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病んだ世界で俺は死ぬ  作者: 湯気狐
~Second Dead~
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真夜中=奇襲の手

真夜中。多分今の時間帯はそれくらいだ。静かな沈黙がカチカチカチと時計の針が動く音を強調させる。普通なら・・・普通の者ならスヤスヤ眠っていられるんだろう。しかし、ごく希にいるのだ。真夜中に目覚めてしまって“アレ”をしたくなってしまう者が。そしてその者が俺の隣にもいたらしい。


「白君~・・・白君ってば~・・・・・」


「Zzzzz・・・」


少し涙目になって顔をほんのり赤くさせている月が俺の身体を何度も揺すって呼び掛けて来る。でも俺は狸寝入りをこいて絶対に起きようとはしない。絶対やだ絶対起きないぞ俺は。


「白君~・・・お願いよ白君~・・・・・」


「Zzzzz・・・」


それでも月は俺を呼びつける。密着きてきているので柔らかいそれを思いきり肩に当たってくるが、俺はそんな誘惑に負けずに眠り続ける。明日・・・というかもう今日になってるかもしれないが、雫とのデートのために朝は早く準備しなければならないのだ。今は眠るのが最重大事項なのである。


「白君~・・・ねえってばぁ白君~・・・少しだけで済むからぁ~・・・・・」


「Zzzzz・・・」


とうとう月は俺の身体に股がって抱き付いてきて俺を起こそうと擦ってくる。多分顔が近い部分にまであるのか、月の少し荒くなっている息遣いが聞こえてくる。どうやら本当に限界が近いらしい。全く良い年なのにまた面倒な・・・でも俺は絶対に起きてやんないもんね。勝手にしてくれ。


「白君ってばぁ~・・・キス・・・しちゃうよ~?」


「Zzzzz・・・」


「舌もいれちゃうよぉ~? 多分私興奮して我慢できなくなるかもしれないよぉ~?」


「Zzzzz・・・」


「・・・・・良いもん良いもん・・・本当にしちゃうんだから・・・」


「Zzzzz・・・っ!?」


突如口で息ができなくなって俺は薄っすらとしていた意識を呼び覚まさせてしまった。マジで月がキスを仕掛けてきたからだ。月の小さくて柔らかい口が思いきり俺の口に重ねられている。


「んん・・・ちゅ・・・んむ・・・はむぅ・・・白君・・・んん・・・ちゅぱっ・・・」


「~~っ!?」


寝起きの夜だからだろうか、上手く力が入ってくれない。いや、恐らく月に腕の部分に膝を乗っけられているので血が回っていなくて力が入らないのだろう。痺れてきているのが良い証拠だ。


そしてここぞとばかりに月は有言実行としてさらに仕掛けてくる。ただ口を重ねるのではなくて、俺の口の中に舌を入れてきて徘徊させてきた。じゅるじゅると唾液が混ざる音が聞こえ、背筋が自然と伸ばされてしまう。


「くちゃっ・・・じゅるる・・・んあっ・・・白・・・君・・・んんっ・・・ちゅぱっ・・・ぁん・・・白君・・・じゅるるるっ・・・白君・・・」


「~~~~んぎっ・・・分かった。月、分かったから止めっ!?」


何度か口の中の唾液を吸われてしまうように舌込みのキスをされて、息をするために月が一度口を離した。その時に俺は確実に目を覚まして了承したのだが、月は聞く耳持たずにまた俺に口付けをしてくる。どうやらしたらしたで止まらなくなってしまったようだ。熱を帯びて色っぽくなっている月は俺の頬を両手で優しく包むように掴んで集中的に舌を絡めてくる。


こんな時には咲夜に起きていてほしいものなのに、残念ながら咲夜は一度眠ると全然起きてくれない体質にある。ちょっとやそっとの物音じゃびくともせずに眠っている。しかも、昭和の雰囲気を醸し出すかのように、目が3になって鼻から鼻提灯を膨らまさせている。俺がこんな目に遭ってるのに呑気なことですね咲夜さん。


「白・・・君・・・私っ・・・じゅるっ・・・ちゅぱっ・・・もう・・・ぁぁ・・・んん・・・くちゃっ・・・我慢・・・んぁ・・・はぁんむ・・・くちゃくちゃっ・・・できない・・・白・・・んん・・・君・・・」


咲夜は左手をそのまま俺の頬を掴んだままにして、空いた右手はというと自分の来ているパジャマのボタンを上からぷちぷち音をたてて外し始めたのである。外すのが早いのですぐに上着のパジャマが脱がれてしまい、Tシャツを着ていないため上だけ下着姿の身体が露出されてしまう。


「まてまてまてまて! 落ち着け月! 一旦落ち着こう!」


「ふぁ?・・・白君?」


息をするためまた口を離されると、ようやく腕に力が入ってきたので右腕をどうにか月の膝から解放させて月の目の前に突き出した。それでキスを止めることはできたものの、今だ月の顔は色っぽくなったまま寝惚けているような状態になっている。


「よし止まったな。そして思い出せ月。お前は“おしっこ”に付いて来て欲しいから俺を起こそうとしてたんだろーが」


「おしっこ・・・あ・・・・・」


月は何処かスッキリした顔を一瞬だけ浮かべると、ゆっくり股間の方に右手をかざした。俺からも見てはっきりと分かった。少しだけ月の股間の部分が湿っているところを・・・・・


「・・・少し漏れちゃったよぉ白君・・・・・」


「おまっ! マジでおまっ! もうっ!!」


俺は月をお姫様抱っこするとすぐにトイレへと向かって行き、ドアを開けて便座に座らせてからドアを閉めた。それからその近くで胡座あぐらをかいて待っていると、トイレの中からパジャマと下の下着を脱ぐ音が聞こえ、その後にチョロチョロとおしっこの音が・・・ここは耳を塞いでおこう。


少ししてトイレの水が流れる音がなった辺りで俺は鬱いでいた耳を解く。するとトイレの中から月が半分泣いたような声で呼び掛けて来る。


「白くぅん~・・・パジャマもパンツも濡れちゃったよぉ~・・・」


「そりゃそうだろうね! 替えの下着は持ってきてんのか!?」


「鞄の中に一枚だけ入れてあるぅ~・・・白君お願いだよぉ~・・・」


「ハァァ~・・・・・分かったちょっと待ってろ」


俺は大きくて深いため息を吐いて部屋に戻ると月の鞄をすぐに発見する。少し中身を開けるのに戸惑うものの、俺はジッパーを開けて中を確認した。中に入っているのは化粧品の袋といった女の子らしいものばかりだ。だが・・・最重要のパンツなのだが・・・いや、あるにはある。だがそれは普通のパンツとは言えるものではなかった。明らかに隠す場所が薄い上に紐・・・これってどう見てもあれだよな・・・俺は始めて勝負下着というものを目の当たりにした。


月には失礼だが、それを握り締めて持ちたくないので俺はそれを摘まむ形で持って行った。


「ほら・・・持ってきたぞ」


トイレの前までやって来ると、ドアを少し開いて隙間から腕を伸ばして月に渡す。だが月は一向に受け取ろうとはしなかった。


「おい持って来たって言ってんだろ。受け取れって」


「うぅ・・・湿ってるよぉ・・・恥ずかしいよぉ・・・白君履かせてぇ~」


「無理に決まってんだろ馬鹿かっ!!」


ただでさえ刺激が強いパンツだというのに、履かせるなど無理難題だろ。付き合ってられないので俺はパンツをトイレの床に置くとドアを閉めて立ち去ろうとする・・・が。


「グスッ・・・白君私のこと嫌いなんだぁ・・・エグッ・・・うぅ・・・うぁぁん・・・」


ここに第二の咲夜が誕生してしまっていた。月はトイレの向こう側からでも分かる大きさで泣き始めた。このままだと月は永遠に泣き続けるだろう。それだけは避けるために俺はまた大きく深いため息を吐いて目頭を何度か摘まむとトイレのドアを再び開けた。しかし今度は全開だ。


「あぶねっ!?」


開けた瞬間、月が今はブラジャー一枚だけのほぼ裸状態だったことにいち早く気付いて視線を上に上げた。危なかった、そのままいったら少なくとも女の子の下の裸を見る可能性が100%だった。


「グスッ・・・白君・・・」


「ちゃ、ちゃんと全部出してトイレットペーパーで拭いたんだろーな?」


「うん・・・」


「分かった・・・んで? 脱いだ物はどうした?」


「履いてる・・・」


「分かった・・・んんっ!? なんだって!?」


ということはつまり・・・俺は視線を上から月に真正面に向けた。そこには便座に座っている月が当然いるのだが、確かにおしっこで少し濡れてしまった物を履いてしまっていた。下着もないということはパンツも履いてしまったんだろう。


「何で履いたっ!? 何で履いたのお前っ!?」


「だ、だってぇ・・・他に履くものがなかったからぁ・・・」


「だったら履かないで待ってれば良かった話だろっ!?」


「あっ・・・グスッ・・・ごめんなさぃ・・・うぁぁぁん・・・・・」


「あぁもう泣くなってもう・・・あぁもう泣きたいのはこっちだっつの・・・」


どうやら・・・俺は月を慰めた後にパジャマとパンツを脱がした後にまたパンツを履かせないといけないらしい・・・何でこんなことになったんだ・・・俺は三度目の大きく深いため息を無意識に吐いていた。

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