な物に変わっていく。


「なんだこりゃ……雪が降ってるぞ、見た事ない魔法だな」

「凄いな、季節を変える魔法か?」


 レヴィアが不思議そうに雪を手で仰いでいた、対してウルゴさんは仁王立ちのままだ。


 この魔法は、効果範囲内のフィールドを氷の属性で満たし、火属性の魔法を封じる事が出来る。反対に、氷の魔法は強化され、イメージしただけで自由に氷を生み出せる。


「やけに余裕ですね? この空間では、氷の魔法しか発動しませんよ」

「この圧倒的な魔力、やはり猛者であったか! 少年よ!」


 相手は身体能力に優れた人狼だ、脅威となる機動力を先手で奪う!


初級魔法(オリジナル)・『アイスバインド(氷結捕縛)』」


 右手を(かざ)し、細長い人狼の足を絡め取ろうと、氷の絨毯(じゅうたん)を変形させる。


 させぬ! っと瞬時にウルゴさんも高速で駆け出し、氷を(かわ)しながらフィールド内を移動して行く。


 駄目だな、相手が早すぎて氷が追いつかない。まぁ(かわ)されるのは想定通り、さっさと次の手を打つ。


 ジグザグに逃げて行く影を目掛けて、適当にポーンと、氷の玉を放り投げる。


1000連詠唱(サウザンドキャスト)・『アイススピア(氷の槍)ー』」


 投げた氷の球が空中で拡散し、1000本の氷柱(つらら)の槍となり、ズドドド! と地面に突き刺さって行く。


 迫り来るつららの槍を、ウルゴさんは獣の俊敏さで躱しながら、氷のフィールドの更に奥へと向かって行く。


 不味いな……もう気付かれたのか?


 アイスエイジの魔法は4つの氷の核を繋ぐ事により、四角のフィールドを作り出す魔法だ。1つ核を壊せば三角のフィールドとなり、2つ核を壊せば簡単に崩される。


「ぬおお!」


 雄叫びをあげながらガキン! っと氷の核を砕き、続け様に、反対側の核も破壊された。あっと言う間にアイスエイジの魔法が消滅し、氷柱(つらら)の槍が地面にガラガラと落下して行く。


「あーあ、さすがですね……」


 休む間も無く、ウルゴさんは長剣を地面に垂らし、左手で魔法陣を描きながら、こちらへ迫って来る。


「今度はワシの番だぞ!」


 すぐさま解除の魔法を放ち、描かれた魔法陣を崩すも、ウルゴさんの本命は接近戦だ。


 一瞬で間合いに入られ、僕を仕留めようと長剣が振られる。紙一重で躱し、距離を取ろうとするも、人狼を振り切るのは容易じゃない。続けざまに振られる剣を避け、素手でカウンターを打ち込む。


「接近戦も出来るのか!! お主やるな!」

「いえいえ、どうもです」


 近距離での均衡した攻防が続き、コロセウムから歓声が巻き起こった。


「うおお! すげぇ、あのガキも結構やるな!」

「やっちまえー! ウルゴ団長ー!」


 レヴィアとルミネスは、少し離れた所から僕達の戦いを見守っている。


「もうすぐ5分です、ウルゴ団長を相手にして、良く頑張りましたね……」

「あの人狼、まぁまぁ出来るな……だが、ここまでだ」


 確かにこの人は強い、でも僕とウルゴさんには決定的な違いがある。


「獣の血が滾るのぉ! 本気で来い、小僧!」


 挑発する様に手を振り、獣の本能で戦いを楽しむウルゴさん。対して僕は、思考を巡らせ、僅かな勝利への鍵を探る。


 ウルゴさんの戦闘スタイルには、妙な特徴がある。背を向けたまま、背面の攻撃をいなし、向かい合っていても、視線と違う方向から剣が振られる。まるで目が見えて無いみたいだ。


 あるいは、別の何かに頼って、敵の位置を捉えているか……


 ボソッとそう呟き、隠蔽の魔法陣に重ねて、2つの魔法陣を描く。


「どうした! 動きが鈍ってきたぞ! お終いだ!」


 すかさず、ウルゴさんが長剣を振るい、僕の左肩をズバン!っと、真横に切り裂いた。

 

 と同時に、1つ目の魔法が発動する。氷の身代わりと、捕縛の魔法を掛け合わせたカウンターマジック。一瞬で僕の全身がバラバラに砕け、氷の塊へと変化すると、ウルゴさんの足を凍らせて地面に固定した。


「しまった、油断した! 罠かあ!!」


 割れた氷の陰から、バックステップで距離を取り、身動きの取れないウルゴさんの背面に回り込む。


 2つ目の魔法、音を大きくする時に使うシンプルな魔法だ。これは使い方を間違えると、結構危険だったりする。


「ウルゴさんって、凄く耳が良いんですね?」


 まさか!? っと、僕の魔法陣を見て、ウルゴさんは動揺を隠せないくらい慌て始めた。


「ぬおお! 待て、その魔法は駄目だぁ!!」


 獣人は人間より遥かに耳が良い、特にウルゴさんは音を頼りに剣を振る戦闘スタイルだ。すなわち、聴覚さえ潰してしまえば動きも鈍る。


「これはさすがに躱せませんよね!

 初級魔法(オリジナル)・『拡声』」


 魔法陣に向けて、両手をパーン!!! と叩きつけると、破裂音が何倍にも膨れ上がり、ウルゴさんの鼓膜を破壊してコロセウムに響き渡った。


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