第72話 執事のアスラン
───丘を下り、父が待つ邸宅前の正面門に到着する。まるでレオナルドが来るのを待っていたかのように………そこに、ある人物が邸宅の正面門の前に待機していた。
その人物、老執事は深々とお辞儀する。
「お待ちしておりました、レオナルド様」
「久しぶりだなアスラン、元気にしていたか?」
愛馬を降り、レオナルドは老執事に向かって言う。
「お心遣い、感謝します。レオナルド様も元気で何よりです」
老執事は落ち着いた姿勢で、再びお辞儀するのである。170センチの身長に年齢は60代、そして丁寧に整えられた白髪のオールバックに中肉中背体形の執事。名前はアスラン・ウィーズリー、かつてはサンタクルス家の執事であったが、今では父のアーネスト専属の執事として邸宅に仕えている。
「俺の事は良い、それよりソフィアは無事か?」
レオナルドは尋ねる。
「はい、彼女は大切な客人ですので丁重にもてなして頂いております」
アスランは答える。丁度、
「そうか、なら良かった………それで、父上は何処にいる?」
ソフィアの無事を知り、安堵しつつ再び質問する。
「はい、アーネスト様は屋敷の中にいます。アナタが来たら、連れて来いと承っています」
「直ぐに向かう」
そして正面門が開き、レオナルドは踏み入れ、アスランにより邸宅の中に案内される………。
───正面門を潜り、そこには庭が広がる。邸宅まで伸びる石畳の道の両側には、黒艶に輝いたドラゴンやグリフォン、ガーゴイルの銅像が並び、2人を見下ろしている。
見て思った、領主をしていた頃から相変わらず要らない所で金を使い、貴族として見栄を張っている所は変わらないのだな………。と、要所要所に並んでいる銅像を眺めながら、ある意味、尊敬に値する。
レオナルドは質問する。
「アスランよ、父上から離れようとは思った事はないか?」
レオナルドの質問に、アスランは答える。
「私は執事、主人に仕える身となります。主人が来いと言われれば、付いていくのが所存でございます」
「そうか………」
この質問は彼にとっては愚問だったかも知れない。何故ならアスランは根っからの執事であり、レオナルド自身も小さい頃が仕えており、サンタクルス家における最も古参な執事である。
するとアスランは言う。
「しかし、仮にアーネスト様がレオナルド様の所に行けと命じられればこのアスラン、しっかりと仕えさせて参ります」
アスランは執事。全てはレオナルドの父親のアーネストにより権限が委ねられ、命令は絶対である。主人が白と言われれば白、黒と言われれば黒だ。




