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マシュマロ   作者: 里兎
21/23

~クリスマス~

―――家に着くと。


早速家の飾りつけを始める。

上を見上げると、キラキラと細かく光を反射する赤、黄、緑。

小さな木には丸、三角、星。

殺風景だった部屋が明るくきらびやかになっていく。


「うん!良い感じ!じゃあご飯の支度してくるね?ましろ。お腹すいてる?」


優里の問い掛けに首を振る。

相変わらずましろのお腹は空く事はなかった。


「……だよね。じゃあすぐケーキ持って来るから待ってて!」

そう言うと、ましろのいる部屋の電気を消してキッチンへと向かっていった。


暗い部屋の中。

気が付けば既に夜になっていて。

小さな木に付けた電飾がチカチカとゆっくり光っている。

暗いのに。

何故だか此処は暗くない。

時間があっという間に過ぎていくのは初めての感覚だった。

心に少しづつ沸き上がってくるこの感情は何なのか。

あの人と過ごしているとおかしくなっていく気がする。


「ましろ?」

優しい声がましろを呼ぶ。

振り返ってみるとそこにはかわいく装飾された、ケーキという丸いものがあり、上で小さな蝋燭がゆらゆらと火を灯していた。

それをゆうりがそっとテーブルの上に置き


「自分でも初めてやってみたけど案外綺麗なものだね」


ましろに向けて笑ったその顔はいつもの作り上げられた偽物でなく本物のそれだった。


「………。」


何故だか分からないが、ましろの体が熱くなる。何も言えずにそのまま頷くと。


「……クリスマス…君と一緒にやれて良かった。」


ふいにそう言った、暗がりの中少しオレンジ色に灯っている優しい顔のままの優里の横顔から何故だか目が離せなくて心がもやもやした気持ちになる。


「……えっとじゃあましろが消して?」


「………綺麗なのに…?」


それを聞くと優里は驚いた表情をして、すぐにそれが見えないようにましろの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。


「……大丈夫。またきっと来年もその次の年も見られるから。」


その言葉を聞いて、ましろの心の中で疑問が溢れだす。


そこには私がいるの?

私は死んでいるのでないの?

未来の話なんて出来ない。

私はしちゃいけない。

死んでないといけない存在。

此処で殺されることが出来ないのなら。

違う所に行くだけ。

違う人に殺してもらうだけ。

なのに。

どうして。

当たり前のような。

未来の事を話すことが出来るのだろう。

それはとても不思議で。

またそうありたいと小さく心にあたたかさを残す。

だけど私はそれを必要ないと。

必死に心の中でもみ消した。


「……この先なんて…ない。」


そのままフーッと息を吹いて消した小さな光は、意図も容易く消すことができて。

部屋に暗がりの空間をもたらした。


「……ましろは分かってない…オレの気持ち……全然分かってない…」


真っ暗の中。

小さな声で優里が呟く。

でもそれはあまりに小さくて。

ましろの耳には届かない。

すると、優里が立ち上がり部屋の電気をパチンと付ける。

暗い空間に目が慣れていたのかましろの目は少しチカチカした。


「………ケーキ食べようか?フォークあるからそのまま突っついて食べよう?」


寂しい気持ちが溢れそうな優里は、笑顔で気付かないフリをして小さなフォークで早速ケーキを突っついた。

ましろもそれに習い、丸いケーキの端を小さくフォークで取る。

それを口に入れるとやわらかな甘さが口いっぱいに広がった。


「……おいしい…」


ましろの気持ちがそのまま口に出る。


「!?本当に!?良かった!あっ!コレも甘くておいしいよ?」


その言葉を聞いて嬉しくなった優里は自分の持ってるフォークで、ケーキに装飾されているスライスされた苺を掬ってましろの口元に持っていく。


「…………」


「……………?」


「…………」


「………ましろ?」


何となく。

少し気恥ずかしいような。

そんな気がした。

そんなこと誰にもされたこと無いから。

でも。

普通の人は普通にしていることなのかな。

そう自分に言い聞かせ。

口を開けて優里の持ってるフォークにかぶりついた。


「……甘くて、酸っぱい」


単純な感想。

お腹は空いていない筈なのに、何となくもう1つ食べたいと思ってしまう。

だから。

ましろはもう一度口を開ける。


「!!もう1つ食べるの?~~~かわいあなぁ………あっと!違う!はいどうぞ?」


何やら頬を赤く染めてにっこり笑う優里はもう1つケーキから苺を掬って、ましろにさしだす。

そんな優里を気にも止めずに、フォークに乗っている苺を食べた。

それはやっぱり、とても優しい味で心に染み入る様だった。


「……もういらない」


満足したのか、ましろはフォークを置いて優里を見る。

前は顔を見る事すら出来なかったましろは、優里の顔ならずっと見ることが出来るようになっていた。


「……えっと…そう見られると…恥ずかしいっていうか…食べづらいんだけど…」


フォークに乗せたケーキを頬張りながら、ましろから目をそらした。


「……そう…。」


ましろはその場に立ち上がり、カーテンを少し開けて窓越しに夜空を見上げる。

すると上からはらはらと白くふんわりとしたものが夜空に舞っていた。

ケーキの白いのと同じ。

コレも食べたら甘いのか。

そう思いながら、見上げていると


「……寒いと思ったら…雪…だね?」


気が付くと後ろに優里が一緒に夜空を見上げていた。


「……食べたの?」


「……?ケーキ?ならオレも、もうお腹いっぱいだよ」


笑って優里はカーテンをめくっているましろの手に自分の手を重ねた。


「ましろの手はいつも冷たいね…」


ましろは自分でもじんわりと自分の手が、あたたかくなっていく事が分かった。


「……あなたの手は…いつもあたたかい…私の手は…あたたかくなることは…きっと無い…」


哀しそうにましろが言う。

それに耐えられなくて。

優里はぎゅうっと手を強く握った。


「……大丈夫だよ…ましろが冷たくなったらこうしてオレが温めるから。絶対に、温めるから……大丈夫。」


その言葉は、ましろに言っている筈なのに優里自身に言い聞かせているようだった。

ましろはそのまま雪の降る夜空を見上げる。

儚く感じる白い雪は、隣に優里がいても尚ましろの中に積もっていくような。

ましろには。

そんな感じがした。

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