第三十五話
区切りの都合で超短い。すいません。
ヘリオスさんは容赦がなかった。
「これとこれとこれ、全部すり潰しておいてくれ」
「わぁ、ザルいっぱいですねー」
「口を動かさず手を動かせ」
庭にある薬草をザルいっぱいに摘んできたと思えばこんな感じ。それも三つも。
ちなみに手伝いは即日即時。それじゃあお手並み拝見とばかりに用事を言いつけられてます。
すり潰し方には問題ないようで、軽く手つきを見たあとすぐに薬草を摘みに行った。これは合格点だろうか。
「これはどんな薬効が?」
「そんなことも知らんのか? それは痛み止めだ。横のしびれ薬と合わせて使うのが一般的だ」
「あ、これしびれ薬ですか」
「その痛み止めは効果が弱いからな、しびれ薬で誤魔化すんだ。止血剤と混ぜる場合もある」
「配合は1:1でいいんですか?」
「基本はな」
と、こんな感じで教えてもらったり。
薬のことに関してはヘリオスさんは饒舌だった。
「とまぁ、順調でした?」
宿に戻り、ご飯を食べつつヴィルに報告。
「ふーん。まぁ、よかったんじゃないか?」
「うん。明日も来ていいって」
むしろ来るのが当たり前だった。
明日は近くの森まで薬草を摘みに行くから朝から来いって言われた。
「でも大丈夫か? 金はあんまりないんだろ?」
「それはとりあえず大丈夫。マーニーさんにお薬をただで譲る代わりに宿代を少し浮かしてもらうことになったから」
「なんでぇ、ちゃっかり交渉済みか」
この世界でのお薬は高級品だ。
特定の病気の薬ではないから高額ではないけれど、簡単な常備薬でさえ一式揃えようと思えばそれなりの値になる。
「ヴィルもいる? 安くしておくけど」
「品質がわからねぇうちは買い叩くぞ?」
「それでいいよ。今は練習も兼ねて作っているのもあるし、あっても邪魔になるからね」
「じゃあ後で商品持ってウチに来い」
ヴィルにならただで渡してもいいんだけど、商人であるヴィルはタダでの取引を嫌う。
二束三文であっても買取してもらおう。
「で、そのおっさんとこにはいつまで通うつもりなんだ?」
「使い物にならなければすぐに追い出すとは言ってたけど……俺としては薬師の基礎知識は全部叩き込んで欲しいとは思っているからなぁ。どれくらいかかるものなんだろ?」
「基礎知識全部、ねぇ? そりゃ一日二日ではないことだけは確かだろうが……全くの無知でもねぇんだろ? 数ヶ月ってとこか?」
「それくらいはかかるだろうね。何も知らない状態からなら年単位になるだろうけれど」
まぁ、リョクの森を復活させるという目的があるとは言えアテはない旅だからな。
のんびり行こうかなと思ってたし、一、二年かかってもいいかなとも思っているんだけど。
ここはシーディア大陸と違って動きやすいからな。
俺は見た目はクロイド寄りみたいだし。しばらくは諸島、で、クロイドルス大陸を回るのは問題なさそう。
ヘリオスさんも話せばわかる人だし、たまにお休みをもらってあちこち行くってのをしばらくの活動目標にしようかな。
「ま、しばらくはマーニーさんにご厄介になるつもり。ヴィルももうしばらくよろしくお願いします」
「おう」
困ったときのヴィルが側にいるのは心強いな。
明日からはロウも連れて行こう。
一応ヘリオスさんには許可をもらったんだ。躾がきちんとなっているなら連れてきてもいいって。ただし、薬草を食べたりイタズラしたりということがあれば即刻退場させられる。だからスイは連れて行かない。ちゃっかりマーニーさん達に気に入られて食堂に入り浸っている。
ちなみにキッチンには入らないので追い出されてはいないらしい。カウンター横の植物の上が定位置になっている。
ちゃんと迷惑料払ったよ!!
気にしなくていいって言われたけど、お菓子とかずっと食べてるからさ。気になるじゃん?
そういえば、諸島にはお箸の文化があったんだよね。
すごく助かりました。やっぱこっちのほうが食べやすい。マーニーさんに出来ればお箸でってお願いしといた。
「さて、と。今日はもう寝るよ。明日は朝から顔出す予定だしね」
森で生活してた時は、それこそ日が上る頃に起きて活動し、日が沈んでしばらくしたら寝るって感じだった。
人圏内での生活が始まってからは俺もロウたちも俺に合わせて活動時間を変えたけれど、基本的には朝が早いほうがロウの調子はいいみたいだ。
「じゃ、おやすみだな」
「うん、おやすみ」
ヴィルに手を振って部屋に戻る。
急ぎの旅でも大きな使命を背負った旅でもない。
後悔だけはしないように。
リョクの言葉を思い出しながら目を閉じた。
本編、次回から章を変える予定なのでやたら短くなった。
明日に幕間を更新してから、次の章開始です。




