第52話 皇太子とダンスする貧乏ヒロイン
───ダンスしている中、赤ドレスの娘のリタは観覧スペースにてソフィアを見つけ、(ごめんあそばせ)と、言わんばかりに挑発的なウィンクをしてダンスに勤しむのである。
そして次に回って来た青ドレスの娘、黄色ドレスの娘も同じく、ソフィアに向かい、(あら、誘われなかったのね?)と、哀れみな様子でウィンクする。
「くぅ~〜〜〜、悔しい………」
ソフィアは観覧スペースにて、社交ダンスを眺めるのである………。せっかくこの時の為に毎日、ダンスを練習したのに誘われない。
けど、あの嫌らしく絡んで来た信号の娘達………見かけだけではなく、本当に貴族としての気品があって、ダンス技術が高い。おそらく幼少の頃から厳しい教育を受けていたから、それは誘われて当然であり、この間まで貧乏な市民だった私とは違い、納得である。
───このまま過ぎていく華やかな時間、招待客達のダンスが繰り広げる。しかし、未だにソフィアはまるで、この場所から取り残されたかのように………そのキラキラとした光景を眺めているだけで、誰からも誘われない。やはり、かつて貧乏市民だった自分では、あの中のキラキラとした世界に入るのは不可能なのだろうか………。
すると………演奏隊の音色が止み、ダンスが中断される。そして招待客の人達はゾロゾロと、観覧スペースに戻っていく。
(もしかして、終わりなのかしら?)
ソフィアは辺りを眺める。
そのとき、中央ホールに渇いた足音を響かせ、観覧スペースにいる人達を眺めるのはルーファス皇太子。
───ルーファス皇太子?
皇族の姿に、観覧スペースからはどよめきの声。後は女性達による黄色い声援。
「突然、ダンスを中断させて申し訳あります。ただいまより、私個人によるエキシビションのダンスを皆様に見て差し上げたいと思います」
ルーファスはお辞儀し、皆に告げる。
(エキシビション?)
何が始まるのか、理解が追いつかないソフィアは首を傾げる。
そのときルーファスは観覧スペースに、ソフィアに歩み寄り、彼女の手をつなぐ。
「えっ?」
「おいで、僕が君のダンスパートナーになってあげるからっ」
そう言ってルーファスはニコッと微笑んでソフィアの手を掴み、観覧スペースからダンスホールに半ば強引に引き連れるのである。
───誰かしら、あの娘は?
───ルーファス皇太子と、見知らぬ娘とダンスだって?
───ハハハ、これはおもしろそうだな?
観覧スペースにいる招待客からは様々な声が聞こえてくる。
それは、ソフィアにとって予想だにしない事態となった。自分が、皇太子とダンスパートナーになるなんて思いもしなかった。




