アイドル部
20XX年現在において、男性・女性アイドルをCMでよく見かけるようになった。
最近よく見るのは、平島麻里というアイドルでCMだけでなく映画にも出演するほどの
売れっ子である。
芸能界ではアイドルだけでなく、タレント・お笑い芸人・声優とさまざまな人達が活躍しており
普通の一般人にはとても遠い雲の上のまた上。
「芸能人って大変だよな~」
自分の部屋で、漫画雑誌を読みながら独り言をつぶやくのは
この春から地元の高校に通う、佐野優太。そんな彼の独り言を遊びに来ていた友人、
中野明がすかさず反応する。
「どうしたんだ?急に」
「いや。なんとなく?」
優太は思っていたことをつぶやいただけで、そこまで深い意味で言ったわけではなかった。
けれど、明に問われたので「えっ?」となってしまい、ぎこちない回答をしてしまったのだ。
そんな優太に明は「なんだ、それww」と笑ったため、優太も笑ってごまかした。
「あっ、芸能人といえばさ~」
明はふと思い出したかのように笑うのをぱっとやめて、優太に話す。
「うちの学校ってさ、アイドル部ってあるらしいぜ?」
「アイドル部?なにそれ?」
優太は高校に入ってからは帰宅部で、部活動の見学や掲示板さえもろくに見ることさえなかったために
アイドル部という部活があることを知らなかったのだ。
「やっぱり知らなかったか~」
「それって、将来アイドルになりたいって人が入る部活なの?」
気になったので明に質問する優太。
「それがさぁ~俺もよく分からないんだよね」と明はしょんぼりした顔で言う。
優太はてっきり知っているのかと思っていたので、なんだかこっちまで落ち込んでしまう。
「知ってるのは、紹介でないと入れない。勧誘制っていうことぐらいかな?」
「勧誘って…そんなの他の部活でもあるんじゃない?」
「そうだけどさ。とにかく謎が多い?というかさ。気になるんだけどね~」
次の日の朝、学校へ行って掲示板の方へと足を運んだ。
部活動ポスターが張られてあるのは、一年生が通り良く目にする場所。
下駄箱近くの掲示板、教室までの階段(柱や壁)等に張られている。
気にしていなかったけれど、明に言われてからなんだか気になってしまった優太はまず下駄箱近くの
掲示板に張られてあるポスターを確認する。
「バスケ部・サッカー部・野球部・卓球部・バレー部・剣道部・バトミントン部・陸上部・テニス部…」
掲示板にはどうやら運動部のポスターのみらしい。
続いて、階段に張られているポスターを確認する。
「吹奏楽部・茶道部・家庭科部・演劇部・美術部・園芸部・華道部・放送部…ないな」
探してもやっぱりなかった。
「本当にアイドル部なんてあるのかな?」とまたしても独り言をつぶやいたその時だった。
「何かお困りですか?」