ジャンパウル、、、極私的試論、jean paul あまりにもドイツ的な作家。
本名、ヨハン・パウル・フリードリヒ・リヒターという。1763~1825
この人はあまりにも、にもドイツ的な作家だった。全集65巻という多作を残したがそのほとんどは日本では知られていない。
というのは、ドイツ人以外には受けないというゲルマン的な風土とゲミュートに根ざしているからなのである。
一言で言えば偉大なユーモア作家、あのしかつめらしいドイツ人でユーモア?
何かありえない話だがユーモア作家である。
彼は常に貧しい人の側に立ち、そのささやかな人生の哀歓を表現した。
しかし、その作品は余りにも混沌としていて、独自の雑然さが支配しており、今読むとあっちにとびこっちにとびで非常に読みずらい。
いたるところに機知がちりばめられ、風刺が効いているかと思えば、繊細な感情表現があり、メロディアスなその文章はあまりに自由奔放である。
その独自の表現と、こうした難解さのため、日本人には非常に理解しずらいものとなっている。
これは一面非常にドイツ的なものなので、後のドイツ文学に与えた影響は深い。
その長編は「巨人」titan1803と「生意気盛り」fregelyahre1804が彼の代表作であろう。
「巨人」はアルバーノという、主人公が、夢想的生活から、次第に現実に目覚めて、行動こそ人生の真の意義と見出すまでを描いた、教養小説である。邦訳現代思潮社 古典文庫に有り。
「生意気盛り」は美貌の夢想家ヴァルトがその双子で、醜くて現実家のヴルトの助けを借りて、社会的に有用な人物に成長していく様を描いた長編小説である。残念ながら未完に終わった。邦訳なし。
まあ、こうした大長編は先にも言ったように今読むのはかなり苦痛であるので、
短編の『マリアブーツの生涯』でもよんでジャンパウルの風味を知れば十分だろう。邦訳あり。
小学校教師の貧しいマリアブーツ先生が平凡に現実を受け入れて満足しきってその生涯を送り、野辺の露と消えるまでの生涯をやさしく感傷的に描いた短編である。
「気球乗りジャノッツオの冒険」は中篇小説。ジャノツッオが見た世間の様を風刺たっぷりに描いている。古典文庫に邦訳有り。
他に、代表作は,
「見えないロッジ」、unsichtbare loge1793 鈴木武樹訳 ジャンパウル文学全集
「ヘスペルス」 hesperus1795
「5年級教師フィックスラインの生活」1796鈴木武樹訳 ジャンパウル文学全集
「貧民の弁護士ジーベンケース」1797鈴木武樹訳 ジャンパウル文学全集
などが有ることを書き留めておこう。
彼には小説以外では美学論、教育論の著作もある。
鈴木武樹教授がかって全訳全集を企画したが、42歳でご本人が逝去して、中断してしまった。
しかし、水を差すわけではないが、ジャンパウルは、日本人には理解不能というか、受けないので、
全訳しても結局は無駄であろう。
実際私もジャンパウルは余りよみたいとは思わないし、読んでも何しろあの文体は、錯綜振りは辟易するばかりだから、読み通すだけでも一苦労だ。冗長で退屈で錯綜している。
ま、ジャンパウルは、文学史上で知っていればそれでよいだろう。
「ルチンデ」とか「アルディンゲロ」という小説があったということがわかればそれでいいのと同様だ。
別に今更「ルチンデ」や「アルディンゲロ」を読む必要もあるまい。
今更ジャンパウルを読む必要もあるまい。
ホフマンやノヴァーリス、が今も再読する意味があるのとはそこが違う。
最近また邦訳本が出たので追記する。
生意気盛り 恒吉 法海 訳 九州大学出版会
ジーベンケース 同上
ヘスペルス 同上
彗星 同上
ジャンパウル中短編集 同上
これでほぼすべて、ジャンパウルの代表作は日本語で読めますね。
ところで、、だれか、、、
ティークの「ロベル氏の話」「フランツシュテルンバルトの遍歴」
ブレンターノの「ゴドヴィ、あるいは母の肖像」
このドイツロマン派の代表作3作品を邦訳してくれませんかね?
こういうドイツロマン派の代表作がいまだに未訳って、日本のドイツ文学者の怠慢と恥じゃないですか?