#第22話 全ては"あの日"の記憶より
#第22話 「全ては”あの日”の記憶より」
「消えろッ!!」
青系の暗色に加え、金の体色を持つ
“臨世刑海獣エネルゲイヤ・リヴァイアサン”は、
戦闘中のSランクブルート、
“エンシュージアスティック・タウラス”
に向けてひたすら拳を叩き込むが、
一度も命中させることが叶わずにいた。
「ヴォオオオオオオオオ!!」
タウラスは滑る様に前後左右へと自在に移動し、
リヴァイアサンの攻撃を避けつつ、
2本角による突きを繰り返す。
尚、タウラスは先ほど、その鋭い二本角で
一瞬のうちに20名以上のSAS装着者を殺害したが、
それでもリヴァイアサンに容易く致命傷を負わせる事はできていない。
「面白いぞ!!俺と戦い、ここまで耐えるとは!
だが、この状況がいつまでも続くと思うなよ?」
そう言うと、リヴァイアサンはダークブルーの硬質皮膚で覆われた拳を
痙攣を伴う程の力で握り締め、
すかさず両手を地面へと叩き付けた。
その瞬間、凄まじい地響きが起こり、
彼を中心として周囲のアスファルトに次々と亀裂が走り、不規則な段差ができる。
・・・リヴァイアサンはタウラスの高速移動を封じるため、
足場を悪くする作戦に出たのだった。
周囲のアスファルトを破壊することで、
高速移動のように地面のコンディションに影響される動作は
鈍らせる事ができる。
・・・しかし、なんとタウラスは
状態の悪くなった足場をものともせず、
瞬時にリヴァイアサンへとその二本角を突き立てたのだった。
彼は予想外の攻撃に思わず数歩後退する。
「・・・チッ、どういう事だ?
なぜこの状態で俊敏に動く事ができる?」
彼が考える暇もなく、
タウラスは見えないほどの素早さで角の突きを連続で放つ。
見る見るうちに後退を強制される。
リヴァイアサンにはダメージの蓄積が進行している。
しかし、対するタウラスにはスタミナ切れの兆候は見られない。
この事にはリヴァイアサン自身も気付いていた。
・・・何かがおかしい。
”通常”の高速移動ではない。
この自覚は彼にもあった。
ただそれを考察する暇も手段も、
間違いなく彼には残されていない。
「クソッッ!!」
リヴァイアサンは何度も拳を地面に叩き付け、
周囲への地震を引き起こすが、
何も効果はない。
しかも、この周囲はキャピタルタワーに加えて
居住施設が集中しているため、
過度な地震効果は住民にも被害が出る可能性が高く、
建築物を倒壊させるほどの攻撃は不可能。
「こうなれば”ストロングイェンモード”を・・・!」
リヴァイアサンには、建物も損壊させるような特大の咆哮を上げる事で、
周囲の人間に対して”負の感情”を引き出させる特殊な技がある。
これは人間に対しては有効な場合が多いが、
ブルートには有効である確証がない。
さらに、ここは居住施設が並ぶエリアであるため、
どれほどの犠牲者が出るかは想像できない。
「待て。」
その時、リヴァイアサンの背後から声が聞こえた。
彼がふと振り向くと、1人の大柄な男がそこに立っている。
全身黒ずくめで目にはサングラス。
身長185cmは越えているだろう。
「誰だか知らんが、ここは危険だ!
お前も死にたくなかったら立ち去れ!」
「ヴォオオオオオオオオオ!!」
タウラスは咆哮を上げると、リヴァイアサンを無視して、
角を突き出しながらその謎の男へと急接近する。
しかし、次の瞬間、男は瞬時に左側にスライドするように動くと、
そのすぐ横をタウラスが高速で通り過ぎ、
彼の背後にあった居住施設へと突っ込んだ。
角が太い鉄骨にジャストミートし、
なかなか抜けないようだ。
「アレを・・・生身の人間が避けられるというのか?
ん?お前は確か・・・?」
リヴァイアサンは驚くが、男はそれに構わず
SASのアーマードライバーを取り出し、腰に装着した。
「リヴァイアサン、お前は司令部に行った方がいい。
おそらく、指示があるはずだ。
ここは・・・俺様1人に任せてもらおうか?」
そう言うと、男は2本のアーマーチップをポケットから取り出す。
片方は紫色、もう片方は白い。
「お前・・・バーバレス幹部の
時柳宋 衛久守か?
5年前に死んだはずなのに、どうしてこんなところにいる?」
「フッ、俺様はあの日、
脳の損傷が少ない状態で発見されたらしくてな。
身体は完全に使い物にならなくなったが、
ZZZZZ社は、元の俺様と
同じ身体を再現した"テスト個体"を無理やり繋ぎ合わせた。
それが運良く俺様の脳と適合し、今ここにいるという訳だ。」
リヴァイアサンは衛久守の背後から
その話を黙って聞いている。
「・・・だが、再生は完全ではなかった。
元の時柳宋 衛久守としての記憶はほぼ残っていない。
残っているのは”浄化”を遂行するという使命感と・・・”あの日”の記憶だけ。
だが、少なくとも“あの日”の記憶があれば俺様は自我を保てる。」
彼は白いアーマーチップをドライバーのサイドに、
紫色のアーマーチップを上部のイフェクトチップ挿入口に挿入。
すかさずレバーを右にスライドさせた。
「ローズ・・・ブレイク!」
彼は両腕をクロスさせるように構える。
《ロードコンプリーション。
アーマー・シュヴァイツァー。
イフェクト・エクセプショ・・・エラーエエエエエラー・・・。》
ガイダンス音がエラーを警告するが、
アーマーは問題なく彼の身体に装着されていく。
身体全体に白く薄い装甲が張り巡らされる。
白いローブが首から垂れ下がり、
頭部ではインカムのように伸びた装甲で口を覆う。
白き戦士がそこに出現したかと思いきや、
それらのパーツが全て黒一色に変色し、
水色に発光するXの文字が
連続で繋がるように腕、身体のサイドを覆い尽くす。
頭部はインカム型装甲が弾け飛び、
代わりに水色の巨大なX型装甲が形成されて
顔面はそのXの端部分が4方向にはみ出したような容姿をしている。
そして、黒く変色したローブを脱ぎ捨てると、
腰に備えた2本の荒々しいシルエットの黒い槍が露出する。
まるで燃える炎の一瞬を象ったような凹凸が
2mほどの槍にくまなく再現されている。
「十分だ・・・。
この適合率、何も言う事は無い!!」
彼は腰の2本槍を抜き、
巧みに振り回しながら構えた。
「俺様を殺したあの男、
伊集院 雷人に復讐を果たすまで
戦い続けるとしよう。
この”シュヴァイツァー・XDAY”としてな!!」
彼の様子を見ているリヴァイアサンは、元の衛久守と戦った事はない。
だが、敵地で撮影したビデオにて、その圧倒的強さを把握していた。
その怪物が今、目の前に再誕したと言っても過言ではない状況。
しかし、彼にとって最も皮肉なのは、
彼がここに来てくれなければ自分がタウラスに殺されていたかもしれない
という事実だった。
「・・・チッ、お前の詳しい目的は知らないが、
ここは任せたぞ。」
そう言うと、リヴァイアサンは怪人態のまま
司令本部棟の方へと走っていった。
「・・・さぁ、タウラスよ。
我が浄化の礎となるが良い!」
「ヴォオオオオオオオオ!!」
対峙した闘牛とSAS装着者はほぼ同時に残像を残し、
その場から消え去った。
数える隙もなく、もはや常人には目視できない攻防戦が始まった。
#第22話 「全ては”あの日”の記憶より」 完結
お読みいただきありがとうございます。
シュヴァイツァー・XDAYは
時柳宋 衛久守と
シュヴァイツァーチップとの
驚異的な適合率の下に実現した形態です。
元々のシュヴァイツァーチップ使用者である神崎 高来は
本来の5%ほどの力しか出せていませんでしたが、
そもそもの人間兵器として開発された
時柳宋 衛久守は100%発揮させる事が可能です。
前作の実質的なラスボスである彼の新たな力は、
Sランクブルートにも通用するのか?
次回、お楽しみに!




