本編⑪ ── 俺と彼女の距離が変換されるまで。2
三月中旬。
俺は篠原と、二人きりで家にいた。
そして。
「‥‥‥これから始まる、こと?」
「これだから鈍感は嫌なのよ。同じくらいの歳の男女と、ベッドが一つ。やることは一つでしょう?」
「ま、まさかセッ‥‥‥お、おいッ! お前彼氏がいるんだろ!? こんな不倫みたいなことやってていいのかよ!」
「ああ、彼とはあの日貴方たちと秋葉原で会ってから、すぐに別れたわよ」
「‥‥‥‥‥えぇ?」
ってことは不倫じゃないのか。じゃあ合法? いや、まだセック●なのかも確定してないのに早とちりするなよ俺氏。
いやまずなんだこいつはという疑問を持たなきゃダメだろ。なに、最近の女子大生は彼氏と別れたらもう誰でもいい感じにアタックするわけ?
だいたい俺よりかっこいい奴なんて大学にいくらでもいるだろうに。
「とりあえず落ち着け。な? お茶を出してやるからアニメでも見ながらそこに座っていろ」と、リビングにある椅子を指さす。
「‥‥‥こんなときまで、アニメなのね‥‥‥」
「別にいいだろ。好きなんだから」
「そうね‥‥‥」
お茶ができ、俺は篠原にお茶を渡してやるため歩く。ちなみにその間、篠原はアニメを見なかった。まあ別にいいけど。
そして篠原のところまで持っていき、「ほらよ」と言いかけたその瞬間、俺の額に何か柔らかいものが当たるような感覚があった。
それは──
ちゅっ。
「‥‥‥‥
ちゅ?」
それは、俺がいつも画面の向こうで見てきた光景。
メインヒロインが、主人公の額にキスをする光景。
そう、篠原は俺の額にキスをしたのだ。不意だったため、せっかく作ったお茶が溢れてしまう。氷をお茶にいれたおかげか、篠原は特に熱がらず唇も離さない。
そして、その唇は俺から離れ、ゆっくりと下のほうに動いていく。
俺の、口元まで。
「好きよ、晴翔」
その台詞とともに、俺の口の中が篠原の舌で満たされていく。
身体が近いせいで、篠原の髪の匂いが伝わってくる。数年前に嗅いだ、あの優しい匂いのままだった。
「篠原‥‥‥」
「あの日、私が家出していた日に貴方に説教されて、また惚れ直したのよ。
私のこと、こんなにも考えていてくれてたんだって。だから彼氏とも、すぐに別れた」
「篠原‥‥‥!」
「二次元なんかじゃなくて、私を見なさいよねっ!」
その声は、涙声だった。
嬉しかった。
愛しかった。
戻りたかった。
あのころに。
一緒にご飯を食べ、一緒に笑っていたあのころに。
「美女ォ‥‥‥!」
「ふふっ、やっと名前で呼んでくれたわね」
「‥‥‥愛してるぞ、美女」
「私もよ」
俺たちはそのまま、床へ転がった。
キスをして、抱きしめて。
「ベッド、用意したのに無駄になっちゃったわね」
「そんなことはないぞ。いまから行こう」
「‥‥‥ん」
俺たちはベッドの中で、気づけば何時間も過ごしていた。
そしていつの間にか寝てしまっていて、起きると美女はいなかった。
その代わりに、守田がいたが。
ため息を吐くような声で、守田は言ってくる。
「何も訊かないから、服を着ろ」
「‥‥‥うっす」
これからもちょくちょく花岡回が続いて、少しずつ篠原との距離が発展していく予定です。
近況としては、今夜の進撃●巨人楽しみにしてます。だからお前らも少しは話題にしてあげてよ!
では、次回は明後日投稿します。たぶん小林回になります。




