本編⑩ ── 俺と彼女の距離が変換されるまで。1
「来てあげたわ、晴翔」
「‥‥‥おう」
俺こと花岡 晴翔は、区立図書館に来ていた。
理由は篠原から「勉強教えなさい」と誘われたからで、まあそれくらいならと俺もオッケーした。
しかし上から目線だな、この女。昔、本気で愛していたということで注意するのに躊躇してしまうが。ちなみにキスまでした。セッ●スはしてない。キスだけ。俺のファーストキス。篠原はファーストキスでもなんでもないと思うけどな。大学の女とかみんなヤリマンに見えて恐いわ。
「さて、どこかに移動しましょう」
「え、図書館じゃダメなのか?」
「当たり前じゃない。だいたい私は勉強道具なんて持ってきていないわよ」
「はぁ? なにしに来たんだよおまえ‥‥‥」
「当たり前じゃない、勉強よ」
「おい、矛盾してるぞ」
「鈍いわね。嫌われるわよ。勉強と言っても、いろんな勉強があるでしょう? ‥‥‥性の勉強、とかね?」
「はッ、はぁ!? お、おおおお前なに言ってんの!?!? 健全な大学生オタがそんな台詞で三次元に萌えるとでも思っているのですか笑笑笑笑ッッ!!」
しまった、公共施設なのに大声を出してしまった。
周りの奴らが一斉に俺のほうを見てくる。うわなにこの目線辛い。苦笑すらうまくできなくてもっと目線が酷くなる俺ってマジでなんなの。
「こんなところで大声を出さないで頂戴。大声を出して他の方に迷惑がかかるのもなんだし、とりあえず外に出ましょう」
「お、おぉう」
とりあえず外まで出てきたが、なにこのラノベ的な展開。
だいたい俺たち別れてるし? あっち俺と別れてからまた違う男作ったみたいだから俺にチャンスすらないし? いや、別にいまのはチャンスがあったら攻めてたとかそういう発言じゃないから勘違いしないでよねっ。やだいまの晴翔くん可愛い。
「‥‥‥おい、こっからどこに行くんだ。勉強しないんなら別れたいんですがそれは」
「‥‥‥釣れないわねぇ。まあいいわ、これからじっくりと料理していってあ、げ、る」
「ぶひィッ!?」
キモい声が出た。でもしょうがないじゃん。股間触られたんだぞ?
おいこれを見ている貴様ら、これが現実だ。現実の女子は男子の股間を触るのに躊躇なんてしないんだぞ。
「さて、これからどうしようかしらね」
「‥‥‥部屋に戻ってアニメ見たい」
「私のような美少女と一緒にいながら、考えることは二次元なの? 忌々しいわね」
「うるさいなあ。だって考えてもみろ、あの世界には貴様のように股間を触るような仲になるまでに何年もかかるような純粋無垢な子たちばっかなんだぞ。そう、お前らビッチとは違うのだ」
「あら。この前あなたが見てたアニメでの台詞に『あたしと同じくらいの歳の女の子は、みんなおちんちん大好きです!』っていう台詞があったじゃない」
「あれはあれで萌えるからいいんだよッ!」
「ほら。結局二次元ならなんだっていいんじゃない」
「ぐぅッ!」
やーめーてー! アニオタを根本から否定するようなこと言わないでー!
っていうかなに? こいつ俺のこと好きなの? なんで俺にこんな構ってくるわけ?
「貴方の部屋には一樹とかいるのかしら?」
「今日は小林と中野行くって言ってたからいないと思うけど‥‥‥、それがどうかしたのか?」
「‥‥‥よし、ならアパートに行くわよ」
「はぁ? 今日のおまえ意味わかんねェぞ‥‥‥」
「行けば解るわよ」
その顔は、笑っていた。こわい。
というわけで家まで来た。そういえば言うのを忘れていたが、守田、小林、俺で家賃は三等分している。俺は一人暮らししているということを親に伝えてある。
あと俺の資金源はバイトな。親は別に金持ちというわけでもない。年収700万の普通の家庭。
「ベッドは‥‥‥こっちね」
「おい貴様なにをやっているぅ!?」
「‥‥‥‥」
俺が叫ぶと篠原は俺のほうに首を傾け、数秒沈黙する。
そして俺のほうまで近づき、俺の耳元で呟く。
「──これから始まることへの、準備に決まってるじゃない」
「‥‥‥‥‥へぁあ?」
耳元に息が吹きかけられて、変な声が出てしまう。
なるほど、だいたいわかったぞ。
どうやら今日の篠原は、一筋縄では帰らないっぽい。
前回息抜き回と言ったのですが、そんなの俺もつまんねぇし引き伸ばしてるみたいで嫌だったので普通に本編書くことにしました。
というわけで、花岡回です。
次回は今日のうちに投稿しようと思います。




