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ジャッキング・フォース  作者: まるマル太
第2章 謎の世界との出会い
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#第8話 未確認ブルート

#第8話 「未確認ブルート」





「ぎゃあああ!!」

銃声の鳴り響く中、住民の叫び声が次々と巻き起こる。


俺の視界には、まるで噴水の如く

赤く噴き出す鮮血が広がっていく。


「早く、建物の中へ!」

対ブルート用アーマー開発者である

神崎(かんざき) 高来(こうらい)が自ら変身した白い戦士、

シュヴァイツァーは、

両手のリボルバーで次々と鳥型のモンスターを撃ち落としていく。

お陰で俺はブルートの攻撃を免れているが、

周囲の敵の処理は間に合っていない。


・・・見たところシュヴァイツァーは

ローブに身を包んだ動きにくそうな見た目の割に俊敏性は高い。

しかし、おそらく実戦経験不足なのか、

リボルバーの照準を定めるのに2秒ほどの時間を要している。


「くっ・・・さすがにこの数は厳しいか・・・」

既に10体以上の撃ち落とされたブルートは

アスファルト上で息絶えているが、

まだ20体以上が通行人を宙から襲い、食い散らかしている。




俺は元来た病院に滑り込もうと試みるが、

空からの追撃を警戒してこの場から動けない。

安全なルートの算出ができない。




と、その時だった。


俺のすぐ頭上からブルートが一直線に向かってくるのが分かった。

迷う様子など見せずに、俺に狙いを定めているのは明らかだ。


シュヴァイツァーの動きを横目で確認すると、

俺の頭上から迫る敵に、彼は気付いていない。


・・・クソ!


思わず目を瞑る。


しかし、次の瞬間、

俺を狙っていたはずの鳥類は、

一直線にアスファルトに激突したのだった。


すぐさまその仰向けに倒れている鳥を確認すると、

腹部に刃先が長方形の黒い剣らしきものが刺さっていた。




・・・異変に気付き、周囲を見回すと、

先ほどまで素早い動きでシュヴァイツァーの攻撃を避けつつ

通行人を襲撃していた鳥たちは

全てが地に落ち、死に絶えていたのだった。

同じように、黒い剣が突き刺された状態で絶命している。




「・・・危ないところでしたね。」

突如、通りの影から現れたその男に、俺は見覚えがあった。


「上戸鎖(かみとくさり) 祐樹(ゆうき)・・・?」

その名を口に出したのは

俺ではなく、シュヴァイツァーだった。


シュヴァイツァーはベルトのサイドからチップを抜き取ると、

彼の身体を覆っていたアーマーは消える様に消失し、

変身者の神崎(かんざき) 高来(こうらい)が現れた。




「俺は貴様に助けなど頼んでいないのですが?」

神崎(かんざき)は随分と不機嫌そうな口調で言い放ち、

上戸鎖(かみとくさり)を睨み付けた。


「フッ、状況を見れば明らかでしょう?

 あなたでは市民を守れませんでした。」

上戸鎖(かみとくさり)は、ブルートの死体に混ざった

市民の亡骸を一望した。


「・・・アイツらは、

 俺が開発したSAS(サス)をしっかり持ち歩かないから

 こんな痛ましい事になったんです。」

「随分と、不便なシステムですね。

 ベルトとチップがないと戦う手段もないとは。」

上戸鎖(かみとくさり)はそう言い、乾いた笑いを漏らした。


「貴様の方がどうかしていますよ・・・。

 “HR細胞”などという奇妙な細胞を体内に取り込んで、

 平気な顔で戦闘に利用している。

 大人しく、俺の開発したSAS(サス)を使えばいいものを・・・。」

「フッ。そもそも、フォーサーたちの存在が無ければ、

 この壁が作られる事も叶わなかったのでは?」

上戸鎖(かみとくさり)がそう言うと、

神崎(かんざき)の返答はなかった。




・・・上戸鎖(かみとくさり)は例の”フォーサー”なのだろう。

ゆえに、対ブルート用アーマーのSASを使う必要がなく、

それを開発者である神崎(かんざき)は

面白く思っていない。


・・・その程度の解釈で足りるはずだ。




しかし、その時だった。


余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)で挑発していた上戸鎖の表情が

一瞬で強張った。


それにつられるように、神崎(かんざき)の視線も

一点に固まる。




・・・2人が見つめるその先は、

30mほど離れた電柱の頂点だ。




見ると、そこには

明らかに人の体型、サイズをした

全身グレーの鳥のようなものが片足で止まっていた。

形容するのが難しいが、

普通の鳥よりも嘴(くちばし)部分が長く鋭くなっており、

どちらかというと翼竜に近いデザインだろうか。




「・・・未確認・・・ブルート?」

神崎(かんざき)が呟く。

すると、それを聞き取ったのか、

グレーの鳥型ブルートは嘴(くちばし)の部分を開いた。


「フッ・・・ミカクニン、か。」

なんと、ブルートが口を動かし、

日本語を喋ったのだ。


「これは、面白いですね。」

上戸鎖(かみとくさり)は眼鏡のフレームを指で押し上げた。




・・・本来、ブルートというものは

生物を食い荒らす野獣であり、

言語を用いてコミュニケーションを取るといった

知的な行動は確認されていないと聞いた。


しかし、あのグレーの鳥型ブルートは

たった今日本語を話したのだ。




「失礼ですが、あなたの名は何と仰いますか?」

上戸鎖(かみとくさり)は、

声を張り上げる様にして30mほど先のブルートに問う。


「・・・ワタシは”ドンナー・ケツァルコアトルス”。

 そう名付けられている。」

「名付けられている?」

上戸鎖(かみとくさり)は疑問調に呟く。


「誰によって”名付けられた”のですか?」

「・・・答える必要はない。」

ケツァルコアトルスと名乗るブルートは、

平坦な口調でそう言い放つ。




・・・確かに、それは疑問点ではある。


元々、ブルートは”地球外生命体”と考えられている。

偶然にも隕石に付着した状態で日本に襲来し、

大量繁殖しているとの事だが、

もしも名付ける可能性があるとすれば、

それは”司令塔”のようなものが存在していると考えられる。

そうなると、ブルートに目的意識が備わっているとも仮定できるだろう。




「どうやら、ブルートはまだまだ、

 探求し甲斐がありそうですね。」

上戸鎖(かみとくさり)はそう言って軽く深呼吸をした。


「・・・ジェネレイト!!」

そう叫ぶと同時に、

彼の身体はみるみるうちに黒い強化皮膚に覆われていく。


頭部には前方から後方へとV字を描く様に

大きめの装甲が装着され、

それに挟まれた頭部には

プラズマが走るように細かい模様が刻まれる。


顔は目部分に銀色に光るラインが通り、

それ以外のパーツは全て装甲で覆われた。


直後に、全身が隠れるように肩から漆黒のローブが生え、

そのローブにはDNA構造を模したかのように

対象色である白い模様が刻まれた。




・・・そこに出現したのは

全体的に細いシルエットを持った漆黒の怪人だった。




「私はフォーサーゼイアー態、

 トランセンデンタル・オーガナイザーです。」

彼がそう言うと、

両肩から垂れているローブが

まるで意思を持っているかのように

ウネウネと動き始めた。




「争いが好きな連中だ・・・。

 いいだろう。」

鳥型ブルートのケツァルコアトルスは

今まで閉じていた両手を両脇に精一杯広げた。

すると、翼の内側が、突如、カラフルに発光し始め、

プリズムのように様々な色彩を放ち始めた。


「・・・俺が手を貸す必要はないですか?」

神崎(かんざき)が

上戸鎖(かみとくさり)ことオーガナイザーの背後から訊く。


「フッ・・・言うまでもないですよ。」

オーガナイザーはくぐもった声でそう答えた。


「ちっ・・・”コア”は破壊しないようにお願いしますよ。

 あのブルートで作るSAS(サス)には、

 さすがの貴様でも多少は興味があるでしょう?」

神崎(かんざき)が念入りに懇願している。


・・・コア、とは何の事か分からない。

だが、SASの開発にブルートの素材が必要な事は

確かなようだ。




「生憎(あいにく)ですが、私はSASには興味がありませんので。」

オーガナイザーはからかうような笑いを漏らした。


食い散らかされた死体まみれの街路に、

神崎(かんざき)の盛大な舌打ちが響くとほぼ同時に、

未確認ブルートのケツァルコアトルスが電柱から滑空を開始した。


まるでめいっぱいに絞られた弓で放たれた矢の如く、

一直線にオーガナイザーへと向かってくる。


俺は反射的に、

傍にあった電柱の影に隠れた。









#第8話 「未確認ブルート」 完結


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