第42話 ソフィア、顎クイされる。
───ソフィアは前世を思い浮かべる。
とは言うものの、それは10歳までだけど…………。
国内の貴族や外国の権力者が集う社交パーティーの雰囲気はやはり慣れない自分がいる。パーティー会に出席の経験と言えば、前世にて、小学生の時に友達の家で誕生日パーティーくらいだ。部屋にケーキがあって、オレンジジュースやポテトチップスが用意されて、友達と楽しくおしゃべりしたり、ボードゲームして、それはそれは楽しかった。
(いや、そんなちんけなパーティーと比べたら、この社交パーティーは規模が違うっ)
ソフィアは両手を頬を押さえ、わなわなと震わせる。会場にいるのは国内外の権力者達、何を話せばよいか分からない。ちなみにこの世界に転生してお誕生日プレゼントと言えば、焼いた大きな川魚に火の点いたロウソクを刺して、それを消してお祝いをしただけだ。
今世にて、そんな経験しかしてない私が…………。
「やぁ、レオナルド」
それは2人の前に、シャンパングラスを片手に持って駆けつけ、そして純白のタキシードと背中にマントを着用した金髪の優男。身長はレオナルドとは同じくらい、優雅な佇まいは他の権力者とは格が違う。
「お前、やはり来たか…………」
鼻で軽く笑い、レオナルドは言った。
「当然、じゃないかぁ~~…………我が親友主催のパーティーの招待状を貰って、出席しない友達がどこにいるんだい?」
金髪の優男は、レオナルドに馴れ馴れしく肩を組む。
優男に肩を組まれ、レオナルドは腕を組んで無愛想になる。
(何かチャラチャラしていて、変な人だな…………)
いわゆるチャラ男って奴?…………前世の日本では、最近は見なくなったけど。
すると優男は、グラスに注がれたシャンパンを口に含み、ソフィアに対して冷たい笑みを覗かせた視線を向ける。
「ところで…………」
優男の言葉に、ビクッと背中に冷たさが行き渡る。
「そこの彼女が、君の例の…………婚約者だっけ?」
優男は言った。
「はじめまして、ようこそ我が主催のパーティーへ…………」
軽くスカートの裾を上げ、姿勢正しく頭を下げ、礼儀正しく挨拶する。ここにて、礼儀作法のレッスンが役に立つ。
「ふ~~~ん?」
優男はソフィアに近づいて、見定めるように、腕から眺める。すると、優男はソフィアの顎をクイッと指先で掴み、クスっと囁きかける。
「いいじゃないか?…………きみ、可愛いね。もし、よかったら僕の恋人にならないか?」
「はっ…………はいっ?」
優男のクスっとした囁きに、ソフィアは頬を赤くし、ドキっとなる。気持ちは、猛禽類に補食対象されたハムスターだ。




