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天狗に野球を教わった少年

作者: こたつぬま
掲載日:2026/09/29

オレの名前はマイケル。35才。

メジャーリーグの1番人気チーム・ニューヨークパンダスの球団スカウトをしている。

元野球選手でパンダスに長く所属してピッチャーをやっていた。

レジェンドとまではいかないが、スター選手として活躍していた時期もある。

陽気な性格で新人選手の素質を見抜く眼力もあるんでぜひ球団スカウトにって誘われた。


今日はロサンゼルスで行われるMLB合同トライアウト(入団テスト)の日だ。

参加費無料、事前審査なしってことで500人も集まっている。

最高新記録だな。

オレは球団スカウトの仲間2人といい選手がいないか探しにきた。

1月なのでさみーし雪もちらついてる。ポケットの中のホッカイロをもむ。

テスト生の準備運動に混じりたい気分だぜ。


震えているとさっそく50メートル走がはじまった。

走力はだいじだからな。

めざせ盗塁王だ。

夢見る若者が全力ダッシュする姿は見ていて気持ちがいい。

一瞬一瞬に人生がかかってるんだもんな。


オレは大学野球で活躍してドラフトで指名を受けてプロになれたが、もしプロになれなかったらトライアウトに参加していただろう。

大学野球では敵なしだったから血気盛んでだれにも負けない自信があった。

プロの世界に入ってすぐに天狗の鼻をへし折られたが、いいコーチのおかげで実力がぐんぐんと伸び、スター選手の一員となる。

ここにも未来のスターが混じっているはずだ。

かならずダイヤの原石を見つけ出す。


まばたき厳禁で観察しているとひときわ小さなテスト生が目につく。

アジア人だ。坊主でかわいい顔をしている。

きゃしゃだから小学生ぐらいに見えるな。


「がんばれ!ルーキー!」


外野の選手からひやかしの声がかかった。

ドッと笑いが起きた。

オレも思わず笑ってしまう。

ピストルの合図でいっせいに走り出す。

少年はスタートから一気に抜け出した。


疾風のようにはやい。忍者の末裔(まつえい)か?


一位でゴールした瞬間、拍手が巻き起こり歓声が上がる。

スカウト陣は記憶係に群らがった。

囲まれた記録係は大声で少年のタイムを叫ぶ。

メジャーリーグでもトップクラスの走力だな。

スカウト陣の視線は少年に向けられるようになる。

つぎは遠投だ。

群衆の注目を一身に浴びるなか少年の投げたボールはぜんぜん落ちてこない。


わーお!いったいどこまで飛んでくんだ?


オレも肩が強くキャッチボールで金が取れるとまで言わしめたが、オレ以上の肩だ。


「ワンダフルジョー!」


だれかが叫んだ。

ジョーという名前なのか。

アメリカ人みたいな名前だな。

プロになればファンからおもしろがられて親しまれるだろう。

こうなればもはやスカウト陣は少年しか目に入らない。


つぎはポジション別のスキル評価だ。

少年はピッチャーを希望した。

あの強肩だ。どんな球を投げるのか楽しみだな。

みんなそわそわして少年の投げる番を待つ。

いよいよ少年が投げた。

待ちに待った瞬間だ。

小さな体をめいいっぱいひねって放たれたボールは矢のような速さでミットにおさまった。

ミットから煙が出てるような錯覚を覚える。


トルネード投法だ!


大歓迎が起こった。

まちがいなく160キロは出てる。

きれいな縦回転で回転数も多い。


「おいおい!がんばれ!ルーキーが現実になったぜ!」


「こりゃ争奪戦だ。いくら積んでもうちに来てもらおう!」


いっしょに来たスカウト仲間も興奮を隠せない。

ジョーは続けてキレのあるカーブとフォークを投じる。


完璧だ!


次々に三振するバッターの姿が頭に浮かぶ。

ジョーは4球目を投げる。

低い位置から腕をすくい上げるように投げたボールはズバンッ!とミットにおさまった。


なんてこったアンダースローだ!


2種類の投げ方ができるのか。とんでもない逸材だな。

5球目6球目はシンカーとスライダーを投げた。

いい球だ。これも三振の山を築くだろう。

おどろくのはまだ早かった。

8球目ジョーは横投げサイドスローで投げる。


うおっ!


サイドスローまでいけるとは。

9球目はチェンジアップを投げる。

緩急がすごい。

10球目。ジョーは斜め上から投げるスリークォーターを披露した。

11球目はシュートを投げる。

スカウト陣はあんぐり口を開けている。

完成度の高い4種類の投げ方ができる

こんなの打てっこない。

これ以上、驚いたら心臓が止まるね。


スカウト陣は試験官にピッチャーには必要ない打撃テストをジョーに受けさせるように懇願(こんがん)した。

試験官がジョーに確認すると快く引き受ける。

打席に入ったジョーは隙のないバッティンググでホームランを連発した。

ホームラン競争なら優勝だ。

打球速度も角度もすばらしい。

オレの心臓は止まった。

というのはアメリカンジョークでそれぐらい驚いた。

心臓はバクバク言っている。

胸が熱くて寒さなんてもう感じない。


最後に紅白戦がはじまった。

ジョーの球は思った通りだれも打てない。

一球ごとに投げ方を変えてバッターにボールのスピードと軌道に慣れさせないようにしている。

投げ方によってボールのスピードは微妙に違うし軌道はぜんぜんちがう。

最高のピッチャーだ。


テストが終わるとスカウト陣はジョーに群がった。

オレもその1人だ。

名刺を渡して離れていく。


契約金はいくらでも出す!


億万長者通りに豪邸を用意して本拠地スタジアム内に選手専用のプライベートルームを用意する!


恋人が観戦するためのラグジュアリーなVIPスイートボックス席も用意する!


とジョーに伝えた。

契約さえしてくれるなら球団会長を説得して豪華オプションをつければいい。


解散となりオレは仲間2人と空港に向かう。


「うちの球団を選んでくれたらいいなぁ」

「こればかりは運次第だな」

「神様仏様、どうかお願いします!」


その日の晩、ジョーのほれぼれするプレーを思い返して休んでいると携帯の電話が鳴った。

なまりのある英語が聞こえてくる。


「おばんです。イナバジョーだす。パンダスでお世話になろうがと思いまして電話しまじた」


奇跡だ!


ワールドシリーズ優勝はもう間違いない!


観客動員数も最高を記録するだろう。

天才少年のパンダス加入が決定したことを仲間のスカウトに伝えると飛んで喜んだ。

かつてない巨額の契約金が用意されて約束通り豪華オプションもつく。

新人にしては異例だ。

だがいくらでもお釣りが来る。


ニューヨークタイムズ一面に「忍者少年パンダスに電撃加入ッ!」の見出しが載った。

ジョーはパンダスのユニフォームに身を包み笑顔でピースサインしている。

世界中が大騒ぎだ。


「おいおいまだほんの子どもじゃないか?スカウトは正気か?」


「リアルがんばれ!ルーキーやん!」


トライアウトに参加したほかのテスト生や見学に行ったスカウトのうわさだけしか情報がないのでファンはジョーの実力を想像するしかない。

追い打ちをかけるように球団から公開されたジョーの個人情報は神秘的でよりいっそうファンの想像力を刺激した。


因幡穰(いなばじょう) 16才 150センチ 右打ち右投げ 幼少期より天狗に野球を習う。チームでの野球経験なし。


ネットはざわつく。


「てってっ天狗ぅ?」


「源義経かよwww」


「神通力でボールを曲げんのか?」


ジョーは開幕戦のピッチャーに指名された。

開幕戦は大入満員でチケットは高騰する。

みんな近くからジョーを観たいんだ。


ジョーが登場するとまだ何もしていないのに熱気に包まれる。

国歌斉唱で整列すると身長差がありすぎて巨人に囲まれた小人のようだ。

試合が始まるとジョーのピッチングはまさに神業で並み居る強打者たちをバッタバッタと三振に切って落とした。

ピッチャーなのに全打席ホームランという奇跡も起こす。

ジョーが何かするたびにスタジアムは何度も揺れた。

ピッチャー返しされた観客席に突き刺さるであろう軌道の弾丸ライナーを飛び上がってキャッチした時なんて歓声が鳴り止まずしばらく試合が中断した。


反射神経とジャンプ力がすばらしい!


試合は大差でパンダスの勝利だ。

ジョーのグッズは完売する。

観客はみんなジョーの虜となりうっとりとした顔で帰宅した。


ジョーの伝説はこの日からはじまる。

ピッチャーとして先発する日は完全試合とノーヒットノーランの連発。

試合がない日は代打でホームランを連発。

ジョーのおかげでぶっちぎりの優勝、ワールドシリーズもパンダスが優勝した。

オレたちスカウトにもボーナスが出てジョーさまさまだぜ。

観客動員数はうなぎのぼりで各国から放映権料による収入も爆上がりだ。

ジョーによる経済効果はすさまじい恩恵をメジャーリーグにもたらす。

ジョーは球界の英雄となった。


しかし惜しいことにパンダスとは1年契約だ。

その理由もすごい。


「全球団で優勝しだいんで。日本にもいずれけえります」


ジョーならほんとうに実現しそうだ。

シーズンオフのある日、家でテレビを観ていたらジョーがインタビューを受けていた。

パツキン美女の女性アナウンサーがジョーに質問をはじめる。


「天狗に野球を習っていたというウワサはほんとうですか?」


「ほんとだ。でなかったら、こんなに活躍できねぇべ」


「くわしく聞かせてもらっていいですか?」


「んだ」


「天狗との出会いはいつ?」


「小1の頃さね。オラはすげえ田舎で育って学校まで毎日、片道10キロ歩いて通ってたんだ。途中の山に広い川があってそこで石を投げて遊んでた。遠投したり水切りしたりな。そしたら、ある日、天狗が後ろに立ってるでねぇか。オラぁおどろいたねぇ。ぽかんとしているオラに天狗は遠くに投げるコツと水切りのコツを教えてくれたべさ。翌日、天狗はボールとグローブをくれて山ん中でキャッチボールをしたべ」


「だれにも気づかれませんでした?」


「山奥だったんでな。だーれも来んかったさ。竹藪(たけやぶ)で手裏剣を投げる練習もさせられて竹をよけて目当ての竹に当たるように曲げる練習が変化球のキレにつながってんべ。まっすぐ投げる練習の時は深く突き刺すために回転数を上げる投げ方を教わったべ」


「手裏剣術が投球術につながっていたんですね。バットはもらわなかったんですか?」


「バットなんてトライアウトではじめて触ったべよ。天狗は日本刀を持ってきてそれで2人でチャンバラしてたんだ。寸止めだけんどな。真剣をよける動きと急所を狙って刀を振る特訓がバッターボックスでの集中力につながってんな。オラは打席では命のやり取りだと思っていづも勝負しでる」


「相手チームの選手からたまにジョー選手の姿が天狗に見えるという感想もありました」


「長くいっしょにいたから天狗の雰囲気が移ったんかもしれんべなぁ。オラは天狗じゃねぇべ。謙虚だべ」


「アメリカ人には分かりづらいジョークですね。いい気になったりうぬぼれることを日本では天狗になるといいます」


「神通力も教わったべ。気合いを入れて念じると曲がるようになったから野球でも使わせてもらってるべよ」


「じつに興味深いです。いったいどんな訓練を?」


「切り株の上に置いた丸石に手をかざして動かすだけだべよ。やる前に川に全身浸かって身を清めて山の神様にお祈りして九字切りしてからだけんどな。霊力を高める儀式とか言ってたべ。オラはほんのちょこっとだけ動かせるようになったべ。まあボールを動かすにはじゅうぶんだべ」


「いまも登板前に儀式をされてるんですか?」


「朝、シャワーの水を浴びて山のほうさ向いて山の神様にお祈りして九字切りしてんべよ」


「跳躍力がすごいですけど、何か秘訣が?」


「あれは飛行の術だべ。木に走って登ったり伸びるタケノコをジャンプさせられたりしてるうちに高く跳べるようになったべ」


「義経の八艘飛び(はっそうとび)をほうふつとさせるジャンプ力でした!」


「鞍馬山で義経に剣術を教えたのはオレだって言ってたべなぁ。飽きて引っ越したとか。葉っぱでできた天狗のうちわが欲しかったけどくれんかったべ。だけんど一度使わせてもらって強くあおぎすぎたんかどえれえ威力でな。怖くなってもう2度と触らんかったべ」


「天狗は野球お好きなんですか?


「好きみてえだな。姿を消してよく空から見てるらしいべ。いまもオラの活躍を見てるんじゃねぇべか。16歳の誕生日に天狗からおまえに教えることはもうない。メジャーリーグへ行けって言われたべ。天狗は旅にでるといってどこかさ飛んで行った。そんで山を降りて渡米したんじゃ。タケノコやマツタケや栗や鮎を売った金でグローブとユニフォーム、チケットを買ってな」


「なぜ日本野球ではなくメジャーリーグに行けと?」


「鍛えた愛弟子が世界で通用するか観たかったんじゃねえべか」


「天狗は故郷の山に戻っていると思いますか?」


「わがらん。いたとしてもオラの前にしか姿を現さんじゃろうな」


あとは好きな食べ物や動物、好みの女性のタイプを聞いてインタビューは終わる。

オレはソファーで腕組みしながら天狗のことを考えていた。

春にジョーが天狗に野球を習ったと聞いて天狗についてネットで調べた。


空想の生き物だと思っていたが実在したのか?


ジョーが田舎育ちの純朴な少年であることはあきらかだしうそをついているようにも見えない。

それに今年のジョーの活躍ぶりを見たら天狗の存在を信じざるを得ない。

みんなはどう思った?

snsを確認する。


「キツネに化かされてたんじゃねーか?天狗なんておらん」


「天狗は信じないでキツネが人を化かす伝承は信じるんだ。ふーん」


「義経に剣術を教えた天狗の正体は鬼一法眼(きいちほうげん、おにいちほうがんとも)という法師陰陽師であり、文武両道の兵法の達人だよ」


「鬼一法眼がなんで現代にいるんだよ?」


「法眼には娘がいたし子孫だろ」


「日本の元プロ野球選手が天狗の正体。山奥に引きこもって木こりでもやってたところを逸材を発見して鍛えたんだ。天狗の面で正体を隠したのは野球賭博の黒い霧で引退させられた選手だったからだな。たぶん!」


さまざまな意見がある。

個人的には天狗に化けた元プロ野球選手というのが有力な線だ。

最後は飛んで行ったらしいがヘリでワイヤーに吊ってもらったにちがいない。

財力があるのは契約金を大事に貯金していたのかもしれん。

日本人は真面目だ。

メジャーリーガーは何百億円もらってもみんな破産するがね。

ジョーは純粋だから天狗だと信じてだまされたに違いない。

神通力でボールが動かせるのは思い込みだな。


オレも現役時代、曲がれ!と念じたらいつも以上にボールが曲がった気がした。

ネットには天狗の正体を探るネット探偵が湧いて来た。

そのうちだれなのか特定されるかもしれない。

だれだか知らんがジョーを鍛えてくれてありがとう。

ジョーは最高の野球選手だ。

オレは手を合わせ天狗に感謝した。


◯⚫️◯


秘密の通路から地下室に入ったボクはバットを台の上に置く。

棚に置いてるライターぐらいの青い小型リモコンの開ボタンを押すとバットがウィインと開く。

中は高級時計の中身ぐらい精密な機械だ。

ロケットランチャーの弾が当たっても壊れることはないけど、いちおうね。

確認するとやっぱり不具合はどこにも見られない。

閉のボタンを押して閉める。


今度は赤白のテントウムシをポケットから取り出した。

棚に置いてるもうひとつの赤い小型リモコンで開く。

顕微鏡で中を確認する。

こちらも中身は精密機械だ。不具合は何もなかった。


バットもテントウムシもイカサマの道具だ。

この改造バットはどんなボールでもとらえてホームランにしてしまうすごいバットだ。

絶対に折れないし開けられない。

レントゲンを撮っても普通のバットのように映る細工をほどこしている。


赤白のテントウムシはボールにくっつくと打者のバットを回避してくれる。

怪力のテントウムシがボールを引っ張って飛んでると思ってくれていい。

猛スピードが出るのもきれいな回転がかかるのもテントウムシのおかげだ。

ボールは縫い目が赤くてそれ以外は白いから赤白にすれば擬態できる。

バットと同じで絶対、開かないし壊れない。レントゲンでは普通の虫に写る。


小学生の頃から研究してボクが開発した

研究資金は父親が残してくれた多額の財産だ。

バットとテントウムシは2つとも指紋認証でボク以外には起動できない。

ボクが触れてない時間が長いとすぐシャットダウンする。

ボクだけのイカサマ専用道具だ。

たまに手袋をつけてわざとバットを起動させず三振したりテントウムシをポッケに入れたままにして打たせたりしてる。

イカサマを疑われないように最低限の配慮だ。


ホームランボールのジャンピングキャャッチはまぐれだ。2度はないね。


バットとテントウムシを除菌ウエットティッシュでふく。

感謝の祈りを捧げて地下室をあとにした。


リビングのソファーに寝そべる。

ボクの父親はプロ野球チームのピッチャーをやっていた。

ある年、因縁のライバルチームからめったうちを喰らう。

父は練習に励んだけど、それでもめったうちは止まらなかった。

日本一がかかった日本シリーズでもめったうちにされて戦犯にされてしまう。

その年、戦力外通告を受けて父は引退した。

もう自分の実力はプロでは通用しないと思ったんだ。


しかし、5年後、じつはライバルチームがサイン盗みをしていたことがあきらかになった。

高性能カメラで観客席からキャッチャーのサインを盗んでバッターに知らせていたんだ。

ベンチからのかけ声の種類やホイッスルを鳴らす回数、ベンチ裏のゴミ箱を棒で叩いてドンと音を鳴らす回数で球種を教えていたらしい。

内部告発ですべて暴露された。

父は激怒して叫んだ。


日本シリーズの優勝賞金、トロフィー、盾を返還しろ!

イカサマで打率を上げて契約金が上がった選手は契約金を返せ!

イカサマに関わった連中は全員野球界から永久追放しろ!

自分への金銭的な補償をしろ!


しかし、なにひとつ実現されることはなかった。

みんな知らん顔だ。

監督も変わってるし引退した選手もいるからもう時効って扱いだ。


ファンはバッテリーの工夫が足りない。

サイン盗みは当たり前の戦術。

と言って父を擁護しなかった。

来る球がわかっていればプロなら8割打てるんだからドーピング以上のイカサマなのに罰が与えられないなんてまちがってる。

父はショックで酒に溺れアルコール性肝疾患で早死にする。

見破られなければイカサマじゃないし見破られてもなんの償いもしなくていい。

野球を知らない人間からしたら不正に手を染めたチームの名前や選手たちの名前なんて覚えないから名誉が汚されることもない。

熱心な野球ファンでも不正に手を染めた選手の名前なんてもう忘れてる。

1人の野球選手が引退に追い込まれ本来得るはずだった名誉や栄光や契約金を失ったのにイカサマした側はなんの罰も受けてない。


ボクは父の葬儀で思った。

ばれないイカサマで野球界をコケにしてやろう。

老人になるまでプレイして数千億円以上稼いでから暴露してやる。

けど、ボクは稼いだ契約金も返さないしトロフィーをはじめとした記念品も返還しない。

これがボクの野球界に対する復讐だ。


メジャーリーグでもサイン不正問題はあって選手にお咎めなしだったようだし父はメジャーでプレイしたい夢を持っていたので先にメジャーリーグに行くことにした。

いなかっぺみたいな雰囲気で球界に登場すれば、まさか科学に精通しているとは思わないだろう。

天狗に野球を教わったというホラ話も信じてくれるはずだ。


実際、父の実家は田舎でボクは野山を駆け回って体を鍛えた。

研究室も外観が古民家なのでまさか中で科学実験をしているとはだれも思わなかっただろう。

科学については父が死んでから必死に勉強した。

海外の大学の工学部の教授に話を聞きに行ったりして知識を蓄えた。

英語を覚えたのはその時だ。


その後、ボクは公言した通り日米の全球団で優勝して100才で死ぬまで現役野球選手として活躍した。


みんな不思議に思わないのだろうか?


枯れ木のような老人がホームランをバンバン打って、三振を取りまくる。

漫画じゃないんだからさ。

天狗が実在する説と天狗の正体が元プロ野球選手説の決着はまだついてない。

ボクの故郷の山は聖地となり天狗信仰が行われている。


天狗なんているわけないのになぁ。


遺言で真実をすべて暴露しようと思ったけど、やっぱやーめた。

みんなをだましたまんま死ぬほうが復讐になる。

あの世で父といっぱいやりながら大笑いしてやろう。

おまえらの目はぜんいんふし穴だってね。

おしまい♩

“怪物”江川卓さんが天狗に野球を教わったという伝説を参考にしています。そんなバナナ

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