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病んだ世界で俺は死ぬ  作者: 湯気狐
Fours Dead
36/46

不素直=ツンデレ少女

視点が女キャラの誰かだった場合、背景をピンク色にしておきたいと思います。そんなわけで、今回は新キャラの凛菜視点です。

シーナの家から去り、自分の家である隣の家の扉を開けて中へと戻ってくる。そのまま真っ直ぐに自分の部屋へと向かいドアを開けて中に入ると、部屋の端に寄せてあるベッドに顔から枕元にダイブした。


「・・・・・」


脳内に思い浮かぶのは彼の顔。昔とほとんど変わらない見た目(気付かなかったのに)。誰かの世話をすることに慣れているような雰囲気(何処か察していた)。本当に何も変わっていなかった(気付かなかったのに)。シーナはシーナのままだった(でも気付かなかった)。


「あぁあああぁぁぁぁ・・・・・」


ゴロンゴロンと右に左にと転がり悶える私・・・・・何で!? 何でこのタイミングで再会するの!? もっとこう・・・感動の再会、みたいな絶好のシチュエーションで会いたかったのにぃぃ!! そしてその時に掛けられる言葉が――


~~~~~~~~~~

「――お前がいなくて、寂しかったよ・・・凛菜・・・・・――」

~~~~~~~~~~


そしてそしてその行き着く先は口と口の繋がり確認ヨロレイヒ~・・・・・


「なんて言うものは幻想だったぁぁぁ・・・・・うわぁぁぁぁん・・・・・」


物凄い複雑な気分だ。本当のところシーナと再会できたのは物凄い嬉しい。これ以上にないくらい嬉しい。ノリでバンジージャンブに挑戦できるくらいに嬉しい。しかも学校の転入先は、シーナから聞いた情報だと同じ高校。これはもう運命的なものを感じちゃう。


でもぉ!? それなのに私は再会したというのにあの反応っ!! あの態度っ!! もう自分でも自覚出来るくらいに嫌な女だったっ!! ホント最低、マジ最低、マジで私何なのよ・・・・・


本当ならいっそ飛び付いて抱き締めて欲しいくらいなのに・・・どうしてあんなにも素直になれないのかしら私は・・・いや、分かってるわよ。そんなことしたら赤面死してしまう未来が見えていたからよ。いわゆる未来視よ。超能力的な何かよ。あの一瞬だけ開化したのよ。


そして一番最悪なのが、この裏の顔である私のことを知られてしまったこと。昔は少なからず礼儀正しい印象を見せ付けられていたのに、その努力が水の泡となってしまった。


絶対ガサツな女と思われた。絶対ズボラな女と思われた。絶対嫌な女と思われた。特にズボラな面なんて図星だ。現に、部屋もリビングも散らかっているし、食事も基本的にコンビニとかスーパーのもの食べるばっかりだし、好物はカップラーメン豚骨味だし、何から何まで女の子らしくないし・・・・・


「って、駄目駄目駄目よ私っ!! こういう時こそポジティブにならなくちゃいけないのよ藤堂凛菜っ!! 前向きに行くのよ前向きにっ!!」


そうよ!! 過去の失敗をいつまでもクヨクヨ引き摺っていたら、それこそ最低よ!! 大丈夫よ!! これからはお隣さんになったんだし、会える機会はいつでも・・・・・


『――さっきから隣でギャーギャーギャーギャー喧しいのよ!! 馬っ鹿じゃないの!? 頭沸いてんじゃないの!?――』


だ、大丈夫、大丈夫よ・・・私はシーナと幼馴染の関係なのよ・・・早々簡単に切れる絆じゃ・・・


『――知ったことじゃないわよ!! いいからとっとと名乗りなさいよ!! 一生私のブラックリストに載せてやるわよ!!――』


大丈夫・・・大丈夫・・・固き絆は、たとえどんな困難が立ちはだかろうとも打ち勝てる・・・


『――ウッザ!! シーナがこんなウザい人になってるだなんて思わなかったわよ!!――』


大丈・・・夫・・・フフッ、フフフフフッ・・・あれ? 何か目から冷たいものが・・・何かしらこれ・・・


『――二度と構ってあげないんだからね!! 頼み込まれても何も知らないんだからね!! この町のこと何も知らなくても私には何も関係ないんだからね!!――』


「・・・・・」


うん・・・これ・・・もうね・・・あれよね・・・絶体絶命?


「アハハハハハハッ!!! はぁぁぁぁぁぁ・・・・・うわぁぁぁぁぁぁん・・・・・」


駄目、絶対嫌われたぁ・・・ウザい人とか言っちゃったしぃ・・・二度と構ってあげないって言っちゃったしぃ・・・ホントは優しくて格好良いこと知ってるのにぃ・・・ホントは毎日一緒にいたいくらいだったのにぃ・・・あぁ、これが自暴自棄なのね・・・リアルに最低じゃない私ぃ・・・


ベッドから転がり落ちて床にうつ伏せになると立ち上がり、机の上に置いてある写真立てを掴み取る。そこには、小さい頃の私とシーナとサーヤ(咲夜)の三人が写っている。シーナを真ん中にして両端から私とサーヤが抱き付いて、笑顔でピースサインをしている。二人と幼馴染であるという繋がりを、この歳になっても感じられる私の宝物だ。


「・・・・・サーヤ・・・元気かなぁ・・・」


その写真立てを眺めたままベッドに背中から倒れて、それを胸に抱き締めるように抱えて私は浅い溜め息を吐いた。今頃、サーヤは何をしてるんだろう・・・ちなみに私は自暴自棄に呑み込まれてるわよ・・・フフッ、フフフッ・・・ハァ・・・・・


いつまで引き摺るのかしら私は・・・止めよう。これ以上ネガティブになっていたら、それこそ本当に絶体絶命の危機に陥ってしまいそうだから。


「ハァ・・・シーナ・・・」


構ってあげないなんて嘘なのよ? 本当は色んなところに連れていってあげたいし、もっと一緒にいたいって思ってるのよ? これが私の本音、だからね?


なんて、心の中で呟いたところでシーナに届くわけがない。虚しいというか悲しいというかやるせないというか・・・やっぱり直に話をしないと駄目よね・・・


そういえば、あの頃は携帯なんて持ってなかったからシーナのメルアドすら知らないのよね・・・うぅ・・・さっきさりげなく聞いておけば良かったのに、私ってどうしてこうも残念なの・・・肝心な時に限って奥底に眠る力を発揮できない勇者並にヘボ過ぎる・・・勇者どころか落武者よ・・・


「って、またネガティブになってるっ!! あぁもう何なのよ!!」


今まではこんなことになってはいなかったというのに、ついさっきの出来事で一変してしまった。どれもこれもシーナが現れたせいよ!! どうしてくれるのよもう!! でも怒りたいのに怒れないじゃない!! 何処にこの高ぶった感情をぶつければいいのよ!? ベッド!? ベッドにぶつければいいの!?


ズガンッ!!


「~~~っ!!」


よりにもよってベッドの角である木の部分に額を思い切りぶつけてしまった。何から何まで最悪よもう。何なのよ? 私が何をしたっていうの? いや、訪れた出来事は物凄く良いものだったけど、なら今のこの状況は誰のせいよ!?


「・・・・・いや私よ!! 馬っ鹿じゃないの!? いやホント馬っ鹿じゃないの!? というか、さっきから私一人言多すぎよ!! 怖いわっ!!」


何でこんな一人コントを繰り広げているのよ私は・・・観客なんて誰一人としていないというのに・・・む、虚しい・・・虚しいけど・・・現実は嬉しい・・・でもやっぱり虚しい・・・何堂々巡りしてんだか私は・・・ハァ・・・・・


とりあえず今日はもう寝てしまいましょ。今は何を考えても悪い方向にしか傾かないのが見え見えなんだから。


とにかく、いつでも何が訪れても大丈夫なように、明日は大掃除をしよう。もし、シーナが私の家に訪れてこの有り様を見られたりしたら・・・今度こそチェックメイツ。幼馴染の縁がぶちギレ、ハイ終わり。そんなのは死んでも嫌よ!!


ズボラな私だから途中で嫌になるかもしれない・・・というか絶対嫌になる。そんな時は現実を見よう。そしたら、嫌でも掃除をする気力がまた沸き上がって来るだろうから。


そして、私は明日に備えて歯を磨いてシャワーに入ってから再び布団の中に入り、深い眠りについた。




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