第61話 父との確執
「確かに優しかった………平民に寄り添う姿勢で、市民からの支持率は俺以上だった。しかし、母が死に、その正反対な政策を主にする父親とは色々とあって、あまり母親を思い出さないように、ここへは足を運ばなくなった。そして久しぶりに来て、変わってないことに安心した」
レオナルドは言った。
「それで、久しぶりにここに来たのは?」
ソフィアは尋ねる。
「ただの気まぐれだ………いや、婚約者であるお前に、母の思い出の場所を見せたかったのかも知れないな…………」
「なっ…………」
何気ないレオナルドの言葉に、ソフィアは頬を赤くして思わずドキッとする。
「どうかしたのか?」
「いやいや…………その、アンタの言葉が、その…………」
ソフィアはあたふたする。それは言いたくても恥ずかしくて言えない、それは例えようによれば結婚前に相手の両親に挨拶するアレだ。
「ソフィア様、顔が赤いですよ」
ミランダはクスクスと言う。するとソフィアは両指をツンツンして合わせ、恥ずかしい様子で言う。
「…………その、もし私が婚約者だったら、レオナルドの母様は認めてくれたのかしら?」
「生きていたなら、恐らく喜んで認めていただろうな…………母上は気立ての良い貴族の娘より、性格が明るくてしっかり平民の娘が好きだったと思う…………父は別だがな」
レオナルドは言う。
「その…………お父様とは昔から上手くいっていないの?」
ソフィアは心配な様子で質問する。裁縫の講師、ヒラリーおばさんに彼の父親との親子関係について、教えてもらった。その話の内容は、あまりにも仲が良かったとは言えない…………。例えようによれば、禁句の質問である。
するとレオナルドはため息を吐いて、怒りにより拳を振るわせ、険しい表情で言う。
「上手くいってるとか、いってないとかそんな次元ではない。俺は、あの人とは確執がある…………」
「確執?」
実の父親に対して、あの人呼ばわり。この時点でもう、普通の親子関係ではないことは確かだ。
「母上が亡くなった後、母上の全ての思い出の遺品は捨て、俺には帝国貴族の剣術鍛練として、毎日ボコボコにされたり、母上の趣味や福祉政策等にも口に出したり…………そして何より許せなかった事がある」
「許せなかった事?」
「父は愛人を作り、俺に紹介してきたた。そして俺に対して父は、この人が新しい母親だ、過去の母親の事は忘れろと…………」
「酷すぎるわ…………父はどこに?」
「領主を俺に任せて引退し、今は町を離れ、郊外で隠居生活をしている頃だろう」
レオナルドはそう言った。




