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森ガール、森の恐ろしさを知る

「ふわぁぁぁ」


やば!おっきな欠伸出ちゃった


「あんたねぇ…いくら客来ないからってのんびりしすぎじゃない?」

カウンターの向こうからお姉ちゃんが一言


「えへへ…ごめんごめん」


私は木下友里、このカフェでバイトさせて貰ってる花の女子高生なのです


「まぁでもアンタが欠伸したくなる気持ち分からなくもな…ふわぁぁ」

伝染っちゃったと悪戯に笑ってるのが私のお姉ちゃん木下友香


「にしても今日客全然来ないねぇ…」

お姉ちゃんが退屈そうにテーブルを手でパタパタ叩く


「今日天気悪いからかなぁ」

私は窓際の席に座って外を見上げる


見事な曇天、こりゃあ降りだしそうなのです


「にしても最近売上があんまり良くないなぁ…何かいい宣伝方法ない?」

お姉ちゃんからの提案に私は声を荒げてこう言った


「マスコットキャラ作ろう!マスコット」


「え?どんなのよ」


「こんなの!」


と私はボールペンを取り出し紙ナプキンを一枚取って書き始めた


「へぇ…アンタ相変わらず絵が上手いねぇ」


「えへへ」

なんか褒められちゃった


私には叶えたい夢があるんだ


イラストレーターになって色んな絵を書いてみたい

プロになって絵でお金を貰う、それって私の絵が認められてるってことだと思うからなの


その為の画材道具も一式買って一生懸命勉強したし、パソコンでペンタブとイラストレーターを使って投稿とかもしてみてる


生の反応が返ってくるのが凄く楽しいの


楽しいけど、それで終わり

残念だけどその先はやっぱりないのです


なので高校卒業して専門学校に行くためにバイトしてお金を貯めてるのです


お姉ちゃんありがたやーありがたやー

「なに?なんでアタシに祈ってんの?」


「ん?いつもありがとって意味だよ」


「な!可愛いなコイツー!」

わしゃわしゃと髪を撫でられる


こんな時間がずっと続けばいいなぁって毎日思ってるの


(カランカラーン)


やば!お客さんだ!


「い、いらっしゃいませー!」


急いで席を立つとそこには誰もいなかった


するとお姉ちゃんがギョッとした表情で私の後ろを見る


合わせて私も振り返るとそこには長身の男の人が立ってる!


「キャアアアアアア!」


「いやいやいやちょっと待って下さい!怪しい者ではございません!」


男は上に着ていたコートを脱ぐと懐から急いで一枚の紙を取り出した


「夢取り扱います…名刺?」

お姉ちゃんが私に渡された名刺を恐る恐る覗き込む


「これは何ですか…?ってかなんでネクタイに夢って…」


「あ、これは女房のチョイスです。カッコイイでしょう?」

自慢げにネクタイを見せてくるけどセンスの欠片も感じられないネクタイ


逆にどこで見つけてきたのか気になるのです


「ちょ、ちょっとお客さん!妹に何か用ですか?」

慌ててお姉ちゃんが私と夢おじさんとの間に割ってはいる


「いえいえ!宗教の勧誘とかではないのですよ!えぇ!」

男は慌ててカバンの中から資料みたいなものを取り出した


「私夢の取引仲介人をやっております富士鷹文と申します」


「これは…夢の取引の流れ…査定の例…注意事項…」

お姉ちゃんがパラパラと資料に目を通す


「あ、立ち話もなんなのでアイスコーヒー一ついただけますか?」

お姉ちゃんは玄関に出してある看板をクローズに変えてカウンターの奥でコーヒーを淹れ始めた


「さて、お話というのは簡潔に説明しますと夢を買いませんか?というお誘いです」


ほぇ?夢を買う?どーゆーこと?


「ふふ、困惑なさるのも無理はない…よろしければ少々お手を拝借してもよろしいですか?」


「嫌です」


「…ちょっとでいいんです、先っぽだけでもいいので」


「なんかもっと嫌です…」


何この人ちょっとやばいよ!

夢おじさんはセクハラおじさんだったよ!あわわわ


「お客さん…いきなりうちの妹の手を触ろうとするなんて…」


コーヒーを運んできたお姉ちゃんが夢おじさんを睨みつける


「あ、お姉さんでしたか…あは、あははは!」


はぁ、とため息をついた後お姉ちゃんは提案した


「私の手じゃダメなの?」


「いえいえ!お姉さまの手でも私の商売の証明が出来れば大丈夫なので」

ふーん、と言いながらお姉ちゃんが渋々手を出す


「おぉ、美しい手ですね…フフフ」


「いいからさっさとしろ!」


脛を蹴られた夢おじさんはお姉ちゃんの手を握ると目を閉じた


暫くすると目を開けてお姉ちゃんの夢の査定が始まったの


「お姉さまの夢はイラストレーター、今は諦めて暫く時間が経っているので査定額は800万となります」


え?お姉ちゃんイラストレーターになりたかったの?


「あららら、本当に当たっちゃったよ…はは」

お姉ちゃんの頬を冷や汗が伝う


「じゃあ友里の方はどうなんだい?」

お姉ちゃんが若干の焦りを見せている…どうしてだろう


「ではお手を拝借しまして…」


夢おじさんは私の夢を査定し始めた

別に手を握られてるだけで特別痛いとかはなかったから不思議な感覚


「妹さんの夢もイラストレーター、今も研鑽を積まれてらっしゃる」


急に不気味になってきた…なんで分かるの?


「ふむ…パソコンなどで投稿もして周囲からの反応も上々…査定金額は8000万ですね」


その時お姉ちゃんの優しい顔が一瞬歪んだ


「えっと…なんでそんなに高額なんですか?」


「夢の査定金額は夢への到達までの距離のようなものです」


かなり近いのかな?お姉ちゃんには悪いけどちょっと嬉しかった


「でもこのままでは恐らく叶えられません」


え?っとお姉ちゃんの二人でつい変な声出しちゃった


「で、でも私一生懸命努力してますし…その…普通の人よりは自信あります!」


「辛辣な言葉を浴びせてしまうようで申し訳ありませんが、そのような方はプロでなくてもごまんと居られます」


私は急に今までやって来たことが無駄になるのではないかと怖くなってきた


「ですが…確実に叶える方法が身近にありますよね?」


私はハッとした

隣に座ってるお姉ちゃんが穏やかじゃない表情で夢おじさんに問いかけた


「私の夢を友里にあげれば叶えられるの?」


「ご理解いただき嬉しく思います」


お姉ちゃんから夢を奪って私が叶えるの?そんなことしていいの?

私の頭の中を罪悪感と優越感がグルグル回る


「返事はすぐでなくても構いません。連絡心よりお待ちしております」


そう言って私の左手に握られた名刺をツンっとつついて去ろうとする夢おじさんにお姉ちゃんが一言



「380円だよ」

森ガールって文章で表現するのが難しかったけどタイトル面白くなっちゃったからこれで行こうって思いました

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