~素直な気持ち~
慌ただしい冬休みも終わりを告げ、1年生最後の始業式を迎え。
休み明けテストをこなしたましろは、机の上でいつも通り白く灰のようになっていました。
「マシュマロちゃーん!出来たー?」
昼休み。
いつも通りに笑うひなたは、授業が終わってすぐにましろの机に向かってきた。
「人に聞く前に自分は出来たの?」
まひるは、ひなたの言葉に呆れたように鋭くツッコミを入れると。
「ひっどーい!私は勿論いつも通りですけどー?」
「……あぁ出来なかったのね…ってかそれって胸を張って言えるの?」
優里は、コントみたいなやり取りを聞き流しながら自分とましろのお弁当を机の上に広げた。
そして、ましろの体を軽く揺さぶる。
「ましろ?起きて?お昼だよ?」
まひるがため息をつきながら持ってきた椅子に座りため息をついた。
「橘君は相変わらずだね?」
「……?どういう意味?マシュマロちゃんが心配ってこと?」
ひなたは疑問そうに首をかしげながら、同じように椅子に腰掛けた。
「……あー…ひなたは、深く考えなくて良いから…それよりも2年になったら選択授業とかあるらしいけど何取るか決めた?」
「………?ちょっと待ってー?その前にクラス替えの話じゃなーい?」
既にお弁当を開いて、卵焼きを口に放り込んで話すひなたがまひるを箸で指すと
「………この学校にはクラス替えが無いんだよ?その代わり選択授業が多くてその度に教室を移動していくんだ」
ましろをなんとか起こした優里が、指された箸を嫌がりながら下ろているまひるの代わりに答えた。
「つーか!箸指すなって!……つまりは早くもそこで取る授業によって進む進路も変わってくるってこと!ってかひなた?入学パンフ見てないの?」
ひなたが箸をかじりながら、首をかしげる。
すると優里が困ったような笑顔で
「大きく分けて文系と理系に別れるんだよ?必修科目は、このままのクラスだけど」
その説明にひなたが頷いていると
「……お腹空いてない…」
ましろがじっとお弁当を見つめている。
ふうっと息をついた優里がましろのお弁当からひょいっと唐揚げを箸で持って口まで持っていった。
「だーめ。ちょっとで良いから食べて?」
むぅっと膨れるましろをじっと見ていると、諦めたのか口を大きく開けて、パクっと差し出された唐揚げを食べた。
そのやり取りを見ていた2人は
「……えっ!ちょっと橘君だけずるい!マシュマロちゃんオレもやって良い?」
「マシュマロちゃんかわいいー!!私も!私も!まひるの次私ね!」
「………あのね?2人供…ましろは子供じゃないんだから…?」
2人の様子に少し呆れながら言うと
「えーっ?橘君は良いのにオレ達は駄目なの?ズルくない?」
「そうだよー!ずるーい!」
その2人の言葉に優里はにっこりと笑った。
「……ズルくないよ?オレはいいの」
その顔は笑顔の筈なのに、何故か2人は反論することも出来ず。
逆に背筋が凍った気がした。
「……えーえっと…話戻そうか…橘君は何系に進むの?」
まひるが控え目に、そして強引に話をもとに戻すと
「うーん…理系かな?」
「まぁ…橘君は頭良いからね…因みにオレも理系かな?ひなたは?」
ひなたはご飯に手を止めて箸をかじる。
「私は文系かなぁ?理系とかきっと難しそうだしぃ?」
その言葉にまひるはため息をついた。
「そうだね…ひなたの頭じゃ理系に入ったらついていけなくて即留年だね。マシュマロちゃんは?」
優里の箸からご飯を食べてる口を止まらせる事なく、どうでもいいという風にましろはモグモグしていた。
「あっと…ましろもオレと同じ理系に……」
優里がその言葉を言い終わる前にまひるが驚く
「!?橘君正気!?言っちゃ悪いけどマシュマロちゃんの学力は……!!」
「大丈夫だよ……?オレが付きっきりで分かんないとこ教えるし……」
あまりのまひるの驚きように優里が控え目に笑うと、まひるは大きく息を吐く
「橘君……。忘れてない?理系に行く為にはある程度の頭の良さが必要だから、テストに合格しないと選択権を取れないって」
その言葉に思わず目をそらす。
優里は忘れていたわけでは無かった。
勿論それに受けて一緒の授業を受けるつもりだった。
「!!それならマシュマロちゃん一緒の文系だね!」
ひなたがパンっと手を叩いて微笑むと
「まだ落ちるって決まってないから!」
「………橘君…本気なの?」
声を荒げる優里に恐る恐るまひるが聞く。
「………もぐもぐもぐ。」
ましろは相変わらず優里に口に入れて貰ったおかずを、他人事のように頬張っていた。
変わる事のない優里の真剣な目にまひるは
「………でも…そうだよね…奇跡が起こるかもしれないし…マシュマロちゃん…オレ…応援するよ!!」
どさくさに紛れてましろの両手を強く握る。
「…………ごくん。…なに…?」
「えっとね?オレはずっとマシュマロちゃんの味方だって話してたんだ」
「……味方………?」
ましろが首を傾げると。
「そう!マシュマロちゃんとずっと一緒ってこと!………ってあれっ?マシュマロちゃんあからさまに嫌な顔しないでー?」
優里がその2人の状況に堪えられなくなって、繋がれた手をさりげなく取る。
「………ましろで遊ばない。」
ふうっと息をついて、ましろのお弁当箱を仕舞った。
「あれ?橘君。マシュマロちゃん全部食べてないけどいーのー?」
「うん。一気に無理矢理食べさせても可哀想だから、残りは夜ご飯。」
そして自分のお弁当箱を取り出して早々と口に運び始めた。
するとその後すぐに、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
それを聞いた双子も急いで残りのお弁当を口の中へと詰め込んだのだった。
―――――――帰り道。
歩く度に白い息が広がる。
空を見上げるとすぐそこに夜は来ているようで。暗闇が迫っていた。
「……まだ日が短いね?」
優里は私に問いかける。
何も答えなくても彼は私と会話しているように話続けてくれていた。
冬が終わりそうだけどまだまだ、外は寒くって。
優里と握っている手が妙にあたたかく感じる。
「……あのさ今日のお昼で話したことなんだけど……無理して勉強…しなくてもいいから…」
私はゆっくりとお昼の事を思い出す。
確か優里とこれから受ける試験の話かと理解した。
「…出来れば確かにましろと授業も一緒に受けたいけど……オレの我が儘でましろに嫌なことさせたくないし……」
「………優里は…私の味方…?」
寂しそうに話している優里を見て、何となくお昼に言っていた双子の言葉を思い出す。
「……優里は…私の味方なの……?」
彼を見ると驚いた表情から、すぐに柔らかい表情になった。
「……うん。オレはましろの味方だよ?」
その言葉と一緒にぎゅうっと手を強く握られる。
その言葉を聞くとなんだか。
寒いはずなのに心がほんわりとあたたかくなる気がして。
「……勉強は…いや。。」
私の率直な言葉に優里はにっこりと笑う。
「うん。そうだよね?ごめんね?」
その後の帰り道。
何故か優里は楽しそうに。
私に話しかけ続けたのだった。




