第74話 別れろと言われる鬼畜領主
───そこは広い部屋、部屋と言うより修練場。壁際は剣や盾、ハルバードが掛けられ、3体の甲冑の像が立てられている。そして部屋の奥にて、50代の中年男性が後ろ姿で立っていた。身長は170センチ、ワックスにより整えられた金髪、がっちりした体格を包むのは、装飾を施された貴族服にズボン、そして足に革靴。
アスランは深々と頭を下げ、お辞儀する。
「旦那様、レオナルド様を連れて参りました」
「レオナルド………」
中年男性の隣には、ソフィアがいた。
「ソフィアっ!!」と、彼女の無事を確信し、思わずレオナルドは声を響かせる。
「そう心配するでない、彼女はあくまでも客人として迎えている…………そして、よく来たな我が息子よ」
その中年男性は振り向き、言った。勇ましい瞳にくぼんだ頬、そして並々ならぬ威圧感。彼の名前はアーネスト・サンタクルス、レオナルドの父親である。
「………お久しぶりです、父上」
レオナルドは挨拶する。色々と込み上げる怒りを堪え、冷静な表情を浮かべて誤魔化している。
アーネストはレオナルドの顔を見て口を開く。
「元気そうだな………とある情報筋から聞いたが、ノースゲイルの領地運営は上手くいっているらしいな?」
アーネストは尋ねる。
「あまり自覚はありませんが、市民からの支持はそれなりにあります」
レオナルドは言った。色々と込み上げてくる憤慨なる感情を、冷静に押さえ込む。
ふむ、そうか…………。と、アーネストは頷く。そして、再び口を開いて尋ねる。
「俺がここに来た理由、分かるか?」
「いえ、分かりません」
レオナルドは言った。領主を引退し、郊外にて愛人を連れて隠居生活を送り、今までは音信不通状態だった…………しかし、いきなりソフィアを誘拐し、ここに連れて来た。理由なんて分からない。
「そうか…………なら、教えてやろう。お前に、彼女と別れてもらいたい」
「えっ?」
「何だと?」
アーネストの言葉に、ソフィアはビックリし、一方のレオナルドは彼を睨む。
「彼女は平民で、ついこの間まではスラムをに住んでいたらしいじゃないか…………レオナルド家、いや貴族たるものやはり、貴族ではないといけない」
「父上、自分の婚約者は自分で決めるし、領主引退後は愛人を連れて隠居生活をしているアナタに言われる筋合いはありません。だが、その愛人が見当たりませんが?」
レオナルドは言った。
「確かに、この前までは愛人はいたが、よくある話、意見の不一致で別れた。それだけだ…………しかし貴族たるもの、子孫を繁栄していくには平民のではなく、貴族でなくてならない」




