第53話 日頃の練習による賜物
「只今より、このルーファス・ド・アルゼイドが、本日、社交パーティーにデビュタントしたての彼女と、ダンスを披露したいと思います」
ソフィアの手を繋いだルーファスは、観覧スペースにいる招待客達に、ビシッと宣言する。
───まったく、アイツのサプライズ好きは変わらないな………とりあえず練習の成果を見せてもらおうか………。
腕を組み、婚約者をルーファスに連れて行かれ、複雑な様子でレオナルドは観覧スペースから見守る。ちなみにエキシビションのダンスは予定にはなく、皇太子が独断で決行したのだ。
「なお、彼女は僕の親友であるレオナルド・サンタクルスの婚約者、ソフィア・サンタクルス領主夫人である。社交ダンスにて、誰も誘われない彼女に私個人がこうしてエキシビションを開いて、このパーティーの為に特訓してきた彼女のダンスを皆様に披露したい模様です」
───レオナルド様の婚約者だってっ
───婚約者にしては、ずいぶんと若い娘だな?
───年は10代後半くらいか?
観覧スペースから、ザワザワと降り掛かる招待客の声。
彼女は極度の緊張で爆発寸前である。観覧スペースから一斉に差し込んでくる周囲の視線、そして招待客が引き上げたダンスホールには、ルーファス皇太子に手を繋がれるソフィア。
(もう………ルーファス様、余計な事ばっかり………めちゃくちゃ周り、見てる………)
もう、涙が出ちゃう………。と、差し込んでくる周囲の視線により、ソフィアは恥ずかしさと緊張が混ざり合って顔が赤くなる。
レオナルドはふと横顔を向け、緊張事態のソフィアに、微笑みかける。
(大丈夫だよ、僕がリードしてあげる。君は安心して、僕に身を預けて)
ルーファスの囁きに、ソフィアは安心する。
「さて、景気の良い演奏をいこうか?」
ルーファスは手を挙げ、合図を出す。皇太子の合図に、演奏隊は一斉に楽器を構えてスタンバイ。
───そして、演奏隊による音色がホールに響き渡り、2人はダンスを開始。まず初めに、奏でられるのは落ち着いたバイオリンの音色、流れるクラシックの音色を例えるなら霜が漂い、あらゆる動物達が一斉活動を始める朝の森林だ。
2人は手を取り合い、落ち着いた足捌きでダンスを披露する。
(そう、その調子だよ、けっこう上手いじゃないか?………)
ルーファスは冷静に微笑み、ソフィアのダンス技術を褒め讃える。
(そ、そうですか?………)
額から汗を流し、自身のデビュタントとルーファスに見つめられる緊張感に襲われるが、ソフィアは頷く。今、ダンスホールにいるのはソフィアとレオナルドだけだ。




