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マシュマロ   作者: 里兎
14/23

~補講と冬休み~

数日後


「宿題が無いからといって羽目を外し過ぎないように。以上!」

外が寒くて暖房を付けているに、先生の額には珠のような汗が滲み出てその度にハンカチで拭いました。

と同時に鐘の音。

それと一緒に皆が散り散りに席を立ち教室を出ていきました。

「――あーっと!立石!お前は補講初日だから帰らないように!」

それだけを言うと早足に教室を後にしました。

「教室迄送っていくから」

前の席で優しく笑い優里はましろの手を持ち上げ立ち上がりました。

「わぁー!待って待ってー!」

ドタドタと2人に近付く落ち着きの無い女の子。

「ひなた!折角皆で最後に大掃除したんだから席動かさない様に歩かないと!」

その横で同じ顔をした厳しい目をしている男の子。

「あっ!ごめーん!ねぇねぇ2人供ー?今日で今年最後になるよねー?」

「うん?」

その言葉に優里が首を傾げると

「良いお年を!」

にんまりと笑いながらまひるが2人に言いました。

「あっ!ずっるーい!私が先に言おうと思ったのにー!」

「こういうのは早い者勝ち!」

いたずらっ子っぽく笑うまひろにひなたは両方の頬を膨らませました。

「あっ!そうだ!橘君かマシュマロちゃんどっちか携帯持ってないの?」

ましろは携帯という物の意味が分からず首を傾げました。

「……えーっとごめんね?必要性を感じた事が無いから持ってないんだ?」

少し困った風に優里は笑いました。

「…そうかぁ…でも!家電は流石にあるよね?」

そういうとひなたはおもむろに鞄からノートを出してビリビリと2枚に破き何かを書き始めました。

その横で見ていたまひるもああそういうことなら、と笑って空いている隙間に数字を書きました。

「これ!私達の携帯番号!休みの日いつでも掛けてきてね!」

ひなたが満足そうにそして半ば無理矢理に優里とましろの手の中に押し込みました。

「………?」

ましろは手に持たされた紙を訳も分からずにまじまじと見つめ。

「……ありがとう?」

優里は2人が何故こんなこと迄するのか分からずも、一応笑顔だけは作りました。

「うん!じゃあまたね!良いお年を!」

「マシュマロちゃん!オレは何時でも電話待ってるからねー!」

2人は賑やかに手を振り教室を後にしました。

2人がいなくなった教室はまだ生徒が残っている筈なのに静かに感じました。

「本当。嵐の様な2人だよね?」

苦くましろに笑いかけると

「…………うるさい…だけ。」

ましろは下を向きました。

「あぁ!いけない!ましろ!補講の時間!行くよ?」

時計を見た優里は少し焦りつつもしっかりとましろの手と鞄をつかんで早足に補講の教室へと向かいました。


息を切らして2人は1つの教室の前に辿り着きました。

「ここだよ。時間は……何とか間に合ったみたいだね。オレはあそこの図書室にいるから終わったら来て?」

優里が指を指す方向には白い扉がありました。

その言葉に頷いて見せると、安心したようにましろの頭を撫で

「頑張って」

とだけ言って図書室へと歩いて行きました。

鞄を持つ手にじんわりと緊張した汗をかきながら、扉をガラリと開けました。

広い教室に机が2つ。

後の残りの机と椅子は全て後ろに追いやられていました。

そしてそこにはもう1人の補講者が顔を腕にうずくめて寝ていました。

「ホラ!補講始めるぞ!」

と。

突然すぐ後ろから声がしました。

驚いたましろは振り向き固まっていると

「立石!何をしている!早く座りなさい!」

そう先生に促されるまま席に座らされました。

「塚口!お前も起きろ!」

バコン!

と持っている厚い教科書でもう1人の寝ている補講者の頭を叩きました。

むくり。

ゆっくりと起きて頭をわしわしとかくその姿は寝起きの自分を思い出させる様でした。

「授業をした後におさらいのテストをするからな?しっかり起きて聞くように!」

先生はその言葉を言ってから早速といった風に授業を始めました。

難しい単語。

難しい記号。

難しい言葉。

ぐるぐると頭を抱えつつ書き写し先生の話を一言も逃さないように真剣に聞きました。

最後のテストもノートに書いていたことを思い出しながら何とか空欄を埋めていきました。


「―――はい!採点したテストは明日渡すから。明日も遅刻しないように!」

先生は2人を睨んだ後。

教室を後にしました。

赤く染まる教室。

2人きりの教室。

それが嫌で。

早く出ようと出していたノートやら教科書を鞄に突っ込みました。


ガチャガチャ!


そして急いだせいか筆箱を思いっきり床の上にぶちまけました。

「……。」

隣にいた彼は短く筆箱に目をやるとため息を付き足元にあったペンを拾い、ましろの机に置きました。

「……どんくさ。」

それだけ言って彼は我関せずといった風に教室を後にし

「………。」

ましろは特に気にしない様にして、自分の足下に散らばったペンを拾い上げました。


優里と家に帰ると。

ふらふらとした足取りで自分の部屋に向かいました。

「ましろ?すぐにご飯にするから着替えたら降りて来てね?」

そんな優里の言葉を背に自分の部屋に入り電気も付けずに着替えを済ませました。

勉強でパンクしそうになった頭を抱えながら下に降りると甘い匂いがキッチンから流れてきていました。

それに釣られるように部屋に入るとそこには着替えた優里が湯気のたつカップをスプーンでかき混ぜているところでした。

そしてましろの姿を見付けると袋からマシュマロを取りだし慣れた手付きで浮かべました。

「ほら?座って?疲れたでしょ?」

テーブルから音をたてて椅子を引き出し座ると手に持っていたカップを目の前に置き、キッチンに置いてあったもう1つのカップをゆっくりと持ち上げそのままましろの正面に座りました。

「……いただきます…。」

「どうぞ召し上がれ」

湯気越しの会話。

ましろにとって優里の作ったココアは落ち着くモノになっていました。

「……補講どうだった?」

「……ふつう。」

「一緒の人とは仲良くなれそう?」

「……必要ない。」

その言葉に苦く優里が笑うと

「……私は…殺して貰うの…仲良くなる意味がない…忘れないで…」

ましろは両手で包んだカップに浮いているマシュマロに目を落としていました。

「……それでも死ぬまではこの世界で生活する。それ以上は他の人に慣れないと。」

目を少し上げると優里はカップの湯気の向こうからましろを見つめていました。

少しばつが悪そうに目を又そらすと。

「ね?」

無言の圧力。

気にしなければ良いのに。

この人の言うことなんか。

なのに逆らえない感じがある。

「…………か…っ。」

だからせめてもの反抗として。

物凄く小さい声で言ってみた。


ゴクリと口に運んだココアはましろには甘さを広げました。

「くっ…………!」

優里はすぐに顔を背けて何かに堪えきれなくなったように肩を震わせました。

「声っ…小さっ……もしかして…反抗してる?」

「………別に…」

なんだか優里に笑われることが、少し恥ずかしい様な気がして飲んでる風にして、マグカップで少し顔を隠しました。

「……じゃあなんて言ったの?」

ニコニコと楽しそうな優里が目の前にいました。

「~~~~わかった!」

だから今度はなるたけ大きな声で言ってみせました。

そうするとあたたかな手が頭に伸びてきてポンポンと撫でました。

「えらい。えらい。」

なんだかそれが悔しくて口を尖らせながら、そっぽを向き

「別に……あなたの為じゃない…私を好きになって貰う為……そして死ぬ為………」


「…………うん。わかってる。それでも。言う通りにしてくれてありがとう」


哀しそうな顔。

笑顔が笑っていない。

この話しになるとどうしてあなたは苦しそうなの?

どうして?

…………私には関係ない…?

そうなのだろうか。。

ましろは湯気の少なくなったココアを暫く、見つめていたのでした。


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