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マシュマロ   作者: 里兎
12/23

~笑顔~

―――そうしてその日から毎日のように放課後、家。とテスト迄、勉強漬けの日々が続きました。ましろにとって、その日々は苦痛にしか感じられないものでしたが、夜に淹れてくれるバリエーションを替えてくれたマシュマロココアのおかげでなんとか毎日を過ごす事が出来ました。



―――――「っあーー!やっと終わったー!」

テストも無事最終日を向けて早めに授業が終わった教室の中でまひるは思いっきり伸びをしました。

「お疲れ様。」

優里が笑顔で答えると

「橘君のおかげで今迄のテストの中で一番手応えあるよ!」

ひなたもそれに応えるように大きく頷き笑いました。

そしてすぐに優里の隣で机に突っ伏している廃人の様に疲れきっているましろに目を写しました。

「マシュマロちゃん?終わったよ?お疲れ様?」

まひるは頭を撫でました。

髪の毛は思った以上にサラサラで柔らかく手の離しがたいものでした。


「桜木君?」


笑ってるようで笑っていない。

優里から、そんな威圧感がひしひしと感じ名残惜しそうに手を離しました。

「あーー…っと。ねねっ!今日は無事に終わったって事で何処か行かない?」

そして話を代えるように3人に、提案したのでした。

優里はましろの様子を見て

「ごめんね?今日は疲れたからまた今度。」

机に突っ伏しているままのましろに体を無理に起こさせてコートとマフラーをしてあげました。

それを見ていた2人は少しニヤニヤして堪えきれなくなったひなたが顎に手を当てながら

「橘君はマシュマロちゃんのお母さんみたいなんだねぇ?」

「えっ?おか……?」

あからさまに困惑した顔。

「うんうん。なんか可愛くて仕方がないって感じ!」


「…………それ…好きって…こと?」


ましろがぐるぐる巻きにされたマフラーから顔を除かせるようにひなたに聞きました。

急な言葉に少しの沈黙。

「えっとー?それっ………」

「ひなた!忘れてた!今日は確かお前の好きなドラマやる日だったね!マシュマロちゃん!また次の機会に誘うね!じゃあ!」

何かに答えようとしたひなたに対してまひるはそれを遮り思いっきり腕を引っ張って教室からひなたを引き摺る様に教室を後にしました。

「ちょっ!ちょっと!まひる!なにー?」

暴れるようにまひるの腕から逃げるとまひるに睨まれました。

「無粋だよ?好きとか嫌いとか他人の口から軽く言わない方が良いよ?そういうのは本人が言わなくちゃいけないことなんだから?」

「………わかったー」

少し口を尖らせるように反省したひなたを見て

「よしっ!じゃあ2人でクレープでも買い食いでもしますか?」

まひるはそんなことを言いながら手を頭の後ろに組んで歩き始めました。

ひなたはその言葉に顔を明るくさせ

「やったー!私チョコバナナー♪」

スキップ混じりに、まひるの後を追ったのでした。

その頃優里とましろはまだ教室にいました。

そしてましろはもう一度確認する様に優里に聞きました。

「……好き?」

優里はその言葉から逃げるように顔を背け俯きました。

「………ごめんね?嫌いでは無いけどまだ好きかはわからない。」

「……そう…。」


私はまだ……

私なんか………


一瞬闇に心が染まってしまいそうでした。

その時。

温かいものが手を触れました。

見ると自分の手の上に違う手が重ねられていました。

「でも…ましろといると落ち着く。」

「………………。」

「1人では分からなかった事が少しづつ分かってきた。」

「………………。」

「君のおかげで人間らしくなれた気がする。」

ましろは下を見続けました。


「君と出会えて良かった。」


耳を塞ぎ続けてきた。

人を信じれなかった。

進むのが怖かった。

いなくなりたいと毎日願った。

それでもあなたは。

そんな私に優しく声をかける。

優しくい続けてくれる。

わからない。


「………そう。」

ましろは何も見ないまま答えました。

「………!?」

その表情を見ていた優里は驚きました。

そこには微かに笑っているような表情のましろがいたのです。

「…………?」

首をかしげて優里の方を見直すとそこには驚きを隠せずに、頬を淡く朱色に染めた表情がありました。

「…………なに…?」

優里は首を振るようにして気持ちを落ち着かせたのか1つ深呼吸をしました。

「……ううん。何でもない。帰ろうか?」

そして優しい顔の優里に戻り、ましろの手を掬うようにして掴んで立ち上がらせました。


いつもより冷たい気がする手。

お揃いのブレスレットが重なりあうように揺れている。

いつもと同じ。

いつもと同じ筈なのに。

心の一片が温かい。

私は知らない。

冷たい心しか知らない。

知らない筈なのに……。


「もうすぐ冬休みだね。」

振り返らずに歩いたままで優里はましろに話し掛けながら帰り道を歩いたのでした。


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