本編⑯ ── 一樹、晴翔、小林はそれぞれ動き出す
六月になった。私こと篠原 美女でさえ就職を意識し始めた、大学三年の六月。
婚約者の晴翔は「アニメ制作会社の制作進行になる!」とかよく解らないことを言ってた。あ、ちなみに四月の下旬ごろに私のお父さんには挨拶しにいった。晴翔と一緒に、結婚するって言って。そしたら普通に了承されて、けっこうビビった。
「あー、もう大学とか面倒だァ! 早く家に帰ってアニメが見てえ!」
大学も終わり、迎えに行って一緒に帰っていた晴翔が叫ぶ。ちなみに小林と一樹もいる。
しかし、一樹は最近何かがおかしい。こう、何かに熱中しているというか。いつもパソコンのキーボードを叩いている。
まったく、何をしてんだか。
一樹のキーボードを叩く音が、よく響く。正直言ってうるさい。
晴翔も最近はアニメも一日三本くらいしか見ないで、ずっとパソコンいじってる。就職のことだろうか。
小林に関してはずっと絵を描いている。
「なあ。一樹おまえ、マジでなにしてんの?」
いつも訊いているが、ずっと答えてくれない。
でも今回は、違った。ふっと微笑み、
「ロリコンが普通になる方法、見つけちまったんだよ」
「‥‥‥あっそう」
正直、一樹はこのままでいいと思う。むしろ小学校のころの「幼女のオマンコ(^ω^)ペロペロ」とか叫んでたときのほうが、生き生きしていた。
これ以上普通になったら、一樹は一体どうなっちゃうんだろう。
七月になった。セミの鳴き声が頭に響く。みーん、みーんと。
一樹はキーボードを叩いていて相変わらずだが、たまに「へへっ」と笑ったりしてより一層気持ち悪くなった。
晴翔は本格的に制作進行とやらになる努力をしているみたいで、もう就活を始めてる。
小林は将来にまったく不安がないみたい。ニヤニヤしながらずーっと絵を描いてる。まあ、小林の描く絵って綺麗だし売れてそうだから将来が安定しているのは当たり前なんだろうけど。顔に似合わず。
「ょ」
突然、一樹が声を漏らした。
一樹のほうを向くと、見たことのないくらいの笑顔をしていた。あのころのように、生き生きと。
座っていた椅子から立ち上がり、ガッツポーズで吠える。
「よっしゃァァ──アアッッ!」
「ぎゃあァ! ‥‥‥なんだ、守田かビビったあ」と晴翔。
「‥‥‥つ、ついに頭がおかしくなったんですね、わかりマス」と小林。
しかし一樹には彼ら二人の声はまったく聞こえていなかったようで、ずっとニヤニヤしている。
そして笑顔のまま私たちを見る。「へ、へへェ‥‥‥」とキモい笑みで。
「なあみんな、俺、決めたよ──」
そして一樹は、自分の将来を語りだす。
お待たせしました、あと二話で本編は終わる予定です。
まあ、終わってもエピローグがあるけれど。ちなみにそれが一番書きたかった。
というわけで、できたら次回は今日中に投稿します。




