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あきこまっ!  作者: おじさん
導入
1/3

あきこまの憂鬱

自分の目の前に突如現れたものは、それを書いた人間に対して正直正気を疑いたい程のものだった。


手渡されたのは1枚の紙切れ。何やら等間隔に区切られていて、その中にはいくつか文字が書かれている。


うん…確かにびっしり埋まったものよりは、当然多少は余白があったりする方がいいのは間違いないよ。言いたいことは分かる。


休みの時間は大事だし、全ての時間を活動に当てるのは心身ともに疲弊する。その中には嫌なものや苦痛を伴うものもあるのだから、間に休みが無ければ耐えられない人もいるだろうよ…。


さて、それを踏まえた上で先程手渡された紙を見てみよう。


「…小町こまちさん?」


「…何よ」


「あの、これは…?」


「…見て分からない? 今年度の履修登録よ。私に任せるって言ったじゃない」


「うん、それは分かるよ? 分かるんだけど…」


確かに渡されたのは、今年の講義の予定を細かに記した紙。自分で受けたい講義をある程度自由に決められるのは大学生ならよく分かるだろう。


平日に全休を作るのも良し。半休を作って余裕を持つのも良し、限界まで詰め込むのも良し…言ってしまえば個人の匙加減で今後のスケジュールを決められるのだ。


それを俺はあろうことか目の前の女に一任してしまった。特に興味のある講義があるわけでもなしに、尚且つ二人で同じものを取れば効率が良いと考えて、だ。


二人の予定が空いてて、そして自分達に都合の良い講義。無駄なものを取っては意味が無いし、何より単位が取れなければ意味が無い…。


それは分かる!! じゃあ見てみようかもう一度!! 俺の見間違いかもしれないからね!!


月曜 講義 空き 空き 講義 空き

火曜 講義 講義 空き 空き 講義

水曜 空き 講義 空き 講義 空き

木曜 講義 空き 講義 空き 講義

金曜 講義 空き 空き 空き 講義


…ゲシュタルト崩壊が起きそうだった。


「…文句は受け付けないわ。これでも目一杯調整したのよ…」


「…これでか!? いくらなんでも『空きコマ』多過ぎだろッ!!」


そう、確かに休息は必要だ。連続で講義受けるのは骨が折れるからね。


だからといって、『することがない暇な時間』っていうがたくさんあると当然また苦痛が生じるのであって…


「うぅ…仕方ないじゃない! アンタと合わせるってなったらこれが最善だったのよ!! これ以上の改善は無理!」


「おぉう…マジかよ…。去年学習したじゃねぇか…空きコマは暇過ぎて死ぬって…」


クソ文系大学生の同志なら理解していただけると思う。ついでに大学から家が遠いと尚理解が早いはずだ。


1時間半、という何をするにも微妙な時間。家に帰ろうにも時間が足らず、かといって校外で暇を潰そうとすればやることが限られ、また戻ってくるのが非常に怠い。


楽しすぎることをすれば次の講義に出るのが億劫になり、つまらなければ時間が経つのが遅すぎてなんか死にたくなる。


「分かってるわよそんなこと! 私だってこれは苦渋の決断だったわ…」


「…だよな。好き好んでこんな狂った時間割り組む奴がいたら頭の中覗いてみたい」


「でも、彰人あきひとと組まないと詰むのは事実…友達いないし」…


「俺も小町と組まないと詰むわ…友達いないし」


残された選択肢は2つ。


二人で組むのを諦めて、まっとうな時間割りを組み見直すか。


このままアホみたいな時間割りを受け入れるか。


まぁ、実質選択肢なんか存在しないんだけど…


「…しゃーない。組んでもらった手前これ以上文句も言えん。これでいこう」


「アンタ本気で言ってるの!? こんな馬鹿みたいな時間割りなのに!!」


「いや、組んだのお前だからね!? 何で俺が頭おかしいみたいな言われ方されないといけないの!?」


「まぁ、そうね。これでいくしかないのは私が一番分かってるし」


「というわけだから、取り急ぎこれから考えなきゃいけないことは分かるな?」


「今夜のご飯? 私もう彰人の家にお邪魔する予定だったんだけど」


「あぁ、いいよ…って違うわ!! ここでボケるな話が進まん! 『空きコマの有効活用』の方法だよ!」


勉強しろ、という意見が聞こえてきそうだがそれはガン無視せざを得ない。そんな意識の高さは生憎俺達二人には存在していない。


如何にしてその絶妙に暇な時間を潰すのか…それを考えなければもれなく留年&退学という現実が待っている。


大袈裟だと思うじゃん? いや、本当空きコマ甘く見たら死ぬからね。本当段々講義出なくなるから。


暇潰し出来て、尚且つ生産性のあるもの。まぁ、最悪後者は無くていい。暇潰し出来れば御の字だ。


「まぁ、今日は取り敢えず帰るか。夕飯の買い物しないといけないし」


「そうね。ハンバーグが食べたいわ」


小町と二人で暇を潰す。昔からアホほどやってきたことだから何とかなるんじゃないかな、と思います。


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