いつか。きっと。
* 5 *
「深夜」
あの食事から数日後。花子が保健室にやってきた。
普段は自分を校長室に呼び出すのに、と深夜は少し驚いた。
「良かった。あの日から何か避けられてる気がして不安になってたんですよ」
「そりゃそうだろ、あんなことされた次の日に普通に話しかけられるか?」
「…確かに。いやぁ、すいませんでした。俺がひとしきり泣いただけになっちゃって」
「いや、私こそ……すまない」
立ち尽くし俯く花子に、深夜は微笑んで立ち上がる。そっと手を取ると、花子が顔を上げた。
「俺が一方的に言っただけなんだから気にするな。笑ってくれよ。好きな女にそんな顔されたくない」
「深夜…私は…」
「だから気にするなって」
「何日も考えたんだ!でも…」
「いいよ、それ以上は」
「深夜」
「そう思って、考えてくれたってだけで俺は十分嬉しい。少なくとも、嫌われてはいないってことだしな」
「俺は待ってる。ずっと。だからせめて、これからも傍にいさせてくれ」
「……ありがとう」
「どういたしまして。そうだな…まずは俺が敬語やめるとこから始めるか?」
「…その辺りが一番妥当かもな」
花子は少し元気を取り戻したようにかすかに笑い、保健室を出ていった。扉が閉まると、深夜は力無く椅子に腰掛けた。
「………あー…くそ……っ…」
身体を折り目を閉じると、奥から熱いものが込み上げてきた。
それはやがて嗚咽となり、閉じた瞼から溢れ出した。
(俺は、まだ…あの人の支えにはなれねぇのか……)
(……待とう。あの人が本当に救われるまで。いや…俺が救ってみせる。何があっても。)
* * *
いつか。きっと。
一緒に笑える日が来るように。
明日も、ふたりは笑う。




