第二十六話
かなり短いですが、キリのいいところだったので投下。
翌朝、ラッセンに起こされる前に目覚めた。
別に危険を察知したわけでもなく、単純に早くに目が覚めただけだ。
うす明るい周囲に、僅かだが霧がかかっていた。
どことなく冷えを感じたのはこのせいか。
「お? 起きたのか?」
もぞもぞとしているのに気づいたのだろう。ラッセンが潜めた声で言う。
俺は「ん」と軽く頷き、欠伸を噛み殺しながらゆっくりと上体を起こした。俺が眠っている間には何もなかったようだ。
「おはよ。水、残ってる?」
「ん? あぁ、少しな」
昨日、こっそりと継ぎ足した水もほとんどなくなっていた。
水筒一つに三人と一匹だもんな。当然といえば当然か。
唇を湿らせる程度に水を飲む。本当はコップ一杯分くらいは飲みたいところだけど、今は我慢だ。
特に俺の場合は、飲もうと思えばいつでも、てな状態だし。
中に残っている水は、昨日手早く作った葉っぱの簡易お椀とでも言おうか。
それに移して、空の水筒を手にする。
「よっと」
立ち上がって、思い切り伸び。深呼吸も忘れない。
うん。木の多い場所の空気はやっぱりいいな。
「さて、と。サステナさんが起きる前に水と食料の確保に行ってくるよ。すぐ戻る」
「そうだな。あんまり遠くに行くなよ、なくても怒らねぇし」
「うん。戻ってこれなくなるようなヘマはしないつもり」
自然と嘘を吐くことに思うことがないわけではないけれど、罪悪感のようなもやもやとした感情は慣れて少しずつ薄らいでいく。
リョクといる時には必要のなかった嘘。
仕方のないことだとして、けれど必要以上に嘘をつきたくなくて。
微妙に嘘ではないような曖昧な言葉を選ぶことが多くなった。こうやって人は狡い大人になっていくんだなとかちらっと思う。
少し歩いてから水筒に少しだけ水を入れて飲む。便利すぎて何だか申し訳ない気持ちになるよ。
補給は帰り道。
水って案外重いからねぇ。
食べ物は果物と木の実。
草は調理の手間を考えてやめておくことにする。
しばらく遭難するならともかく、それほど掛からずに街道に出られると思うし……それならサステナさんの精神上さっさと出てしまう方が良さそう。
「きゅきゅ~」
「ん? おぉ、おかえり~」
頭上から聞き覚えのある鳴き声、と見上げるとスイが風に乗って優雅に降りてくるところだった。
手を広げて着地場所を作ると、素直に手のひらに降りてきた。
「あれ、手紙?」
スイが咥えていたものを差し出す。
この際、ちょっとヨダレらしきものが付いているのは多めに見ようではないか。
どれどれ……しばらくは街道に留まってくれるってことか。
なら急いだほうがいいな。
「ご苦労さま、スイ。いい子いい子」
「きゅぅ~ん」
水を飲ませ、撫でてやると嬉しそうに鳴く。
うぅ、こいつのこういう所が可愛いんだよな。
「さて。それじゃ、さっさと戻りますかね。ロウも起きてるだろうし」
「きゅ」
水筒を満杯にして早すぎる戻りにならないような歩調で戻る。
疲れているだろうサステナさんもラッセンも、街道でみんなが待ってると分かればテンションも上がるだろう。
俺が戻ると、サステナさんはまだ寝ていたのですぐに起こし、軽く食事をとってから移動することにした。
街道で待っていてくれているなら、ちょっとペースアップしてでも急ぐほうがいい。
二人の不安そうな表情も昨日よりも幾分マシだ。
あまり無駄口も叩かずに進むことを優先する。
ロウに乗っているサステナさんも空気を察してか口を開かなかった。
呑気なのはスイだけで、こいつは俺のポケットで惰眠を貪っている。
とはいっても、手紙を届けに来てくれたので仕方ないわけだけど。
そうして日が中天に差し掛かかる少し前。
ようやく、雑木林のような場所を抜けて街道に出たのだ。
「……っしゃー!」
たまらずラッセンがガッツポーズで声を上げる。
サステナさんは今にも泣きそうなほどほっとした表情をしていた。
……大げさだなぁ、なんて言う勇気はなかったさ。
「とりあえず一安心だね。スイ、どっちの方向にヴィル達がいるかわかる?」
偶然か、街道に出た俺たちの纏う空気が変わったからか、スイが起きてきたので訪ねてみると「きゅ!」と得意げに鳴く。
どうやらわかるらしく、右……港町方面へと向いた。
もう少し先にいるらしい。
「どうする? 休憩する? もう少し歩く?」
「そうだな……出来ればもう少し歩きたいんだが……どうですか?」
「私も出来れば早く合流してしまいたいので」
決まりだね。
少しだけペースを落として再度歩き出す。
ヴィル達に追いついたのは、それから数十分たったころだった。




