第6話 領主レオナルド・サンタクルス
扉の向こうから、「入れ」と答えられ、入る2人。
───そして領主室に入ると、床はきめ細かい真紅のカーペットに、天井にはキラッとしたシャンデリアが吊るされ、書類等がぎっしりと整頓された本棚。そこの部屋の奥の机に、座っている1人の男性。
「ご苦労、下がってもよい」
男性は言った。男性の一言により、役人は敬礼して部屋から立ち去る。
「え、ちょっと………」
立ち去る役人に、思わず引き止めようとするソフィア。しかし、男性の言葉に立ち去る役人。
………役人が立ち去り、2人きりの空間になる。
「あはははははは………」
変な雰囲気に、苦笑いを発するソフィア。何故ならいきなり連れて来られた部屋、知らない男性、そして自身は未納税により差し押さえられた立場。何を喋ったら良いか、分からない。
2人きり。と言う独特な緊張感により、額から汗を滴らせるソフィア。
「はじめましてかな、ソフィア・マクミラン」
まずは初めに、言葉を発したのは男性からだった。
「アンタ誰よ?」
ソフィアは尋ねる。
彼女の言葉遣いに、男性は微笑む。
「フハハハハハハっ、アンタ誰か。実に礼儀知らずな女だっ」
まるでギャグを見せられたように、笑い上げる男性。
「ちょっと、どーゆー事よっ」
いきなり笑われて、男性の態度にムスっとなるソフィア。男性は笑いながら言う。
「そのままだ。何せ俺の元に訪れる者は皆、頭を下げて腰を低くしたりする者ばかりだったが………お前は俺の事を全く知らないようだな?」
「アンタの事?」
「俺の名前はレオナルド・サンタクルス。このノースゲイルの統括を任されている領主だ」
男性は答えた。髪は燃え盛るような炎をイメージしたような赤髪、猛禽類の如く勇ましい瞳。貴族風の赤いスーツ、長身かつ無駄の無い体格は、一言で例えたら鍛えられた軍人。容姿は20代の年相応。
「ノースゲイルのりょーしゅ………さま。アンタが?」
再び、無礼な言葉遣いで質問するソフィア。
「そうだ、お前の家族が引き落とした借金により払えなかった税金の肩代わりに、お前を差し押さえ扱いにしてここに連行した鬼畜な領主様だ」
「鬼畜って、自分でも認めるんだ………。って、どうしてアンタが私の家族の借金事情を知っているのよ?」
「俺を誰だと思っている?この町の領主だ、市民の個人情報を知らないとでも?」
(それもそうか………)
ハッとソフィアは納得する。
「俺は、この町では市民に最高な領主様と言われ、富裕層からは、最低な奴だと言われている」
(どういうこと?)
困惑するソフィア。