第73話 部屋に到着する2人
───邸宅の中に足を踏み入れるレオナルド、そして彼を案内するのは老執事のアスラン。歩いている廊下、それはまさに帝国の上級階級………いや侯爵貴族の見栄と言わんばかりに華やかな雰囲気を彩っていた。
一面に伸びるのは、鏡のようにキラキラした大理石の廊下、ハルバートや剣盾を装備した甲冑の像が随所随所に並んでおり、壁には風景画が飾られている。
その光景を眺め、レオナルドはため息混じりで言う。
「隠居しているのに、父上は随分と羽振りが良いんだな?」
レオナルドの嫌味な言葉に、アスランは後ろ向きに説明する。
「アーネスト様は、領主をしていたノースゲイルだけではなく、今では国内では鉱山やワインセラー、田園の利権を有していますので、それなりの利益はあります」
その答えに、レオナルドは笑いながら。
「さすが、自身の利益だけには頭が回るんだな………」
その莫大な利益により、この雰囲気を作り出せる事は納得できる。昔から父上はこの性格であり、領地運営に関しては全て私欲であり、ハッキリ言えば自己中心的だ。そしておまけに子息に対しは伝統保守を思想とした貴族教育は欠かせない。
すると、アスランは言う。
「………レオナルド様は、旦那様が憎いですか?」
「当たり前だ。俺はともかく、母上の死後に早速と愛人を作り、挙げ句の果てには母上の思い出を全て捨てろと、暴力で言う事を聞かせたのだからな………。それに関係のないソフィアを連れ去り、巻き込んだのだ。許すに値しない」
「そうでございますか…………」
レオナルドのキッパリとした答えに、アスランは苦笑いを浮かべ、沈んだ声でうつ向く。ま、無理はないなと…………。
「何でそんな質問をするんだ?」
レオナルドは尋ねる。
「いえ、ただのジジイによるつまらない質問です。お気になさらないで下さい…………」
(何だ…………)
アスランが放った言葉に、それは何処か違和感があるような…………。
「それより、もうすぐ旦那様とアナタの婚約者が待っている部屋に到着します」
「そうか」
───しばらく廊下を歩いて、そこから階段を2階まで登る…………。そして、到着したのは重厚な扉である。扉の前で、レオナルドは険しい表情を浮かべ、拳を握り締める。何故なら自分は、小さい頃は父親と色々とあったからだ。もちろん、悪い思い出として…………。
するとアスラン、扉をコンコンとノックする。
「旦那様、レオナルド様がお見えになりました」
───うむ、入るとよい。
扉の奥から、低く威圧感な声に「失礼いたします」と、アスランは扉を開くのである。




