第98話 裏切り、からの裏切り
───その時、私はパーティー会場を抜け出し、夜のメインストリートを走っていた。何故なら、信じられないからだ…………。自身の婚約者であるレオナルドが、私ではなく隣にいたエマ(セシリー・ハイアームズ)に手を差し伸べて、ダンスに誘っていたからだ。
(どうして…………どうして…………)
ソフィアは頭の中が真っ白だった。レオナルドは言った、私を婚約者だと…………それなのに。
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何処を走っていたのか、場所はとある地区の裏通りだった。そして…………ポツポツと、夜空から雨が降り注ぐ。
「どうして…………レオナルド?」
ソフィアは夜の雨空を仰ぎ、雨水と混じった涙を流していた。
───ソフィア・マクミランだな?
その時、ソフィアの背後から黒装束のフード付きマントを着用した工作員。全身は夜を意識したように漆黒で、男性か女性か分からない。
「誰、アナタ?」
ソフィアは振り向いて尋ねる。
「一緒に来て貰おうか?」
裏通りに佇む建物の影から、同じように黒い装束を着用した工作員が3名、ゾロゾロと現れた。そして…………ソフィアは彼らに誘拐されるのである。
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ノースゲイルから南、数時間の移動距離。馬車に揺られ、そこは…………丘の上にある廃墟と化した屋敷の中だ。
「ここに入ってろ」
黒い装束の工作員は、鉄格子の牢屋にソフィアを閉じ込める。その後、立ち去る。
「もう、何なのよ…………」
ソフィアは泣きたくなる気持ちで、雨が降り注ぐ牢屋の窓から外を眺め、鉄格子を掴む。すると、ソフィアが閉じ込められる牢屋の前に歩み寄る1人のメイド。
───ソフィア様…………。
「えっ…………どうしてアナタが?」
ソフィアはこの世の終わりの如く、目の前に現れた人物に、驚愕していた。
「………ソフィア様、私は言いましたよね?周りに気をつけなさいと、私はハイアームズ公爵の工作員で、レオナルド様をノースゲイルの領主から失脚させる為に、アナタのメイドとして潜入したまでです」
ミランダは答えた。その視線は氷のように冷たく、姿勢は冷徹。
「じゃあ………初めから、私やレオナルドを騙していたの?」
「はい、最初からアナタを騙していたのです。アナタのお気楽な性格が、とても滑稽でした」
「そんな………」
ミランダの言葉に折れて涙。鉄格子を掴み、しゃがみ込ん込む。初めから、ミランダに騙されていたなんて………と、心が理解を、現実の受け入れを拒否してしまう。
「それではさようなら。これからアナタは奴隷商に引き渡されるでしょう………それまで大人しくしていて下さい」
ミランダは立ち去る。




