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病んだ世界で俺は死ぬ  作者: 湯気狐
Fours Dead
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雫の気持ち=破壊衝動

白奈さんの家に向かった咲夜さんは既に姿を消していた。月さんは、気分が悪いと言って帰ってしまった。きっと、月さんは一度この場所を訪れて事情を知ったんだ。そして転校したという事実は生徒会に入っているコネで知れたことなんだ。


私は白奈さんの家の中にあるトイレの中で立ち尽くしていた。見つめている先には、私が仕掛けたものの、発見されて処分された盗撮機が置いてあった物置場がある。本来ならいくつかのトイレットペーパーが置いてあるけど、誰もいなくなったこの家には物一つ置いてなかった。


「白奈さん・・・・・」


何でなんだろう・・・何で白奈さんは誰にも伝えることなく居なくなってしまったんでしょう・・・


幼馴染であるはずの咲夜さんや月さんにも何も言わずに居なくなったから、何かしら深い理由があるとは思うけど、さっぱり見当がつかない。分からない。白奈さんが何を考えて居なくなったのか分からない。


いや、本当はいなくなった理由なんてどうでもいいことだ。重要なのは、咲夜さん繋がり関係でも、月さん繋がり関係でもない。


私の前からいなくなってしまったことだ。


「い・・・や・・・・・」


白奈さんが消えた。一人ぼっちだった私に初めて手を差し出して友達になってくれた、あの優しい白奈さんが消えてしまった。もう・・・あの笑顔を見ることができない?


「嫌・・・嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」


嫌。そんなの嫌。駄目なの・・・私には白奈さんがいないと駄目なの・・・白奈さんがいないと私はまた一人ぼっちになっちゃう・・・そんなの絶対に嫌。孤独になるなんて絶対に嫌。


私にとって白奈さんは私の全て。私にとって白奈さんは私の身体の一部。欠けてはならない存在。


気分が悪いときはいつも励ましてくれた。寂しいときはいつも慰めてくれた。欲求不満なときはいつもシてくれた。皆皆、私に優しくしてくれた。私と一つになってくれた。


会いたい。今すぐに。私は白奈さんが居たはずの家を出て家へと戻る。“白奈さん達”に会うために。


そうだ。今日は朝までシてもらおう。そして改めて私との愛を育んでもらおう。そうして貰わないと、おかしくなってしまいそうだから。


すぐに家に到着して玄関から真っ直ぐに自分の部屋に向かう。そして勢い良くドアを開いた。


そして、私の視界に入ってきたのは―――


「・・・あ・・・れ・・・?」


白奈さんでも何でもない。似ても似つくことが絶対にない数体のマネキンだった。


何故? どうなってるの? ここには私だけの白奈さんがいるはずなのに、どうしてこんなマネキン何かが置いてあるの? 私? 私がこれを持ち運んだの? 何のために?


「・・・い・・・や」


良く見ると、マネキンの股間部分に奇妙な物が生えていた。もしかして・・・もしかして私は今まであれに・・・そんな・・・だとしたら私は今まで何を・・・白奈さんでも何でもない、空っぽの魂の存在の人形相手に何を・・・・・


「違う・・・違う違う違う違う違う。私の欲求はこんなガラクタ何かでは満たされない。こんな・・・こんなガラクタなんかでェぇエえ!!!」


机の引き出しに納めていた金槌を取り出し、周囲にあるガラクタを粉砕する。原型が残らないくらい、人を殺す感覚で何度も何度も打ち砕く。


「ァアアァアッ!!! アァアアアッ!!! アハッ、アハハハハッ!!!」


何だろうこの気持ちは・・・楽しい? 壊すのが楽しくなってるの私? 確かに、跡形もなく粉々になっていくガラクタを見ていると興奮していくのが分かる。でも、これはあくまで物だから興奮しても限度がある。


なら・・・もしこの対称が“人”だった時は? 私は一体何を思う? 脳髄や腎臓が飛び出てくるくらいに痛め付ければ私は何を思う?


何も知らない他人が相手なら駄目・・・それじゃただの人殺し。ただ狂ってる人と何も変わらない。


なら・・・白奈さんだったら? 何を言ってるの私、そんなことしたら白奈さんが死んでしまう。本末転倒なことを考えても何も意味はない。


なら・・・白奈さんに関わる他の人達が対称だったら?


「・・・・・そう」


そう。そうだったんだ。分かった。白奈さんがいなくなってしまった理由が。きっと、毎日のように詰め寄ってくる皆さんが鬱陶しかったんだ。だから逃げちゃったんだ。「もうお前らと関わりたくない」と。


「だったら私は何を・・・・・あっ、そうだ」


なら、白奈さんに付きまとう人達を取り除けば良いんだ。そうしたら、白奈さんには私しかいなくなる。私一人だけが白奈さんと一緒にいられる。私が白奈さんを独占できる。それに、今知ってしまったこの衝動を抑えないで快楽を味わうと共に邪魔な人達を排除できる。一石二鳥だ。


「白奈さんが私だけの物に? 凄いなぁ、まるで夢みたい・・・邪魔な人達を好きなように痛め付けられて、白奈さんを好きにして良いなんて・・・そんなのって・・・・・」


さいっこうの一言じゃない!!


「アハッ・・・アハハッ! アハハハハハッ!! アハハハハハハハッ!!!」


これ以上の快楽なんて無い! 何もかもが私の糧となってくれる! これで私は一生涯白奈さんと共に幸せな日々を送ることができる! 何秒も何分も何時間も何年もずっとずっとズットズットズット!!


「イッショウカンナサンハワタシノモノ」


でもその前にヤルことがある。何処かにニゲテしまった。白奈さんをサガサないと。


あレ? なんダロう? シかイが歪んデいくミタい?


じぶんノコえがヤタらとヘンにキこえテくル―――


アレ?―――アレ?―――アレ?―――


デモ良イヤ。ソンナコトヨリ、今ハ白奈サンヲ一番優先スベキダ。マズハ白奈サンヲ誰ヨリモ一刻モ早ク探シ出シテシマワナイト。


誰ヨリモ一番ニ白奈サンヲ見付ケタラ、最初ニ私ノ存在意義ヲ知ッテモラオウ。私ハ貴方ノタメダケニ生キテイルト。私ハ貴方ノタメダケニ存在シテイルト。私ハ貴方ノコトダケヲ考エ、障害ヲ共ニスルタメニコノ世ニ生マレ、育ッタンダト。親ナンテ所詮ハ白奈サンニ出会ウタメノ道標ノ道具ニ過ギナイ。


コレカラハ神凪サンノタメナラナンダッテヤロウ。平気デ人ヲ騙シ、利用シ、私ノ害トナルナラバ容赦ナク処分シテアゲマショウ。


全テハ私ガ白奈サンノモノニナルタメニ。全テハ白奈サンヲ私ノモノニスルタメニ。


「・・・・・とりあえず、まずは白奈さんの所在を調べないと。凄いなぁ私。白奈さんのためなら人格すら変えられるだなんて・・・今までの私なら想像も付かなかったけど・・・今は違う。今の私にならなんだってできる気がする。いや、それは違う。今の私になら・・・確実にできる!」


白奈さん、もし私とまた出会ったらなんて言うかな? 驚いた顔をするかな? わざわざ会いに来てくれたんだねって喜んでくれるかな? だとしたら、変わることができた甲斐があるのかもしれないね。


さぁ、行こう。


誰にも白奈さんを渡さないために、白奈さんを手に入れるために。一生涯私のモノニスルタメニ。


「今行キマスネ・・・私ノ愛スル白奈サン・・・・・」


ソシテ、ワタシハヘヤヲデテソトヘトトビダシテイッタ。全テハ神凪サンノタメニ・・・・・

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