生徒会に入った本当の理由は秘密
「またしても、お恥ずかしい所をお見せしてしまい申し訳ありませんでした」
高ノ宮は、一度怒ると制御できないらしく二度目にして二人に謝罪した。
「いえいえ」「大丈夫ですよ」と小早川と優太は言う。
気を遣うのもしんどいと思いつつもそうでも言わないと、この人たぶん余計
落ち込むだろうなと優太は内心思っていた。
「それで、二人は生徒会に入るの?」と高ノ宮の慰めを大宮と宮河に任せて
東雲が二人に問う。
小早川はともかく、優太は成績は普通なので生徒会に入っても…と考えて
いたのだが、それを聞いた小早川が先に返事を出す。
「私、佐野君が入るのなら生徒会・アイドル部に入部したいと思います」と
答えたのだ。
「えっ!?」
それを隣で聞いていた優太は驚いていた。
なぜなら「佐野君が入るなら」と言ったから余計にだ。
東雲は小早川の返事に「ほぉ~」と言ってから優太に目を向けて
「それで、佐野君の返事は?」と問われた。
優太は、どっ、どうしよう…と困ってしまう。
場違いだと思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのか
興味本位でアイドル部なんて探すんじゃなかった。とばかりに心の底から
つくづく自分が情けないと思ってしまう。
「佐野君、生徒会に入れば忙しくなるかもしれませんが、慣れれば楽しい
ものですよ?」と復活を遂げた高ノ宮が声をかける。
「女子ばかりではありますけど、会長が言った通り慣れれば楽しいです。
最初は緊張するかもしれませんが、誰にでもあることです」と宮河が言う。
そして、おどおどしている大宮はというと…
「えっと…もし良かったら。一緒にお話したい、ですっ」
よく分からないけれど、どうやら話したいらしくそういうと恥ずかしさの
あまり高ノ宮の後ろに隠れてしまった。
「佐野君、入りましょう!」と小早川が優太に迫ってくる。
「えっ…でも、俺頭悪いし」
「大丈夫。君の仕事は雑用だから」と東雲が優太に言う。
「こらっ、こんなシーンの時にそんなこと言わないの!」と高ノ宮がまた
怒鳴る。
「女子だけだと、力仕事が重労働でね。先生に頼ることも多いから
佐野君がいてくれたらたぶん助かるんだけど」
それでも東雲は優太を、力仕事の雑用に必要だと言いつつも勧誘するので
あった。
こんなに必要とされてしまえば「お断りします」ともいえず…
「わっ、わかりました。俺…生徒会に入ります」と返事をした。
生徒会 会長 高ノ宮都
生徒会副会長 大宮桜花
生徒会 書記 東雲咲樹
生徒会 会計 宮河真琴
生徒会 補佐 小早川ありす
生徒会 補佐 佐野優太
数日後、生徒会の新メンバーとして正式発表された。
それを見た友人の中野は驚いていた。
「お前、生徒会に入ったの!?なんで?!いったい何があったんだ!??」
「いや…その、いろいろ事情があって。とりあえず力仕事の雑用を頼まれて」
「なんじゃそりゃ~でも良いなぁ。あの小早川さんと一緒に働けるんだろ?
なんて羨ましいんだ」
「そうかな?」
「小早川さん紹介してくれ」
「えっ、あぁ…うん。良いけど」
すると、クラスの何人かが優太の所へやってきて「俺も紹介して!」と寄っ
てきたのだ。あまりにもしつこかったために中野が止めに入る。
「ダメ!俺が紹介してもらう約束したんだからダメ!」
「中野ずるいぞ!」
と、喧嘩を始めてしまったため
優太はこっそり抜け出してその場から逃げた。
「…はぁ。参ったな」
生徒会に入った本当の理由については、友人の中野にも言えない
秘密となってしまいましたとさ。
END