第35話 炊き出しをする鬼畜領主
───久しぶりに来たノースゲイルのスラム地区。帰って来たのは2日振り、相変わらず乾いた地面とヒビ割れたコンクリート造りの家屋が並んだ殺風景な光景だ。この地区のシンボルと言えば、有名なボロボロの井戸だ。
(私いわくだけど…………)
と、ソフィアはひとり事。言い聞かせるように説明する。
さらに観察する、何故なら視線の先には人集りが出来ており、仮設テントを設置している。
(何をやっているんだろう?)
ソフィアはボロボロの空き家から気配を消し、その様子を観察する。
───すると、スラム地区は大変賑わっている。テントを設置し、その中でレオナルドはエプロンと三角頭巾を着用し、調理していた。
──おおぉ~~~~…………。
「まぁ~、領主様は料理が上手いのねぇ」
スラム地区にいる住民達、そしてロロナおばさんは、調理しているレオナルドの包丁捌きに喜ぶ。
「はい、領主として料理が出来て当然です」
レオナルドは微笑み、言った。
「もう少し、待っていて下さいねぇ~~~」
隣で一緒に調理している40代の女性は活々と微笑みつつ新鮮な汗を額から流し、言った。
───ハァ~~~イっ
子供達、その多くは孤児院の子供達は元気に手を上げ、行儀よく待っている。レオナルドが行っているのは炊き出しである。集まっているのはスラム地区の住民、あと孤児院の子供達である。
「みんな、元気だな。子供は元気が一番だ、たくさん料理を作ってやるから、よく食べて、よく遊び、よく勉強するんだぞっ」
レオナルドは調理しながら微笑み、子供達に言った。
───ハァ~~~イっ
子供達はレオナルドの言葉にも、元気に手を上げるのである。
そんな光景を、ソフィアは見ていた…………。
(え、何あれ?あれがレオナルド様?…………)
ソフィアにとって、驚愕するしかない光景である。何故ならレオナルド、地元住民にも好かれ、スラム地区の住民や子供達にも人気がある。自身の中では、レオナルドは税金徴収はどんな手を使ってでも取り立てる鬼畜領主と言うイメージだ。そんな彼が…………。
───あれ、ソフィアおねーちゃん?何しているの?
「あひっ!!」
後ろから、いきなり話しかけてきたスラム地区の5歳位の少年少女の子供達に、ソフィアは変な声を出してビックリする。
「もしかして、おねーちゃん?レオナルドさまのりょーり、たべたいの?」
「たべたいの?」
少女と少年は無垢な表情で聞いてくる。
「まっ…………まあね」
レオナルド…………鬼畜領主とは信じられない現実に、ソフィアは苦笑いを浮かべて答える。




