本編⑧ ── 妹萌(後編)
「
あ?」
部屋を見回してみると、端のほうで妹が頭を抱えていた。
俺は追いつかない頭を必死に回し、恐る恐る妹に訊く。
「‥‥‥‥こ、れ。お前が、‥‥‥やったの、か?」
姉は化物でも見たような目で俺のほうを見る。
口元が震えていたのをよく憶えている。いや、俺はこの顔を忘れてはいけないのだろう。
「‥‥‥ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、わざとじゃないの。だって、本棚のほうを見てみたら、‥‥‥妹、妹っていっぱい書いてあって、気持ち悪くてッ‥‥‥!」
「‥‥‥それで、僕の宝物を壊したっていうのか‥‥‥?」
「宝物? キモいッ! キモいキモいキモいッ!」
脳天が、一気に熱くなった。
そして。
気付いたら俺は、妹のことを殴りまくっていた。
「糞餓鬼がァッ! 死ねッ! 死ねッ! 死ねよッ!」
「やめてッ! やめてよお兄ちゃんッ!」
「一樹! 何をやってるの!? 今すぐ手を放しなさいッ!」
無理矢理母親に押さえつけられ、俺は殴るのをやめた。
その日の夜、夕飯を食い終わったあと、家族全員での会議が開かれた。
妹は俺と視線を合わせようとしない。父も、まるで自分が悪いとでも言いたげな険しいような哀れむような表情で俺を見てくる。
「(‥‥‥そんな目で、見るんじゃねぇよ)」
家族会議の結果、俺は高校を卒業したら一人暮らしになることが決定した。母親曰く、妹が危ないから、だとか。
そして妹からは、「‥‥‥キモ」という言葉をいただいた。無論、ゴミを見るような目つきで。
妹のゴミでも見ているような表情が忘れられない。
母親の犯罪者を見るような目つきが忘れられない。
必死に止めようとしても涙が溢れてくる。涙で歪んだ顔で、俺は壊れた宝物が片付かずにそのまま置いてある部屋で一晩を過ごした。
「ぁあぁァぁ‥‥‥ッ!」
そして俺は、「普通」となることを決意する。
これ以上、自分自身が傷つかないために。
少しいつもと較べ文字数が少なくなってしまいましたが、妹萌編はこれにて完結です。
それでももう少しだけ、過去編は続きます。お付き合いくださいませ。
それはそうと、過去にレビューを書いてくださった方が退会してしまっていて、残念でした。どこかで見てくださってると信じましょう。
そして、ブックマーク件数がすごい増えて、なんと13件になりました! ブックマーク登録してくださった皆さま、本当に感謝します、ありがとうございます!




