第37話 麦ライスのおにぎり
───彼女の名前はマリア・セレス、服装は白い長袖のシャツに麻色のロングスカート。黒髪ロングの清楚な女性で左まぶたの下には泣きボクロ。見た目は若く、こうみえても年齢は40代前半だ。
「そうですか…………両親と妹さんは…………それは大変でしたね…………」
マリアは心配な様子で哀れむ。
「そうなんですよぉ~~酷い家族ですよねぇ?私もビックリ仰天…………」
ソフィアは後ろの頭をポリポリと掻き、笑って誤魔化した。家族の失踪の事は、簡潔に説明して伝えた。家に帰って来たら、置き手紙を残し、私を置いてどっかに行ったと…………。
「あらあらぁ~~~…………」
ソフィアの言葉に、マリアは頷く。
ソフィアはマリアが経営している孤児院によく遊びに来ていて、彼女が兼業としている日曜学校で勉強を教えて貰ったり、年長者として子供達のお守りのお手伝いをしたり、そこでよく炊き出しのご馳走を頂いたりしていた。
───場所はスラム地区、広場。
炊き出しの列には、多くの住民と子供達が並んでいた。メニューはボリューミーなステーキと野菜サラダ、チキンスープに白い何か。
「うん、おいしぃーー」
ソフィアは炊き出しの料理に、大満足な笑顔でモグモグと頬張る。
「後をストーキングしてみて分かっただろ?………俺がどのように税金を使っているのかと?」
レオナルドは言う。
「ぶっ…………げほ、げほっ…………気づいていたの?」
ソフィアはむせる。そしてトントンと胸を叩いて息を整え、尋ねる。
「当たり前だ、隠れるならもっと上手く隠れろ」と、レオナルドはキッパリと言った。
「ぐぬぬぬぬ…………」
レオナルドの指摘に、ソフィアは表情を曇らせて拳をプルプル震わせ、悔しがる。後をつけているのに、知ってて放置するその余裕を持った所が、タチが悪い。
「それより何だが…………」
「何よ?」
レオナルドの言葉に、ソフィアはムスっとした表情で応える。
「その、お前が作った白い何か。アレは何だ?」
レオナルドは、ソフィアが持っている白い何かを見て、尋ねる。
「あー、これはおにぎりといって…………」
「オニギリ?何だそれは?」
不思議に思うレオナルド。
「おにぎりと言うのは…………」
それはソフィアが過ごした前世での記憶から引っ張り出して、炊き出しの料理の一品として、炊き込んだ麦ライスを塩で握っただけだ。そもそもヴァンガード帝国にはおにぎりの食文化はないから珍しいのも無理はない。何故わたしが、これを提案したのか、料理にステーキとサラダ、スープがあれば米が欲しくなるのは当然だからだ。




