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臆病なノラネコの見つけ方

翌日。

私はいつも余裕をもって学校に向かっている。

優等生と言われればそうなのだけど、中学の時から早起きの習慣がついてしまったせいでもある。


「おはよーございまーす…」


誰もいない教室に向かって挨拶するのも癖になっている。

そして誰もいない教室で私がやることは一つ。

教室の真ん中に近い席に座りって予習開始。


「はあー…数学とか今日は朝から憂鬱だなぁ」


人がいないので独り言も呟き放題だ。

かといって調子に乗って呟きまくっていると人が来たとき赤面ものなのだが。


「うぃーす。お、今日も早いねー!」


「そして相変わらず可愛いねー!」


ほらきた。


「あははは…おはよー」


野球部の二人――名前は覚えてないが――制服のボタンを外した格好で教室に入ってきた。

私は苦笑いで二人に挨拶を返す。


それを皮切りに一人、また一人と教室に人が入ってくる。

私の静寂な時間はすぐさま騒がしい談笑の時間へと変わった。


それでも私はノートを書く手を止めず、ただひたすらに教科書と睨めっこしながら予習を進めていった。


「?」


ふと私は視線を感じて顔を上げた。


「にひひ。おはよー」


「…おはよう琴音」


このクラスで私に一番初めに声を掛けた人、三毛上琴音(ミケガミ コトネ)

みんなからはミケちゃんとか呼ばれていたりする女の子。


「凛はいつも勉強していて偉いねー」


「そんなことないよ。私はみんなみたいに勉強する時間がないから朝やってるだけ」


視線の主が判明したところで、私はまたノートを書く手を動かし始めた。

家に帰れば家事に追われ、勉強する暇すらない。

だから私はこうやって学校にいる間に、暇さえあれば勉強をしている訳だ。


「琴音、そろそろ席に戻らないと怒られるよ」


「はーい」


視線を上げないまま琴音を諭すと、琴音は素直に自分の席へと戻っていった。

そして頃合を見計らったかのように担任が教室に入ってきた。

しばしの静寂が教室を包む。


"面倒だから起立と礼はなしだ"


入学当初、担任が私たちに開口一番に言った言葉。

その風貌からして、私は真っ先にこの担任はダメ人間だと思った。

私の読み通り、挨拶の後クラス委員長が決まった瞬間にすべてを押し付けたのはいうまでも無い。

まあそのおかげで私は勉強を中断せずにホームルームの時間全てを勉強に費やせるわけで。


「ふぁあ…」


突如私を襲った欠伸は、急激な眠気の合図だった。

予習まだ残っているんだけど…まあ既にかなり先までやってあるし…ちょっとぐらい…。

コクリ、コクリと首を揺らし、視界がぼやける。


――パンッ。


まるで風船が割れたような音が響き、私はその音でビクリと身体を起こした。

いつの間にかHRも終わり、私の前の席には琴音が座っていた。


「やっと気づいたー」


琴音が手を合わせてるのを見て、さっきのはこの子が手を叩いたのだと気づいた。


「え?何か、あったの?」


「凛って何回も呼んでるのに気づいてくれないんだもん」


「ああ、ごめん…んー」


その場で伸びをして教室の掛け時計を確認する。

最初の授業開始まで15分といったところか。

視線を落とすと琴音がジーッと私を見つめていた。


「また怒られたんでしょ」


「うにー、ひょんなことないもん」


ニヤっと笑いながら仕返しに琴音の両頬を引っ張ると、不貞腐れた様な声が返ってきた。


琴音は担任によく怒られることがある。

ダメ人間に怒られるのだから相当な理由かと思いきや、大体が授業中に寝るなだとか、ノートに変な絵を書くなとかそういったことばかり。

そして担任に怒られるとこうして私の前に来ては構って欲しそうに見つめるのだ。


「そろそろ真面目にやらないと、テスト前になって私に泣きついたって知らん振りするわよー?」


「ひょれはこまる…」


頬から手を離し、しゅんとした顔の琴音の頭を撫でた。


「だったら今日ぐらいはちゃんとノート取りなさい」


「取ったらテスト勉強手伝ってくれる!?」


「まぁ…考えとく」


ぱぁっと満面の笑顔を浮かべ、琴音は嬉しそうに両手をブンブン振っていた。


――チリンチリン。


私は咄嗟に手を離し、廊下を見つめた。

そしてその音を追いかけるように急いで廊下に出た。


「そんなに慌ててどうしたの凛?」


それは昨日聞いた鈴の音だった。

けれど廊下にはたくさんの生徒がいて、誰がその鈴を持っているか見分けるなんて不可能だった。


「ううん、なんでもないよ。戻ろ」


私は何をやっているんだろう。

仮にもしその鈴の持ち主が見つかったとして何が出来るんだろうか。


「変な凛」


「琴音には言われたくない言葉」


「む、聞き捨てならぬ!」


結局その後鈴の音は聞こえず、私は琴音を軽くあしらいながら昼休みまで過ごしたのだった。


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