本編② ── 彼女の要求
冷や汗が、止まらない。
彼女が、俺たちを覗いてきて、近づいてくる。
まずい。まずい。まずい。
「──晴翔と、一樹だよね?」
「「‥‥‥‥‥‥」」
「どうして黙るわけ? 晴翔なら、一樹なら、返事をしてくれてもいいんじゃないの?」
「ぁ、んのね、俺たちあっちだから。あっち、一般向け。だからさようならー、みたいなァ? ははは」
花岡が喋りだした。こいつ頭悪いな。
そんなこと言ったらボロクソ言われるに決まっている。
「あ、やっぱり貴方たちなのね。それにしても、久しぶりに会ったのだから、少しくらいは立ち話をしてくれたっていいじゃない? 私のこと、そんなにも嫌っているわけ? どうなの?」
「そ、そうですよねー。嫌いじゃないし、立ち話をしましょうか。えっと、どうして成年向けコーナーにいるのでしょう?」
馬鹿か! 馬鹿なのかこいつは!
それ一番訊いちゃいけないことだろうがァッ!
「‥‥‥レズなのよね、私。最近自分がレズだってことに気がついたのだけれど。だからちょっと、女の子が可愛く描かれてるもの、買いたくなってね。まあ、それでもあなたたち、ロリコンよりはいいと思っているわよ。ロリコンなんて、救いようがないものね」
「「‥‥‥‥‥‥」」
「むしろ、ゴミの同義語だものね、ロリコンなんて」
言わせておけばこのアマ、ラノベ原作のアニメを否定するようなこと言いやがって‥‥‥!
ラノベとか、ほぼ必ず一作に一人以上ロリがいるからな!
つーかむしろラノベ作家なんてロリコンしかいないからな! 一部の頭おかしい巨乳好きは置いておいて。
「【悲報】俺氏、元恋人にボロクソ言われる‥‥‥」
あ、やばい。こいつの頭おかしくなってる。
「それはそうとあなたたち、今夜は空いている? どちらでも構わないのだけど、両親が帰ってこないという家はないかしら」
「‥‥‥いや、俺たちシェアルーム的なことしてるから、両方とも両親は来ないぞ」
壊れた花岡の代わりに、俺が答えてやる。
もう花岡は使いものにならないだろうし。
「へえ、それは都合がいいわね。今日──いえ、下手すればもっとなのだけれど、家に泊めていただけないかしら」
「‥‥‥それはまた、どういったご用件で?」
「私、いま家出中なのよ。だから秋葉原なんてところに来ているわけだし。
ほら、会員制の漫画喫茶だと、両親にバレそうで怖いのよね。秋葉原なら、会員制じゃない漫画喫茶、いくらでもありそうだったし。
というわけでこんなところに来たわけなのだけれど、ほら、私って美人じゃない? そんな美人が漫画喫茶にいたら、オタクどもにレイプされるってものよ」
「オタクを否定的に見る奴など、泊める気はない」
「悪かったわ。オタクって、素晴らしい存在よね。最近の人たちにはなかなか出来ないわよ、自分の欲望に真っすぐになれるって。本当、憧れちゃうわ」
「‥‥‥‥‥仕方がない。一日だけだ、泊めてやるよ」
オタクのことを褒められて、ちょっと嬉しかったのは内緒だ(*'ω'*)。
‥‥‥なんか俺、どんどんキャラ崩壊していってる気がするんだが。
一昨日は本編が書けなく、すみませんでした。
その代わりと言ってはなんですが、次回は明日投稿します。