第77話 思い出す日々
あれは20年前だろうか…………尊敬した母上が亡くなり、その後日の事だった。
「ぐっ…………」
領主館の訓練場にて、子供の頃のレオナルドは木剣のロングソードを弾かれて地面に叩きつけられ、吹っ飛ばされていた。身体中は傷だらけ、痛みと悔しさ、あと…………。
「立てっ!!」
同じく木剣のロングソードを構える父のアーネストは怒号を響かせる。父の威圧、母上の死と言う悲しみにより、尻もちを付いているレオナルドの瞳からは涙がこぼれ落ちる。
思わず見守るアスランは駆け寄り。
「旦那様、やり過ぎでございます。レオナルド様は尊敬する母上が亡くなって悲しい中、いきなりこんな事はあまりにも」
「アスラン、これは躾だ。息子を強く、そして貴族として成長させるには厳しくさせなければならん」
思わず止めに入るアスランに、アーネストは威圧して黙らせる。
「しかし…………」
「アスラン、主人の言うことが聞けないのか?」
アーネストは睨む。
アーネストの言葉に、アスランは引き下がる。何故ならアスランは執事、主人の言うことは絶対だからだ。
「立て、レオナルド…………」
アーネストはレオナルドに再び、命令するように主張する。
レオナルドはしくしくと泣きながら立ち上がり、ロングソードを両手で構える。
「この先、貴族としてこの町の領主になれば悲しみ事や辛いことは何度も訪れる…………だから、俺は鬼にならなければならない。そして、母のグレースを死を乗り越えろ」
アーネストは木剣のロングソードを振るう。母の死に悲しむレオナルドを、修練と言う名目で叩き直すのである。
その後、レオナルドは部屋のベッドに座り、泣いていた。
「レオナルド様、大丈夫でございますか?」
アスランは駆け寄り、頭を撫でてレオナルドを慰める。
しかしレオナルドは、しくしくと泣いており、言葉を発する事は困難だ。尊敬する母親の死、葬儀の後日にこの稽古、無理もない。
そんな日々が………何年も続き、父上の修練で叩きのめされては泣いて、その度にアスランに励まされ、そして俺《∣レオナルド》が20歳になる頃、それは訪れた。
ある日、父上に呼び出されて言った。
───俺は、領主を引退し、郊外の地にて隠居生活を送る。領主の後任はお前に任せる。
と、言い残し、父上は当時付き合っていた愛人とに執事のアスランと一緒に町から去るのであった。
それからは………俺は残された給支係のボブ、そして新規で入って来たミランダと一緒に、ノースゲイルの領主に就任し、父上とは違う政策により、悪戦苦闘しながらも月日が流れるのである。




