第80話 帰路に付く2人
───すると、一騎打ちに敗北したアーネストはレオナルドに歩み寄り、先ほどまでとは打って変わった様子で口を開くのである。
「見事だった、我が息子よ。お前の剣技を、しっかりと見させてもらったよ」
「父上こそ、素晴らしい剣でした」
互いに握手する。手を離し、アーネストは頭を下げる。
「アーネスト様っ」と、いきなり頭を下げるアーネストの姿に、アスランは思わず驚愕する。何故なら侯爵貴族が頭を下げるのは身分が高い者、それは公爵貴族や皇族しか下げない。
「そしてすまなかった、この決闘はお前達の絆を試す為に行ったまで………それだけではなく、俺がお前に厳しい躾をしたのは、立派な貴族として成長させる為だった。妻のグレースが死んだ後、悲しみに暮れるお前に、俺は何てことを………」
これまでの事を後悔し、反省するアーネスト。
「もう、いいのです。父上、アナタが俺を立派な貴族にする為だから、当時は分からなかったけど、それは仕方ない事です」
レオナルドは言った。当時の厳しい躾は、それは立派な帝国貴族としてだけではなく、領主になればさらに厳しい現実が立ちはだかり、それらを無事に乗り越えられるようにする為だ。
「レオナルド、立派になられました」
子息の成長に、涙を拭うアスラン。初めは父親が憎いや許せないと言っていたが、久方に見た親子の剣の交え合いを通じ、理解してくれたからだ。
やはり、親と子。こうして和解したのである………。
───その後、レオナルドとソフィアはアーネストの邸宅を後にし、馬に乗ってノースゲイルまで帰路につく。初めて乗る馬に、ソフィアはレオナルドの腰にしっかりと、振り落とされないように掴まるのである。
「行きはこれで来たの?」
ソフィアは尋ねる。
「まあな………馬車だと遅いから、馬を走らせたまでだ。あとな、ありがとう………」
「何が?」と、ソフィア。
「応援してくれて………あれが無かったら、負けていたかも知れない。それとな………」
「どうしたの?」
「………いや、何でもない」
レオナルドは言う。そして思い浮かべる、レオと呼ばれるのは何年振りか………その名で呼ぶのは亡くなった母親以来だ。
帰り際、レオナルドはアーネストに呼び止められ、忠告を伝えるのである。
───それとな、フリオ・ハイアームズ公爵には気をつけろ。
───フリオ・ハイアームズ公爵を?
───彼は帝国における伝統保守派の貴族だ。革新な思想で領地運営をすれば、目を付けられる。周りに気をつけ、信頼できる味方を作っておいた方が良いぞ。
アーネストは伝えたのである。




