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うちの学校のアイドル部  作者: さくら
2/6

小早川ありす


 優太は後ろにいた女子生徒に声をかけられて一瞬びくっとなった。

 振り向いてよく見てみると、どこかで見たような人物で優太はじーっと

 女子生徒を見ていた。


 「そんなにじっと見つめられると、恥ずかしいです」

 「っ!?あぁ…ごめんなさい。どこかで見たことあるなって考えてたら

 つい!」と慌てて謝罪する優太に、女子生徒はくすくすと笑いをこらえて

 いた。


 「いえいえ。恐らくそれは、入学式の時ではないでしょうかね?」

 「えっ?」

 「私、新入生代表を務めましたので」

 

 優太はそれを聞いて「あぁ!?」と納得した。

 彼女は、小早川ありす(こばやかわ)。主席で合格した彼女は、優太含める

 新入生達の代表として注目を集めた美少女である。

 

 黒髪ロングヘアーに大きな目という可愛らしい容姿で、同級生だけでなく

 上級生男子にも人気である有名人なのだが、優太はそういうことに無関心の

 ためにすぐには気が付かなかったのである。


 「思い出していただけたようですね?」

 「本当にごめんなさい。人の顔と名前とかすぐに覚えられなくて…」

 「いえいえ、大丈夫ですよ?そんなに気を遣わないでください」とにこにこ

 と可愛らしい笑顔でフォローされる優太。

 

 しかし彼には、他にもダメな部分がある。

 それは…人見知りだ。沈黙に入れば、何を話せばいいか分からなくなって

 しまい、気まずい雰囲気になってしまうというのを何度も経験したことが

 あるからだ。自分から話の話題を振っても、相手が乗ってくれないことも

 しばしばあり、なかなか続かない。

 

 優太は内心、どうしよう。何か話さないと…と焦っていると、小早川の方から

 話を振ってくれた。


 「ところで、先程から部活動ポスターを見ていたみたいですけど」

 「えっ?あぁ、はい。実は昨日、友達から聞いた話で本当にあるかどうか

 確かめたくて。アイドル部って言うらしいんですけど…知ってますか?」

 「っ!?」

 

 小早川の目が鋭くなった。

 それを見て優太は「ひぃっ!?」と叫び、彼女から距離を取った。

 するとそれに気づいた小早川ははっとして、目を元の可愛らしく戻した。


 「ごめんなさい。驚かせてしまって」

 「いっ、いえ。大丈夫です」

 

 優太の「大丈夫」というのは、半分嘘である。

 男子なのだが、気が弱い部分もあるので基本的には受け身で、それが例え

 女子でも変わりはない。特に気が強い女子なら尚更ダメだ。


 「アイドル部に興味がおありなんですか?」

 「いっ、いや…そういう部活があるんだって聞いただけで」

 優太はおろおろしていた。先程の鋭い目をまだ警戒しており、小早川とは

 まだ距離を取ったままである。

 

 「よろしかったら、見学をご一緒しませんか?」

 「えっ?」

 「私、アイドル部に興味がありまして。今日の放課後、部活動見学をしよう

 と思っていましたので。よろしかったら、ぜひ」と小早川は優太にさりげなく

 お誘いをかけた。


 それを聞いた優太はどうしようかと悩んでいると、

 「このチャンスを逃せば、きっと後悔しますよ?それでも…よろしいのです

 か?」と小早川はまるで彼に挑発するかのように可愛らしい目から鋭い目に

 変えた。

 

 優太は小早川の目の圧力に負けて、「はっ…はい」とか細い声で返事を

 したのでありました。

 

 「では、今日の放課後。こちらでお会いしましょう。えっと…まだお名前を

 聞いてませんでしたね?」と今更ながらに名前を聞いてくる小早川。


 「あぁ…そうでしたね。俺は、一年三組の佐野優太です」

 「佐野君ですね。私は、一年一組の小早川ありすです。以後お見知りおきを」

 「はっ、はい。今度はちゃんと覚えます!」

 

 それから優太と小早川はそれぞれのクラスに戻るため一時解散した。

 

 彼と別れた後、小早川は廊下を歩きながら誰にも聞かれないような小さな

 声で…「いいの見つけた」と笑みを浮かべて自分のクラスへと戻っていった

 のでありましたとさ。

 


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