~嫉妬~
いつもの朝。
いつもと違う2人の手首で踊るように揺れているお揃いのブレスレット。
手を繋ぎ学校に行く道。
そして学校に着く手前のこと。
そこには沢山の目が2人を貫く様に見ていました。
その中でも何人かの女の子が2人を睨んでいるように見えました。
『怖い。』
ましろの心に1つの言葉が浮かぶと、咄嗟に優里と繋いでいる手に力が入りました。
「ましろ?」
優里が歩くのを辞めた時。
後ろから`待ってました´と言わんばかりに3人の女の子が2人を目指して早足で歩いて来ました。
「おはよう!立石さん!ねぇ?今日お昼一緒に食べない?」
クラスの人と思われる女の子達は表面上ニコニコしながらましろに話し掛けて来ました。
ましろはビクッと体を強張らせ優里の手を握ったまま背中に隠れ必死に首を横に降りました。
「えー?挨拶も返してくれないの?ってか良いじゃん?いつも橘君とばかりだから私達とも仲良くしよーよ?」
その3人の中でリーダー的な存在なのか1人の女の子は諦めずに食い付いてきました。
それを見ていた優里は少し笑顔を作り
「………ごめんね?また今度にしてもらえるかな?」
「………橘君がそう言うならぁ…じゃあ次はよろしくね?立石さん?」
と残念そうな声を出して3人は先に教室に向かいました。
ましろは3人が行くのを見て一息つくと優里とそのまま一瞬目があって
「モテ期?」
と聞かれました。
ましろはそれが凄く嫌で首をフリ、それを見た優里は少し笑って、2人は教室に向かうのでした。
――――キーンコーンカーンコーン。
「マシュマロちゃーんお昼一緒に食べよー?」
昼休み。
ましろがなんとか黒板を書き写して机の上でへばっていると、ひなたが楽しそうに女の子の席の横で満面の笑みを浮かべていました。
「……………。」
実を言うと初日からひなたの掃除を手伝い始めてから、ひなたがお昼に自分のお弁当を携えて、ましろの所に来るようになったのでした。
そしてまひるも何故か同様に来てましろの机にお弁当を置きました。
「橘君もほらー机ー?」
相変わらずのんびりとした口調が少しこの時ばかりは弾んでいました。
「オレも椅子持ってくるね!」
まひるも楽しそうにもう一度自分の机に戻りました。
優里はひなたとまひるに促されるまま机を反転させると、ひなたとまひるは、自分の椅子を持ってきて座りました。
4人はお弁当を広げると
「マシュマロちゃんのお弁当は本当に小さいよねー?私なんてこんなに大きくて2段なのにー?」
ご飯をつつきながらのんびりとひなたが話し掛けました。
「………うん。」
「ましろは、量は食べないからね」
優里がフォローすると
「そぅかぁーでもお菓子は別腹だよねー?」
「それはひなたと少数の女子だけでしょ」
少し笑うようにしたひなたにすかさずまひるは、ツッコミを入れました。
「えー?まひるひどーい!そんなこと…あるかも!」
それを聞いたまひるは大袈裟にため息を付きました。
そしてそれからも、2人は賑やかにお弁当を食べながら話し続けたのでした。
空が赤く染まる頃。
放課後に優里が職員室に呼ばれました。
ましろは掃除も終わり、ひなたとも別れ、机に座って待って自分が帰る時を待っていました。
教室に1人。
落ち着く時間。
するとその時間を壊すように閉めていた扉がガラガラと音をたてて開きました。
朝とは違う今度は4人組が女の子達がそこにいました。
女の子達はこの瞬間を待っていましたと言わんばかりにズンズンと近づいて来ました。
「ねぇ?立石さん。ちょっと一緒に来てくれない?」
リーダー的で真ん中に堂々と立っていた女の子は不適な笑みを浮かべながらましろに問いました。
「………………。」
女の子は無言で首を振りました。
「………あーそう?そういう態度取るんだ?」
リーダー的な女の子がニッと笑うと、後ろに立っていた2人の女の子が出てきて椅子に座っていたましろの両腕をおもむろに掴み無理矢理立ち上がらせました。
「じゃあ強制連行ねー?」
という言葉を皮切りにそのまま引きずられるようにして、強制的に歩かされ何処に行くかも分からずに、4人とその1人は教室を後にしたのでした。