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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第1章 超万能"何でも屋"
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#第1話 ゾンビ病院からの脱出

#第1話 「ゾンビ病院からの脱出」






郡川こおりかわ・・・!?」


・・・こんなバカな事があるか。


目の前に現れたのは

俺のこれまでの唯一の交際相手でもあり、

植物状態の死人と言っても過言ではない女、

郡川こおりかわ 晴乃はるの




「お前・・・何で・・・何でここにいるんだ!?

 それに・・・現状について何か知っているのか?」

俺の問い掛けに対し、女はただ息を切らすだけで

返答は来ない。

それに、その場から動きもしない。


「声が出ないか・・・?」

俺はふと思った。

4年も植物状態だった人間が話せる訳がない。

まぁ、立っている事さえ奇跡なんだが・・・。


動こうとしない彼女に対して、

俺は早歩きで近付き、

ポケットからメモ帳とペンを取り出して彼女に渡した。

・・・いや、ペンを持つ事さえままならないか?

と思った次の瞬間、

彼女の右手は素早く俺のペンとメモ帳を奪い去り、

文字とは呼べないような何かを綴った。


『いっしょにきて』


短文が幸いし、読み取る事ができた。




・・・詳しい事は後回しって事か。




郡川こおりかわの顔を見やると、

弱々しそうな、病人らしい目付きで

俺の顔をジッと見つめている。


・・・良いだろう。

どうせこの病院にいれば危険である事は明白だし、

彼女が何かの対策を知っているのならば

俺自身の生存に役立つ”道具”として利用できる。









・・・数分後、俺は郡川こおりかわを負ぶった姿勢で

病院を抜け出す事に成功した。


エレベーターで1階まで降り、

玄関に向かうまでに、

床に倒れて苦しそうにしている看護婦と医者は目に入ったが、

俺たちの事を襲ってくるヤツはいなかった。


病衣の郡川こおりかわには

散乱していた着替えの中から

適当なものを選んで着せてやった。

青と白のチェックのシャツに

黒いスキニーパンツ。

目立つほどヘンテコでもない。


着替えは俺が手伝ってやったが、

入院中にやせ細った身体には

当然ながら女性の魅力なんてものはなかった。






「さて、もう良いだろう。

 お前の知っている事を教えろ。」

病院から600mほどの公園に辿り着いた俺は、

負ぶっていた郡川こおりかわをベンチに下ろすと

メモ帳とボールペンを握らせ、

立ったまま問い詰める。


彼女は一歩も歩いていないが、

4年ぶりの身体の緊張か何かで息が上がっていた。

まだ声は出そうにないし、

メモ帳に書くための力も残されていないようだ。




・・・ふと周囲を見渡すと、

公園内では4人組の小学生グループがサッカーをしており、

道路には車も渋滞している。


・・・病院の外は至って普通の風景。

あの病院の中だけが地獄絵図だったのか?




郡川こおりかわはいつの間にか

震える手でメモ帳にペンを走らせている。


『しんじゅくで、あるじんぶつが、まってる』


・・・汚い字だが、俺にはそう読めた。


寝たきりの郡川こおりかわ

待ち合わせの約束などできるはずがない。

夢でも見ていたんだろうか?




ただ・・・”暇つぶし”として駅に行く事はできる。




これが夢ではない場合、

確実にこの日本で何かが起ころうとしているのは

確かな事だ。

そうなれば、僅かなヒントでも手に入れば儲けもの

といったところか。




「分かった。

 お前を連れて新宿駅まで連れて行ってやる。」

あくまでも、この萩間はぎま たくが助かるため。

そのためになら俺は全力を尽くす。


俺は再び郡川こおりかわを背負い、

公園からの最寄り駅へと向かう。


公園のサッカー少年たちからの視線が痛かったが、

パートナーを負ぶっていると見れば

まぁ自然とも見える。




・・・郡川こおりかわが元気だった頃、

何度かこうして負ぶってやった事がある。

が、その頃の彼女とは比べ物にならないほど

軽い痩せ細った身体を背負うだけでは、

当時の楽しい思い出など思い浮かばない。


何より、今のコイツはただの”道具”に過ぎないのだから。










#第1話 「ゾンビ病院からの脱出」 完結





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