第三十四話
あー、久しぶり過ぎてシンの性格が変になってる(汗)
薬師の名前はヘリオスさんというらしい。
おっちゃんと爺さんの間くらいの年齢みたいで、爺さん扱いすると怒るから気をつけるようにとか言われてしまった。
本来はどうするものなのかよくわからないのだけど、向こうの世界の基準で考えるならお世話になる(かもしれない)先に挨拶に行くのなら菓子折り必須だよね。そう思ってお土産を探しに街をウロウロ。
「うーん、何がいいんだろう?」
爺さん、もといおっちゃんの喜びそうなものとはなんぞ?
あ、露店やってる。
おー、何だろうこれ。何に使うのかさっぱり分からないものが結構あるな。
あれはアクセサリー?
爺さん、じゃなくておっちゃんには要らんものだな。
あ、武器も売ってる。なんというか、普通に剣とか売られているのを見るとこう……現実感がないというか、うーん。これをいうと魔物とかも現実感ないんだけど。
「普通に菓子とか食べ物の方がいいのかな?」
無難っちゃ無難か。
一応ヴィルのとこに顔出して聞いてみるかな。雑貨屋でいろんなもの扱ってるみたいだし。
「ヘリオス? んー、そんなおっさんいたっけなぁ?」
「町外れに住んでるみたいだよ。それで一度行ってみようと思ってるんだけど、何か持っていったほうがいいかな、と。お菓子とか」
せっかくなのでヴィルと夕食を一緒に取ることにして相談をしてみる。
最初はそんなもんいらんだろう、とかなり適当な返事をされてしまったけど、おっさんなら酒の方がいいんじゃないのかということでお酒を持っていくことになってしまった。当然、お酒の良し悪しはわからないのでその辺りはヴィルに一任である。
「俺もついていこうか?」
「いやぁ、流石にそれは甘えすぎだし、大丈夫だよ。心配してくれてありがと」
不安はあるけど、何とかなるでしょ。
俺も結構図太くなったし。
「なぁんかお前って放っておけねぇつか……ま、過保護は良くないよな。気をつけて行って来い」
「うん」
取りあえず突撃あるのみ。
飛び込み営業の人の心境ってこんな感じかな?
言われた通りの場所を目指して一時間ほど。やっとそれっぽい家が見えてきました。
やー、まじで町から外れた場所だ。
簡易的な柵に囲まれてぽつりと佇む家。
取りあえずノック。
「すみませーん、誰かいらっしゃいますかー?」
しばし待つ。
が、返事なし。これは留守か? それとも居留守か?
「ヘリオスさーん、いませんかー? いーまーせーんーかー!? おーい」
「うるっさいわ!!」
「わっ」
中から声が聞こえた!?
「……えーと、ヘリオスさんですか?」
「…………」
わかりやすい無視きたー
これは怒らせたのかなぁ? だろうねぇ。嫌だなぁ、気難しい人。
でもここで帰ったら嫌がらせになるし。
「開けてもいいですかー?」
「……」
「開けちゃいますねー……って、開かないっ!?」
人の家の扉を勝手に開けるという、以前では考えられない暴挙に出てみるも、ガンっといういい音が響くだけで扉は開きませんでした。
なんてこったい、と遠い目をしてみる。
「……っさっきからうるさいぞ!? 何なんだね!?」
と思ったら内側からすんげぇ勢いで扉が開いた!!
ちょ、危ない!!
咄嗟に後ろに下がったけど、鼻先に扉がかすった、かすったからね!?
「なんじゃ、小僧?」
出てきた人は、確かに聞いたとおり。おっちゃんとお爺ちゃんの間くらいの年齢。
ちょっと髪の毛と髭がぼさっとしている目つきの悪い人だ。
「あ、どうも。初めまして。シンっていいます。ヘリオスさんでお間違いないですか?」
ぎろり、と睨まれた。
こういう人は気にせずさくさく話を進めるに限る。
「紹介状があるのでまずはこちらを。俺、薬師を目指してまして、ちょっと雇ってもらえないかなっと思ったんですがどうですかね?」
紹介状を出すと、ひったくるようにして取られた。
うぅむ、これは確かに街に馴染めないわ。
「ふん」
紹介状に目を通したあと、家の中に戻っていった。
んん?
俺は置いてけぼりですか、入っていいんですか? あとに続いて入っていいことにしよう。
「おじゃましまーす」
「今は忙しいんじゃ。適当に待て」
「わかりました」
ちょっと失礼になるだろうけど、室内をキョロキョロ見渡す。
家の中に入った時から草の匂いがすごいな。草をすり潰した青臭い匂いとかすかなアルコールの匂い。
ヘリオスさんは奥の部屋に行ってしまったので、取りあえず通された部屋の椅子に腰掛けておく。適当にさせてもらっておこう。
奥の部屋からゴリゴリゴリと草をすり潰す音が聞こえてくる。
客をほったらかして、と普通なら思うだろうけど中には草が乾燥させずに、十分水気を含んでいる時にすり潰さないと効果がないものもあることを知っているので下手に文句は言えない。おとなしく待つしかないだろう。家の中に入れてくれただけ思ったよりも良心的かもしれない。
そうやって待つことおそらく数十分。
「それで、小僧。何をしに来よった?」
奥の部屋から帰ってくるなりそんなことを言った。
紹介状を読んだのではなかったのか。いや、本人の口からきちんと聞きたいのか。
「ここは年中人手不足だとお聞きしまして、少しの期間雇っていただけませんか?」
「人手不足だが足でまといはいらん」
「体力にはまだ多少の自信があります! きっと役に立つこと間違いなし」
「賃金もあんまりないしな」
「お金よりも薬師としての知識が欲しいです!!」
「うるさいのは嫌いだ」
「それは慣れです、なるようになれ!」
「…………」
我ながら図々しいことは承知の上だ。
おかしいな、俺はこんな性格じゃなかったはずなのにいつの間に……まぁ、これもこの世界で生きるための知恵だということで。
「あ、そうだ。これ、よかったらどうぞ。お口に合うかわかりませんが」
すっかり忘れていた手土産を今更ながらお渡しする。といっても、机の上に置いてあるものを少しヘリオスさんの方へ押しただけだ。
「む……」
それをちらりと一瞥。
しばし後。
「使いものにならなければすぐに追い出す」
「ありがとうございます!」
ヘリオスさん、案外ちょろい……
「ふん」
いかにも機嫌が悪いですよ的な態度でいそいそお土産の品をしまっている姿はなんというか、いっそ微笑ましいものがあるな。
もちろん言わないけど。気づかないふりも優しさのうち、と。
ぼちぼち更新。亀更新。




