暇潰し①-???-
「この後に空きコマが控えてるって考えるとさ、なんかもう死にたくならない?」
今日は全国の学生と社会人が恐怖に戦く絶望の月曜日。それは俺達も例外ではなく、土日明けから1限の講義に出席させられている。
「至極同意だわ。何が悲しくてこんなクソつまらない講義受けた後に暇を持て余さないといけないのかしら」
「…組んだのはお前だけどな」
「次それ言ったら殺すからね、彰人」
「うちの小町さんが怖い」
などとどうでもいい会話を超小声で繰り広げつつ、配られたコメントペーパーに適当にそれっぽいことを書いていく。
講義内容など殆ど聞いちゃいないが、テーマに沿って書くだけならそこまで難しいことではない。少なくとも書かないよりはマシではある。
「っと、後10分で終わりか…。名前も書いとかんと…」
コメントペーパーは出席の役割も果たしてる場合もあり、その多くは名前の記入が必要となる。
秋津彰人という特に何の捻りもない名前と学年学部他を書いたら実質講義は終了したも同然だ。
ふと隣を見れば、小町も丁度名前他を書いているところだった。狛江小町、という本当適当な名前が記入される。
「さて、この後どうしたもんかねぇ…」
講義中にやることもなくなり、後は教授の後語りだけが教室に大きく響く。こんなん聞くやついるのかな。
「昼休み挟んで2,3空きでしょ? 考えただけで頭が痛くなってくるわ…」
「んー、1度家に帰るのも一興と思ったんだが…」
「間違いなく4限が犠牲になるわ。イカのゲームが私達を待ってるもの。しかもその時間帯は神ステよ」
「だよねぇ、タグマしてたら夜になるよねぇ…」
という訳で一時帰宅は却下。これが空きコマの恐ろしさ。空いた後に講義があるという縛りのせいで思うように行動出来ない。
つまり、必然的に近場で暇を潰すしかないのである。本当困った。
「駅前のゲーセンで艦隊の筐体と洒落込むか?」
「無理ね。待ち時間でどうせ暇なのは変わらないわ」
「…詰んでね?」
「詰みね」
なんという詰み具合。好きなことも出来ないこんな世の中は絶対に間違ってると思います。
昼飯の時間を抜いたとしても3時間強あるこの暇な時間。さて、どうやって潰したものか…。
「…仕方ないわ。ここは『アレ』やりましょう」
「え、『アレ』やんの? もうやり尽くした感が…」
「まだやってないジャンルがきっとあるはずよ。これなら1時間は潰せる…」
道具もほぼ無い。人数もいない。いるのは頭が弱めな男女二人。ならやれることはやり尽くされた『アレ』しかないだろう。
「…やるしか、ないか」
「えぇ。場所はラウンジでいいわね?」
「まぁ、どこでも出来るけどそこが良いわな」
そんな会話をしたところで、講義終了のチャイムが鳴り響く。何で校歌のインストなのかは不明だ。
書いたコメントペーパーを提出したら、ここからは『空きコマ』の時間だ。
「「山手線ゲームをしよう」」
特に言う必要などないが、二人で顔を見合わせて同時にそう提案したのであった。